cybercatの音楽の守備範囲はか~な~り広い。一番濃いところはフュージョン~ロック~ソウル~J-POPあたりだが、フュージョンよりも先鋭的なジャズ、ロックはAORからメタル、プログレ、クロいのもビート系のモノから切々としたソウル、J-POPもバンドサウンド~DIVA系、アイドル、ボカロ曲までほぼ好き嫌いなく食べるw。さらにやや薄くなるがニューエイジやヒーリング、フォーク、カントリーやテクノもおk。そしてその裾野の果てにクラシックもある。ただもともと楽器が好きなこともあり、聴くのはほとんどが器楽曲。それもどちらかというと曲を気に入ってそれを上手く演奏する(指揮する)楽団(指揮者)の作品を手にする、というより、プレイヤーが気に入ってその人が関わる作品を追う、という形が多い。
本作もそんな感じ。
松田理奈。技巧と表現力を備えたヴァイオリニスト。もともと幼少時から××ヴァイオリンコンクールなどの賞を総なめにした天才少女だったが、成熟するにつれてその技巧を持って繊細な表現ができるヴァイオリニストになっている。これは彼女の5年前(2008年)の作品。クラシック系にはさほど深入りしていない猫でさえ識っている曲たちが並ぶが、彼女の技巧が表現力となってその情感を増強して曲を表現している。
「Carmen Fantasy」は「Zigeunerweisen」で有名なサラサーテ(Sarasate)の手になる曲。弦を広く使って、序奏~第4曲まで曲調が何度も変わる。それを理奈がピチカートやグリッサンドなどのテクニックを駆使し歌い上げる。低音から高音まで駆け上ってダイナミックに演奏されるが、弓が弦の上で跳ねているのが情熱的だ。それは付属のDVDの2007年トッパンホールでのライヴ映像でも確認できる。「Ave Maria」はカッチーニ(Caccini)の作。いくつかある「Ave Maria」(他にBrucknerやRossini版も有名)のなかでも有名だと思う。理奈はこれを音の強弱で語る。長音の消え去り際のヴィヴラートに激しいダイナミクス。朗々とした音が天まで響き渡り、そして弦と松ヤニのざらつきまで判るような消え去りそうな音でかすかに語りかける。寄せては返す波のように心に演奏が喰い込んでくる。
シューマン(Schumann)の「Traumerei」は柔らかな音で奏でられる。Pavel Gililovの名伴奏の上をたゆたうような伸びやかさで歌う理奈のヴァイオリン。伸びやかに朗らかに心地よく奏ながらも、音と音のつながりをやや不安定なピッチのテヌートにするなど一本調子でない表現力を魅せる。
有名曲目白押しのこの盤では理奈の表現力と感性が溢れている。彼女のブログを見ると美しい写真とその構図、感性ゆたかな文章で癒やされる。現在母となった彼女は今後どういう音を育てていくのであろうか....
【収録曲】
<CD>
1. Melodie メロディ (グルック)
2. Carmen Fantasy カルメン幻想曲 (サラサーテ)
3. Meditation from "Thais" タイスの瞑想曲 (マスネ)
4. Ave Maria アヴェ・マリア (カッチーニ)
5. Introduction et Rondo Capriccioso 序奏とロンド・カプリチオーソ (サン=サーンス)
6. Traumerei トロイメライ (シューマン)
7. Vocalise ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
8. Andante Cantabile アンダンテ・カンタービレ (チャイコフスキー)
9. Tzigane ツィガーヌ (ラヴェル)
<DVD>
1. Carmen Fantasy カルメン幻想曲 (サラサーテ) <Live>
2. Making
「Carmen Fantasy」
Lina tones.:Lina MATSUDA Official Blog
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購入金額
3,200円
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購入日
2013年03月30日
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購入場所
山野楽器
退会したユーザーさん
2013/04/11
cybercatさん
2013/04/11