所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストにとって「発信し続ける」ということはかなりのパワーを伴います。自分の中から「なにかを」絞り出して世間に訴える、その行為は自分を削ると同じ事。そのためアーティストの何割かは活動の休止、充電期間をとる場合があります。でもそこから再び返り咲き、新たな発信を続けられるかどうかはそのアーティストの創造の泉の深さや、気力・体力の充実度によって変わってきます。短期間に鮮烈な輝きを残しながら、たった4年で休養に入り、でもそこから蘇ってきた歌姫の最新アルバムをご紹介します。
絢香。彼女は2006年鮮烈なデビューをし、アルバム2枚
残して4年で活動休止する。この間シングル10枚のほぼすべてがTVや映画の主題歌/タイアップ曲という露出の凄さで、濃い足跡を残したが、その燦めきが煌びやかであったが故に、この休養は「燃え尽きた」とも思わせるものがあった。その4年目の休養、というタイミングには、「結婚」という事もあっただろうし、「持病の治療」ということもあったのだろうが、輝き続けることに、発信し続けることに疲れたのではないかと。
休養中は所属レーベルから離れ、デビュー以来彼女と作品を共作していた音楽塾ヴォイスの西尾芳彦とも離れ、ほとんど情報が入ってこなかった。どうしているのか、体調が良くないのか、音楽への情熱は冷めていないのか。休養前はさほどに熱心なファンではなかったcybercatには、ちまたに流れる情報以上のものは入手できず、彼女のことは2年間の超新星の輝き、と感じ始めた頃。休止からほぼ2年後、この作品の情報が入ってきた。
届けられた本作は、(初回限定盤の)白いジャケットが彼女の「白紙からの」“The beginning”という決意を物語っているようだった。果たして内容も共作は1曲のみで、残りは彼女が作詞作曲を手がける。アレンジャーも様々で、その共作曲を創った松浦晃久の他にも宇多田ヒカルとの活動が知られる河野圭やジャズピアニスト塩谷哲
など複数のサポートを受けており、この作品が彼女にとっては“The beginning”であったことがうかがえる内容。
「はじまりのとき」。ピアノ+生ギター+ストリングスがフィーチャリングされていながらこぢんまりとはせず、美久月千晴の音量大きめのベースがしっかりと雄弁に支える上に、表情が豊かになった絢香の声が乗る。ファルセットへの移行、震える声、声量の幅...ブランクを感じさせない彼女の新たな“はじまり”。
「Hello」は新たな絢香の幕開けを感じさせた「はじまりのとき」に続いて、まるでコンサートのような構成でハードでノリの良いこの曲が来る。少しハスキーさを増して、ややタメ気味に歌う絢香。歌うことの悦びに溢れたパワーとそれを楽しんでいるリラックスした感じが同居する。バックの玉田豊夢のラウドなドラムスとエネルギッシュな美久月のベースで、もう、ノリノリ!
「Magic Mind」。単調な打ち込みの4つ打ちバスドラムのリズムに乗せて、彼女が心情を歌う。サビとAメロの差があまりなく単調になりがちな曲の造りなのに、「聴かせる」のは彼女の声の表情か、詞の内容か。♪伝えきれない思いが/ヒラリヒラリ舞う~今を変えられない/自分の力の無さに/空しさだけが残るけど~怖くて/不安で/つぶれそうでも/One day light shines from the sky/ほら/見えてきたでしょ?♪彩を添える疾走するストリングスがカッコイイ!
自分を表現する、という“修羅の場”に戻ってきた彼女。でもこの作品のできあがりを聴くと、この2年は彼女の第2章を開くのに必要な「タメ」であったのが判る。
人は皆、大きく跳ぶ前には一度かがみ込む。そうして跳んだ距離は、いままでに到達しなかった場所だった。そんなことを想いながら聴いている作品です。
【収録曲】
<CD>
1. はじまりのとき
2. Hello
3. アカイソラ
4. The beginning
5. HIKARI
6. 空よお願い
7. 繋がる心
8. THIS IS THE TIME
9. そこまで歩いていくよ
10. 笑顔のキャンバス
11. Magic Mind
12. キミへ
13. やさしい蒼
<DVD>
1. はじまりのとき (MUSIC VIDEO)
2. DOCUMENTARY OF MUSIC VIDEO
「The beginning」
かつての絢香とは違う、そういう心構えで
かつての「西尾芳彦」とのコンビとは違う「絢香」。
深く、新鮮。
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購入金額
3,990円
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購入日
2012年05月04日
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購入場所
HMV
いぐなっちさん
2013/01/23
ところで、電子回路での意図しない発信は、なかなかの恐怖であります。
煙や火を噴くこともありますから・・・(^◇^;)
cybercatさん
2013/01/23
>休養を要するほどの病状ということで心配しておりましたが、
そうですね、あの病気はきちんとコントロールさえできれば日常生活に支障がない病気ですので、彼女のはコントロール良好のタイプだったんでしょうね。
>ところで、電子回路での意図しない発信は、なかなかの恐怖であります。
>煙や火を噴くこともありますから・・・(^◇^;)
むか~し乗っていた車の意図しない発進で恐怖して以来アンチATです(違