ノートPCでオンラインゲーム??
これまでにMMO、RPG、FPSを中心に数多くのPCゲームをプレーしてきた。
これらのジャンルのゲームでは、シビアなタイミングを要求されることが多く、快適にプレーするにはそれなりのパーツを搭載したPCが必要となる。
ゲームに最適なPCとはどういうものなのだろうか。
まず、最初に挙げられるのは、高いグラフィック性能があるということだろう。
つまりは、高性能のグラフィックカードを搭載しているということだ。
高性能のグラフィックカードは消費電力が高いので、高出力の電源が必要となる。
高出力の電源は発熱量が高い。
発熱量が高くなれば、高い冷却力が必要となる。
放熱ファンが複数あり、排熱に優れた筐体であることが望ましい。
パーツを搭載するための物理的なスペースも必要となる。
これらの点を考慮すると、ゲームに最適なPCとは、必然的にデスクトップPCになる。
ノートPCの利点とは省スペースであること。
しかし、省スペースであることは、ゲームに最適なPCにとっては制約となる。
ゲームに最適なPCに求められる要素とノートPCの利点とは相反関係にある訳だ。
ゲーミングノートとは、“限られたスペース”という制約下において、“いかにデスクトップPCレベルの性能に近づけるのか”という点を追求した製品であり、超ハイスペックなノートPCといっていいだろう。
そうはいっても、デスクトップPCでしかゲームをやったことのない身からすると、ノートPCでゲームをすることに抵抗感があるのも事実。
本当に快適にゲームをプレーできるのか。一般的なノートPCとはどこが違うのか。
そのような視点を含めつつレビューしていきたい。
ViP Note CL6X1W8-N67MXの付属品
付属品は、DSP版DVD、ドライバ収録DVD、マニュアル、バッテリ、ACアダプタ。
ショップブランドのPCらしく必要最低限な構成。
目に付くのがが、大型のACアダプタ。実寸で、幅145mm×奥行き73mm×高さ25mm。
一般的なノートPCの物のおよそ1.5倍サイズ。
ViP Note CL6X1W8-N67MXの外観
■天板
マットな質感のある天板。ザラザラとした肌触りが特徴的だ。
メーカー名を表すロゴがない点がショップブランドPCらしさを感じさせる。
本体色はブラックだが、まさにホワイトボックスに相応しい外観だ。
■底面
一般的なノートPCと比べて吸気・排気口が多い。ゴム脚6点で本体を支えている。
中央左側の円形の物はサブウーハーのようだ。音質にも配慮されたモデルであることが推測される。
奥側2点のゴム脚は特に頑丈そうに見える。激しいキータイピングでもがっしりと本体を支えてくれそうだ。
■側面-正面
写真では分からないが、右側に電源ランプがある程度。ポート類は何もない。
■側面-背面
大胆に開いた吸気・排気口。相当な発熱量があることが想像される。
左側から、DisplayPort、HDMI、DVI、電源。充実した出力端子。液晶モニタやテレビへの出力を前提としている点がいかにもゲーミングノートらしい。
■側面-左側
左側から、MiniIEEE13944、LAN、USB 3.0×2、eSATA/USB3.0コンボコネクタ、カードリーダー。
ノートPCにしては充実した端子類。
■側面-右側
左側から、ヘッドフォン/スピーカー、マイク、S/PDIF、ライン、USB2.0、セキュリティスロット。
光学ドライブは、片面2層書込み対応のDVDスーパーマルチドライブ。
15.6型のフルHD(1920x1080)のグレアタイプのモニタ。一般的なPC向け液晶パネルで採用されるsRGBの色空間よりも再現域が広い、NTSCカバー率95%の液晶パネルが採用されている。
本体、バッテリ、ACアダプタ込みで総重量は約3.8kg。
キーボードはアイソレーションタイプのテンキー付き103キー。
キーピッチは約19mm、キーストロークは約2mmと標準的。WASDの矢印マークがゲーミングPCらしさを感じさせる。
パームレスト部分にも天板と同じ材質が使われている。写真上で確認できる微細な白い粒状の物は塵ではない。光に反射する粒状の素材が練り込まれたプラスチック材が使用されている。
そのおかげで、通常のプラスチック材のようなテカリ感がなく、どっしりと落ち着いた雰囲気を感じさせる。
しかし、天板と同様にザラザラとした肌触りがあり、頻繁に手首が触れる箇所にこの素材を使うのはいかがなものか。滑りにくく、汗をかいてもべとつかないという肯定的な意見もあるのかもしれないが・・・。
タッチパッドにもパームレストと同じ素材が使われている。
指を滑らせにくいので、これでは快適な入力どころか、使いたいという気が起こらない。
しかし、このノートであれば、マウス操作が前提となるので、大した問題ではないだろう。
パームレストに張られている“THX”のステッカー。ノートPCだが音響に拘っているということのようだ。
THXといえば、CREATIVEのサウンドカードでお馴染みだが、マザーボードなどのサードパーティ製品であってもTHX基準を満たすものであれば認証されている。
この製品には、“THX Trustudio PRO”というサウンド補正ソフトウェアがプリインストールされている。
ViP Note CL6X1W8-N67MXの性能評価
ここからは、PHANTASY STAR ONLINE 2(以下、PSO2)を実際にプレーした時の使用感にも触れていこう。
まずは、以下に主だったスペックをまとめてみた。
なお、詳細なスペックはこちらを参照していただきたい。
・TWO TOP ViP Note CL6X1W8-N67MX
■モニタ
フルHD(1920x1080)、NTSCカバー率95%の広色域液晶パネルが採用されているということだけあって、視野角が広く、色彩が深く鮮やかで美しい。グレアモニタ特有の移り込みやギラつき感は気にならない。素早い動作時の残像も問題ない程度。
■サウンド
一般的なノートPCであれば、音が鳴りさえすれば十分という程度の話になるが、ゲーミングノートとなれば音質にも期待したいところ。
底面にあるサブウーハー以外は、本体を眺めてもスピーカーの位置を確認できなかった。
耳を近づけると、サブウーハーと背面の排気口から音が鳴っているように聞こえる。
普通に聞いている時には、音が特定の位置からではなく、キーボード面とモニタとの接合部付近から広がるように聞こえる。
“THX Trustudio PRO”のサラウンド効果が効いているようだ。オンボードとしてはまずまずのサウンドといえる。
■キーボード
アイソレーションキーボードは、個人的には苦手なキーボード。
なぜならば、キーストロークが浅いためにペタペタと底を打つ感覚があって打ちにくいからだ。
しかし、この製品の場合は少しばかり印象が違った。
底を打った後の反発力が強く、そこそこの打鍵感がある。これまでに触れたアイソレーションキーボードの中では一番出来が良い。
また、底面のゴム脚だが、手前側と奥側の高さに差がつけられている。これによって、キートップ面に緩やかな傾斜角がつき、キー入力しやすくなるように工夫されている。
しかし、実際にゲームをプレーしてみると、アイソレーションキーボードはゲーム用途には不向きという感想しか持てなかった。
以下の3点がその理由だ。
- しっかりと押し込まなければならないので、回避アクションのように連続してキー入力する動作では入力しにくい。
- キーを押し込むとすぐに底を突くので、長時間プレーしていると徐々に指に堪えてくる。
- キートップがフラットであるため、指との接点が少なく不安定である。
キー配列については、ゲーミングノートであればテンキーはなくてもいいだろう。
無理にテンキーをつけることで、キー配列等にしわ寄せが及ぶくらいであれば、テンキーを廃してSHIFTやSPACEなどの使用頻繁の高いキーをゆったりとしたサイズにする方が、ゲーミングノートとしては望ましいだろう。
■CPU、GPU
CPUとGPUの性能をベンチマークソフト 3DMark、3DMark11 を使って計測した。
デスクトップPCとノートPCを各1台ずつを比較対象とした。
2機種のスペックは以下のとおり。
パーツ構成が一定ではないが、本製品の性能を知る上での参考程度にはなるだろう。
・ASUS S56CM-XX3517
【OS】 Windows 8 64bit
【CPU】Core i7-3517U 1.9GHz ~3.0GHz(超低電圧版)
【M/B】Intel HM76 Express チップセット
【MEM】DDR3-1600 8GB
【GPU】GeForce GT 635M
・自作デスクトップPC
【OS】 Windows 7 Professional 64bit
【CPU】Intel Core i7-2600K
【M/B】ASUS P8Z68-V PRO
【MEM】CORSAIR CMZ8GX3M2A1600C9B DDR3 1600MHz 8GB×2
【GPU】MSI R6870 Twin Frozr Ⅱ(HD6870)
・ViP Note
・S56CM
・自作デスクトップPC
両ベンチマークのGraphics Score、Physics Scoreの平均値で比較すると、以下の結果をなった。
- GeForce GT 635Mの144%、Core i7-3517Uの202%
- HD6870の54%、Core i7-2600Kの91%
比較対象のデスクトップPCは、旧世代のパーツ構成ではあるが、大抵のオンラインゲームを快適にプレーできる程度のスペックはある。
グラフィック性能については相当劣る結果となったが、CPUに関しては対比率91%と同等の性能があるようだ。
また、S56CMと比較すると、ノートPCからはかけ離れた高性能マシンであるといえそうだ。
動画キャプチャーソフトを使用しながらPSO2をプレーしても、遅延が発生することなく快適にプレーすることができた。
デスクトップPCと性能比較するに相応しい製品といえるだろう。
なお、PSO2の動作環境はこちらを参照していただきたい。
・よくあるご質問-プレイするにはどんなPCが必要ですか?
■排熱
デスクトップPCに迫るほどの高性能であることは分かったが、そうなると気になるのが発熱量と排熱の問題だ。
狭い筐体であるが故に排熱がスムーズに行われなければ、製品の寿命にも関わる。
ということで、高負荷時におけるCPUとGPUの温度を計測してみた。
・3DMark完走後
・PSO2を1時間程度プレーした後
CPU、GPUともに70℃程度で収まっていた。
排熱がスムーズにされているようなので、高負荷のゲームでも安心してプレーできそうだ。
多くのノートPCでは、排熱口が左右の側面に設置されている。
そのため、高負荷時には排気で手元が暖かくなり、不快な気分になることがある。
この製品では、排気口が背面と底面にあるため、排気熱で不快な思いをすることがない。
また、熱源となるパーツが奥側に配置されているようで、パームレスト付近が熱を持つこともない。
とても小さなことではあるが、プレー環境に配慮した設計はありがたいことだ。
ViP Note CL6X1W8-N67MXの総評
CPUとGPUの性能は一般的なノートPCを凌駕している。
これだけの性能があれば、かなり多くのゲームを快適にプレーすることができるだろう。
高性能であるが故に、冷却力不足を心配したが、排熱処理がスムーズに行われているので、その心配もなさそうだ。
不満に感じた点としては、やはりキーボードだ。
打鍵感のあるキーにしたり、キートップ面に傾斜をつけたりと工夫している点は評価するが、どうしてもアイソレーションキーボードは受け入れられない。
連続入力しにくい、指のフィット感が悪い、長時間打っていると指に疲れを感じてくるなど、ゲームをする上では利点がない。
アイソレーションキーボードを使うのであれば、指にフィットするようにキートップを湾曲させるなど、もう一工夫ほしいところだ。
確かにキーボードは改良の余地があると感じるが、それ以外は総じて良くできた製品といえる。
デスクトップPCを設置する場所を確保できないが、デスクトップに相当するスペックのPCがほしいというハイスペック志向のユーザーへの要求に合致するだろう。
ノートPCではあるが、これだけの性能があればメイン機としても活躍できるはずだ。
ViP Note CL6X1W8-N67MXをアップグレードする
(2018.7.7追記)
Vip Noteを使い始めてから5年が経つが、今でも家族用のPCとして活躍中だ。ただ、長年使っていると色々と不満が出てきていたので、パーツ交換してアップグレードすることにした。
この機種には高性能なCPUとGPUが搭載されているが、ストレージのHDDが足を引っ張って折角のスペックを十分に活かしきれていなかった。そこで、まずはHDDをSSDに換装することにした。
選んだのは、SAMSUNG 860 EVO 500GBモデル(MZ-76E500B/IT)。850 EVOの後継モデルでシーケンシャルリード550MB/s、シーケンシャルライト520MB/s、書き換え可能容量(TBW)は850 EVOよりも2倍に向上している。
このモデルはストレージ交換を前提とした設計がされているので、SSDへの換装は非常に簡単だ。本体底部のHDDベイカバーを外すだけで簡単にストレージにアクセスすることができる。HDDをスライドさせて引き抜き、SSDに差し替えればOKだ。
ちなみにHDDからSSDへのデータ移行には"Inateck FD2002"を使った。PCレスでHDDクローンを作ることができる。
シーケンシャルリード/ライトともに概ね公称値が出ている。既設のHDDがSATA 3Gb/sの転送速度で
あったため、十分に体感できるだけの速度向上を図ることができた。
SSDの交換に合わせて行ったのが、メモリの増設と無線LANモジュールの交換。
既設のメモリ(4GB×2枚)には、本体底部のカバーを外すことで簡単にアクセスすることができるが、実はこの機種にはキーボード下に更に2枚分の空いたメモリソケットがある。メモリソケットの左側に見えるのが無線LANモジュール。
添付の説明書にはキーボート下のソケットへのアクセス方法は記載されていないので、Vip Noteに搭載されているCLEVO社の同型マザーボードのマニュアルを参考にした。
Clevo P150EM, P151EM1 - Service Manual
4GBのDDR3 PC3-12800メモリを2枚を追加して8GBから16GBへ。余程のことがなければこれで十分なはず。
既設の無線LANモジュール(Realtek RTL8188CE)は、802.11b/g/n(2.4GHz/最大150Mbps)にしか対応していなかったので、mini PCI-Expressスロット対応カードのうちで最速(2.4/5.0GHz最大300Mbps)かつBluetooth接続可能な"Intel Centrino Advanced-N 6230"を選択。
ストレージ、メモリ、無線LANモジュールを交換又は増設したことで使用感がかなり良くなったようで、家族の評判は上々。
アップグレード費用は、SSD 13,980円、メモリ 4,800円、無線LANモジュール 1,050円で総額19,830円。古い機種の延命にどこまでお金を費やすのかというのは悩みどころでもあり、楽しいところでもある。
アップグレードはこれで一区切りにしようと思うが、CPUとGPUが安く手に入れば、更なるアップグレードも狙ってみようかな。
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