AORの傑作の一つであり、オーディオ試聴のリファレンスとしてもあまりに有名な、Steely Danの中心人物Donald Fagenのソロアルバム1作目「The Nightfly」。当然私もLPやダウンロードなどで随分前から所有していました。
ただ、Steely Dan時代の「Aja(彩)」「Gaucho」も含め、2011年のDSDマスター化された音源は結構出来が良いという話を聞いていました。そこで丁度Amazonでアウトレット品が出ていたということもあり、SACD/CDハイブリッド盤を購入してみました。
CDの場合、アウトレットと言っても大抵はケース破損であり、中身に影響が出ていることはまずありません。私の場合よく試聴等で持ちあることもありケースの割れは日常茶飯事ですから、特に問題ないということでアウトレット盤をよく購入しています。
世間で売られている大半のSACDと同様に、この盤もSACD層とCD層とが存在する、2層式のハイブリッドディスクです。詳細はブックレットの巻末で説明されていますね。
アルバムの内容については前述のLPのレビューである程度触れていますので、そちらをご覧いただければと思いますが、曲目だけこちらにも記載しておきましょう。
Pioneer PD-D9ではあまりに差が大きい
折角SACD対応のPioneer PD-D9を入手しましたので、SACD層とCD層とで音がどの程度違うのか比較してみました。
PD-D9でSACD層とCD層とを切替ながら聴くと、1曲目「I.G.Y.」の冒頭の1秒で違いは明らかです。
SACD層の方が音場の密度が濃く、楽器の音色の質感もずっと自然です。CD層は密度が薄いだけならまだ良いのですが、一部の楽器の音色が妙に偽物感を伴うようになってしまいます。また全ての音の立ち上がりが鈍いというべきか、聴いていて「このアルバム、こんなに音悪かったっけ?」と感じられてしまうのです。
ただ、これは必ずしもこのディスクの出来だけが原因という訳ではなく、PD-D9のCD再生の実力が低いことも影響しているのでしょう。恐らく今まで使っていたNEC CD-10で聴けばCD層も捨てたものではないという感想になると思われます。
念のためCD層をリッピングしてFLACファイル化して、moraで購入した16bit/48kHzのダウンロード版、LPからTechnics SL-1200G+TEAC PE-505+audio-technica AT-OC9/IIIで24bit/88.2kHzのWAVファイル化したものとで聴き比べてみましたが、ノイズの量以外のほぼ全ての要素でLPから作ったWAVファイルの圧勝です。ヴォーカルの生々しさや残響音のリアル感、全ての音の立ち上がり速さなどでアナログが圧倒しました。
一方同じFLAC同士の比較ですが、これはなかなか微妙な結果になりました。moraダウンロード版の方は音の立ち上がりはそこそこ速いのですが、音場の密度が薄くヴォーカルもやや細身です。一方SACDのCD層リッピングでは音場の密度はアナログに迫る濃さはあるものの、特にドラムの鈍さが気になります。比較的立ち上がりが気にならない曲調である「Maxine」などであればアナログに迫る音ですが、次の「New Frontier」ではドラムの音がなまっているように感じられるほどで、moraダウンロード版よりも魅力は低くなります。
PD-D9のアナログ出力からSACD層をオーディオインターフェース(MOTU HD192)に送って録音すればLPの音と比較できるのですが、結構大がかりな繋ぎ替えをしなければいけないので、この検証は後日に回したいと思います。
少なくともCD層を聴くために買う価値があるかといわれると難しいところで、SACD層をきちんと聴ける環境がある方にのみオススメできる盤といえます。
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購入金額
2,131円
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購入日
2025年02月05日
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購入場所
Amazon
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