cybercatお気に入りのアート。
学生時代~独身時代を中心に、いくつかのアートをあつめたことがある。
その中心は版画系(銅版画、シルクスクリーン)のもの。
油絵・水彩系の作品は作家にとっても唯一無比のもので、油絵などを1日で何枚も量産すると言うことは不可能だ。精魂込めて時間をかけて描く画はやはりそれなりの対価を伴う。
一方版画系の作品は一度原版を作れば、原版寿命の短い木版画でも数十枚、多くは100枚を超える枚数を「量産」することができる。もちろん、芸術的観点から見れば、版木側がつねに同じ状態ではないし、色の「のせ」の出来不出来もあろうから、(希少価値/需要と供給の観点からも)刷り出したものがすべて「作品」となれるかは解らないが、それでも完成に数日~場合によっては月の単位でかかる油絵などからすると「ホンモノ」が比較的手が届きやすい価格で市場に出る分野である。
そんな作品をいくつか買って狭いアパートの壁に掛けて和んでいた。小浦昇。銅版画作家。青と緑を基調とした宇宙に想いを馳せた作品が多い。
幻想的で、童話的。遺跡とロボット、砂漠にロケット、ビル街をゆく恐竜...意外な取り合わせを様々な階調の青と碧と蒼と緑と碧と翠が色なす、そんな画が多い。
すうぅぅぅぅぅぅぅぅっと吸い込まれるような絵柄で、ノスタルジックなSF感と不思議な浮遊感が感じられる。
技法的には銅版画には直接法と間接法があるが、小浦は間接法のエッチングとアクアチントを好む。ベースとなる銅版に保護膜を形成し、その膜を鉄筆で削った後、薬品につけて保護膜で保護されていないところを腐食させて彫り込むエッチング、松ヤニの粉で部分的に保護膜を作り面で腐食させてインクが乗る部分を形成するアクアチント。いずれも保護膜の形成と薬品への漬け込みの時間などによって線の強弱や面のざらつき感を表現する。銅版を直接彫る直接法と違って滲みのない繊細な画が特徴。まさにロマンチックSFな彼の作風に合っている。
そんな彼の作品が好きで複数持っているが、これはそのうち最大のもの。大きさ的には印面だけで縦595mm✕横440mm、額縁まで入れると830✕630mmと大きなもの、42W型のTV画面を縦にしたのより短辺は少し長く、長辺は少し短くした感じ。そして彼の絵には珍しく色合いが明るい。橙~ピンクがメインの暖色系。そしてモチーフは「月」。空にたくさんの流れ星が煌めく中、遊園地のジェットコースターのような構造物をバックに、お月様が捕まっているという画。描き込み(彫り込み?)が繊細で、バックには流れ星も数多くちりばめられている。
地上につなぎ止められた三日月は「IRON MOON」とすれば鋼鉄製?それを見上げる男は何を想うのだろう。いつも自宅の玄関で帰りの遅い自分を迎えてくれる和(なごみ)の画、です。
小浦昇オフィシャルサイト 月影綺談
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購入金額
70,000円
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購入日
1993年12月頃
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購入場所
LOFT
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