cybercatお気に入りのアート。
学生時代~独身時代を中心に、いくつかのアートをあつめたことがある。
その中心は版画系(銅版画、シルクスクリーン)のもの。
油絵・水彩系の作品は一点物で「量産する」ことはできない。長い時間を掛けて描き上げる作品はどうしても高価になりがちだ。
一方シルクスクリーンや銅版画といった版画系の作品は一度原版を作れば、原版寿命の短い木版画でも数十枚、多くは100枚を超える枚数を「量産する」ことができる。もちろん、芸術的観点から見れば、原版側がつねに同じ状態ではないし、色の「のせ」の出来不出来もあろうから、(商業的観点からも)刷り出したものをすべて売ることはないだろうが、それでも他の芸術作品から比べると「ホンモノ」が比較的手が届きやすい価格で市場に出る分野である。
そんな作品をいくつか買って狭いアパートの壁に掛けて和んでいた。
そんな作品の一つ。ただ購入は一番最後くらいだったかな。
前回ご紹介した銅版画の作家、小浦昇。
どこかSFチックでノスタルジックを感じる絵柄。一枚の作品ではあまり多くの色を使わず、色の傾向が統一された作品が多くて、その中心となる色彩は青~緑が多い。ちょっと宇宙的な感じのする作品が多いので、宇宙(そら)を思わせる透明感のある蒼が良く使われる。
前回ご紹介したのは玄関入ったところにかけてあるcybercat家最大サイズの作品だが、実は色彩的には小浦のメイントーンではない。玄関を明るくしたかった(のと逆側の靴箱がある側の面にはもう一つ緑系の絵があるので)ということもあり、あえて暖色系の作品を選んだわけ。
一方こちらは彼のメイントーン、青~緑系の色を使った銅版画。
現在実家の食卓の横にかけてある。小さな食事処で料理人が料理をしている周りに二人の客がいて、食事をしているような風情。面白いのは、パッと見、円形のカウンターの中で調理をしているように見えるが、これ鍋ぢゃんw。コックさんのダシも出てる??wwという感じのナンセンステーマ。窓に映る人影もよく見ると...とちょっとホラー?そしてこの絵の名前は「KAMINARI」。どこに雷が...と探しても見つからない。ただ室内?でも傘をさしている客、右側から今入ってこようとする客の傘の先が見えて、外は雨だと想像できる。そして窓に映る人ならぬ影は雷によってできた影で真実の姿が暴かれたのか。
...たぶんこの部屋はとても静か。その題名に反して。
外では嵐が荒れ狂い、稲妻が光っているのかもしれないが、食事をする客の二人の食器の音だけが虚空に消える...そんな様子が感じられる温度感が無い世界。最初は色合いの美しさが目に入り、料理人の構図にギョッとし、全体を包む静寂に恍惚となる...そんなシュールな絵。
前回ご紹介の作品は大判でもあったので60枚というあまり多くない制作数。でも今回のは絵自体はA4サイズくらいの印面のものだけど、ひょっとしたらもう少し刷られたのは少ない?一般的なアラビア数字の記載(「21/60」など)ではなく、ローマ数字による記載。そしてその前に英語が書いてある(AP Ⅸ/Ⅹ)という造りなので詳しくはわからないが、後半は「9/10」と読めるのでトータル10枚しか刷られなかった可能性もある。「AP」の方はひょっとしたら色合い??(同じ原版で色を変えて刷ることはあるみたいなので)その少量生産っぽい扱いのわりには小浦の作品集、「青い月の物語」にも含まれているらしい、ちょっと立ち位置が不思議な印象深い絵。見ていると吸い込まれそうになるような、そして作品から「音が“ないことが”感じられる」奇妙な作品です。
小浦昇オフィシャルサイト 月影綺談
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購入金額
40,000円
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購入日
1997年頃
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購入場所
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