レビューメディア「ジグソー」

種族を超えた母性というものでしょうか。おかあさんきつねの切ない想いが伝わる名作です。

  • by
    L2さん
  • 2016/08/26
  • (更新: 2016/08/26)

小学校低学年向けの絵本(よみもの?)、ということで、ほとんどを平仮名で書かれています。

しかし、素朴なようで、内容は随分と深いと思います。

 

こぎつねと楽しく暮らしていた、かあさんきつねは、病気でこぎつねを失ってしまいます。

その寂しさにふらふらと山を下りた時に、ぽつんと立つでんわボックスを見つけて、そこに通う男の子と電話の先で入院している為に男の子に会えない母親との会話に耳を澄ませて、我が子のように見守りながら相槌を打ちます。

その事が心の中に空いた寂しさを埋めてくれていた、と想うようになった頃。

でんわボックスは壊れてしまいます。

男の子が母親と電話できなくなってしまう!と案じたかあさんきつねは、何故か、でんわボックスに変身して繋がらない電話の代わりに男の子のお話を聞くことになりました。

そこで、初めて男の子と会話して、うれしくなる、かあさんきつね。

ですが、それは、男の子が母親の住む街に引っ越せるんだよ、という報告の電話でした。

 

最小限の文章だからこそ、真っ直ぐに心に沁みる言葉があって、それが平仮名であることで柔らかく伝わってくる作品です。

 

「ぼうやが、うれしいと、かあさんはいつもうれしいのよ」

まだ、こぎつねが元気にかあさんきつねと遊んでいた時のセリフです。

暖かくて、愛情のこもった一言ですね。

一度読了してから、このセリフのページを読み返すと、深い愛情を感じて涙腺が崩壊します。

 

社会人になってからも、読むべき本、ではないでしょうか。

  • 購入金額

    1,155円

  • 購入日

    不明

  • 購入場所

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