レビューメディア「ジグソー」

新春クロスレビュー Thermal Interface Material編

 

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

と、いうわけで。

年明け一発目の登録は勝手に新春クロスレビューをしたいとおもいます。
クロスレビューといっても某誌での複数人によるレビューではなく、複数製品を取り扱うレビューです。
今回はCPUとヒートシンク or クーリングプレート間に塗布する熱伝導グリスについて特徴的な製品を独断偏見によりチョイスしてみました。

 

チョイスした製品群は次の表になります。

ダイアモンドペースト OC7 写真がないのでZigsowに登録されている商品写真です。後日差し替えます。

シルバーグリス SG-7701

シリコングリス GS-02

シリコンゴム HT-04

フェイズチェンジシート HT-08

 

まず定番のペースト製品として、ダイアモンドシリコンの3種類を設定しました。

これは単体での熱伝導率が高い順です。

そして変わり種として、シート状の製品からシリコンゴムフェイズチェンジシートを採用しました。

 

*フェイズチェンジシートとは

相変化型機能材料(勝手に命名)で、某ガンダムに出てくる物理攻撃を一切受け付けない装甲とは全く関係無い

相(フェイズ)変化(チェンジ)の名の通り、固相液相変化する特徴を持つ。

このフェイズチェンジシートは信越化学工業が開発した製品で、通常では固相のシート状だが、加圧・加熱することでゲル状の液相へと相変化する。

基本的な概念としては、押さえつけにより圧力がかかり、CPUが発熱した際の熱でゲル状へと変化し、密着性を高め、自身がより薄く伸びることで熱抵抗を低減する。

あくまでもフェイズシフトとは無関係なことを言いたかった、もといガンダムという単語を出したかっただけでフェイズチェンジの仕組みやら熱抵抗の定義などについて説明する気は皆無なので、詳しく知りたい方はGoogle先生に聞いてほしい。

 

ちなみに今回、温度を比較するということで、周囲温度の変化が激しいと測定結果のばらつきなり誤差要因となってしまうので、空調の効いた十分に広い空間として、PC DEPOTのDIYコーナーで実験を行いました。

 

他に利用者がいないのをいいことに丸1日DIYコーナーを占拠しました。

 

 

もし年末のPC DEPOTでこの光景を見かけた人がいるならば先に断わっておこう。

犯人は私だ

写真を見ていただければわかるとおり、道具も揃っていて非常に便利です。

ディスプレイ、キーボード、マウス、電源ケーブルも置いてあるのでパーツ一式を買ったらその場で組み立てることができます。

箱は捨てていけるので、パーツ一式を購入し組みあがった本体だけを持って帰り嫁に内緒でPCを作ることができます

店頭購入なのでネットよりちょっと値は張ってしまいますが、ネット(例えばTSUKUMOなど)の買い物カゴ一覧などを印刷して持っていき、これを全部そろえてもらったらいくらになるか、と見積もりを出させるとだいぶ勉強してくれる

ちなみに店員の質はまばらなので何度か下調べをして詳しい店員にアタックすると良いでしょう。

そしてパーツ単位ではPC DEPOTのネット店舗価格と比較しても相手にしてくれないので一式で交渉するのがミソだ。

値付の基準は未だによくわからないのですが、グラフィックカードなどで、A社のはこれ以上値段が下げられないがB社なら下げられるといったりして、結果としてよりグレードの高い製品を安価に入手できる場合があります。

このあたりはどういった判断基準があるのか知らないが、まぁ喜んで受け取っておくべきでしょう

余談だが、作業場には制限時間があり、PCパーツセットアップは2時間、周辺機器設定は1時間となっています。

私はPCパーツを4回に分けて購入しているので4*2=8となり、ルール的にはどんなに安い買い物であったとしても一応居座ってもよいだけの買い物はしていた…はずです。

 

さて、だいぶ本線から脱線してしまったが、ここで本題に戻ります。

今回実験に使用したマシン環境は、次のSSです。

 

CPUには発熱量に定評のあるFX-8350を選択し、OCCTをぶん回します。

レギュレーションは次の通り。

  • CPU負荷にはOCCTを使用する
  • データセットはスモール
  • OCCT開始30分後のピーク温度を読み取る
  • 温度の読み取りにはOpenHardwareMonitorを使用する
  • その時点の温度ではなく、ソフトウェア上に表示されているMAX値を取得する。
  • 取り付け後2回目の数値をとる(1回目は馴らし)
  • 周辺温度は熱電対で確認。
  • リテールクーラーによる空冷
  • 周辺温度は20℃となるように測定結果を換算

 

ざっくりとこんな感じです。

まぁあまり難しく考える必要はないでしょう。

やっている本人が大したことは何も考えてない以上、そこについては考えるだけ杞憂、ということで。

雰囲気温度の測定はこちらのマルチメーター+K熱電対で確認しています。

 

温度の読み取りはこんな感じです。

 

ぶっちゃけシステム温度と称しているほうはどこの温度をとっているのかさっぱりなのですが、念のため、ということで。

 

てなわけで、さっそく結果です。

 

性能順に並べなおすと

ダイアモンドグリス>フェイズチェンジシート>シリコングリス>シルバーグリス>シリコンシート

という順になります。

 

意外なのがシルバーグリスの性能が思ったより振るわなかったことです。

というより、シリコングリスの性能が想定以上に優れている、という感じでしょうか。

これについてはちょっとだけ理由が想像できています。

シリコングリスは粘度がとても低く、かなり流動性が高い状態で販売されています。

そのため、リテールクーラーの締め付け圧力でもグリスの伸び広がりがよく、薄くなっていたためにみかけの熱伝導率が向上(熱抵抗が低減)したものと思われます。

それに対してダイアモンドやシルバーペーストは粘度が非常に高く、リテールの締め付け力では伸びが悪く、厚くなっていたために性能が芳しくなかったのではないかと思います。

それでもダイアモンドグリスの結果が最も優れているのはそれだけ素材の熱伝導率の高さが寄与していると思われます。

ダイアモンドとシルバーについては適切な塗布(方法及び量)をすることでより本来の性能に近づき、シリコングリスよりも高性能な結果をマークすると思います。

ただ塗布量や厚さについてはポンピングによるグリスの枯渇を考慮した際には、少なければ少ないほど良いとは言い切れないので、このあたりは運用との兼ね合いにもなってきますが。

 

*ポンピング

ポンプアウト、とかも言ったりするらしい。

CPUパッケージ基板(LSIが載っている基板)は、LSIが発熱するとお椀型にそるため、電源を入れるとCPUの搭載高さが低くなります。んで、これはCPUの発熱状況に応じて変動するため、CPUの金属カバーがヒートシンク表面との間を上下(縦)に往復(ポンピング)するので、間に塗布しているグリスがこの運動によって少しずつ外に押し出されるので、結果として有効伝熱面積上のグリスが減少します。グリスが減少することで十分な熱伝達を行うことができずに、結果として冷却性能が低下します。

この時点では部品の破損などではないので、再度グリスを充填してあげることで元の状態に復帰しますが、いずれ同様の現象で性能低下が発生します。

IntelのTIMがグリスになったことでこれと同様の現象がLSI-金属カバー間で発生し、LSIを焼損する可能性がある。巷では冷却効率が悪いとか騒いでいるが、こういったポンピングによるパーツの破損がもっとも忌避すべき危険性である。Intelの金属接合でも採用している某レアメタルは一応個人でも購入可能であり、融点が160℃程なので、業務用のドライヤーなどで頑張れば殻割後に自分で接合できないこともないが、基板の反りをコントロールする必要があるため、かなり困難を極める作業となる。

 

今回の測定結果で特筆すべきはフェイズチェンジシートの性能の高さではないかと思います。

グリスのように塗布量や周辺へのはみ出しを気にすることなく、ペタッと貼って使えるシート製品でダイアモンドグリスに匹敵する結果が得られるというのは、頻繁にクーラー交換をしないが、リテールクーラーも使わない、というユーザーには朗報だと思う。

頻繁にクーラー交換をするのであればコストパフォーマンスや保管などを考えてグリス製品を手元に置いておくほうが便利だと思うが、そうでない一発使用であればシート製品の手軽さはとてもありがたいと思う。

 

ちなみに、今回の持ち物登録となったフェイズチェンジシートですが、貼るのが非常に大変です。

手順としては

①片側の保護フィルムをはがす

②ヒートシンクなど塗布対象面に接触させ

③上から手などで5分ほど押さえつけなじませる

④なじんだらもう片側の保護フィルムをはがし

⑤残りの塗布対象面と接触させ固定する

といった感じなのですが、③の工程が大変です。

なじませなきゃいけないのになかなかなじみません

はじまないとどうなるかというと、④の工程でフィルムがはがれずにシートごと剥がれます。

僕はこの方法(添付の取説に記載)を諦めてピンセットで両面の保護フィルムをはがして、CPUにのっけて上からファン固定という方法をとりました。

このシート、かなり薄くて柔らかく、容易にちぎれます。

ピンセットだけでやろうとするとかなりの確率で破れます。

僕は1枚ダメにしました。

ふちをめくるときだけピンセットを使用し、全体をはがすときはへんな力が加わらないように手ではがすと良いと思います。

この辺は貼りやすいように製品側で改良してくれることを期待します。

 

では以上で新春クロスレビューを締めたいと思います。

やってる最中はかなりの時間を要したにもかかわらず、こうしてまとめると非常にあっさりで少し凹みました。

このレビューが少しでも皆様のPC自作ライフに寄与すれば嬉しいです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

/*追伸*/

本レビューとは関係ありませんが、実験中暇だったので店員とおしゃべりしてたらFX-8300本日入荷しましたと言われたのでうっかりIYHしてしまいました。

後日そちらのレビューも書きたいと思います。

…半年のうちに8150、8350、8300とたて続けにCPUを買ってしまったOTZ

  • 購入金額

    447円

  • 購入日

    2012年12月30日

  • 購入場所

    PC DEPOT

6人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 下小川さん

    2013/01/07

    遅くなりましたが丁寧な比較レビュー興味深く拝見させていただきました!
    ちょうど使用されたタイプの廉価シルバーグリス(のバカでかいお徳用)と、テストや仮止め用に繰り返し使えるシリコンシートを使用していたのですごく参考になります。
    今まで漠然と使っていたそれらが相対的にどの程度の性能なのか把握できていなかったので…

    こうしてみるとフェイズチェンジシートいいですね。使い切りでも組み替える予定が無いPCならあまり関係ないし…一度試してみたくなりました。私は力の加減がヘタなのでダメにしちゃいそうですが。
  • 来人さん

    2013/01/07

    >下小川さん

    コメントありがとうございます。
    毎度長ったらしいレビューをお読み頂きありがとうございます。本当に。

    >>今まで漠然と使っていたそれらが相対的にどの程度の性能なのか把握できていなかったので…

    そうなんですよね、これをはっきりさせておきたくて、今回実験してみました。

    >>ちょうど使用されたタイプの廉価シルバーグリス

    これについてはちょっとだけ反省点があります。
    量を多く盛りすぎてその分濡れ広がらなかったのかなぁ、と。
    パッケージに書いてある通りへらで適量をしっかり伸ばしてあげれば、熱伝導率で表されるような効果をしっかり確認できたと思います。
    …まぁ面倒くさいのでもうやり直す気は無いのですけれど(マテ。

    フェイズチェンジシートいいですよ。
    表記されている熱伝導率は低いのですが、しっかり接触してくれることと、仕上がりの薄さが相まってかなり良い数値をたたき出しています。
    しかもグリスと違ってポンピングの心配もありませんし。
    ちなみにフェイズチェンジシートは一度軟化してくれるので、ちょっと破れてもそこそこ綺麗に並べて張り直してあげれば問題ないですよ。
    1回失敗してちぎれたやつも測定はしたのですが、差はほとんど有りませんでした。
    (流石にデータとして並べるのは気が引けたので記録はしておりませぬorz)
    値段的にもワンコインでおつりが来る程度なので、お試しになるにはちょうど良いかもしれませんね。

    労力の割に雑なレビューでしたが、少しでもご参考にしていただける何かを提供できたのであれば幸いです。

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