カナル型を含むインイヤー型のイヤホン。現在外出時に音楽を楽しむためにもっとも使われているタイプのヘッドホン/イヤホンの種類だろう。そしてその種類たるや何百種類あるのか判らないほどだ。1メーカーで1種類しかないというのは稀で、ほとんどがケータイ付属品のような音が聞こえれば良いレベルから、耳の中に入れると言う点で著しいサイズ制約を受けるなかに考えつく限りの高音質化技術を詰め込んだものまで、ピンからキリまでを揃える。音質以外にも付加価値の追求もある。ユーティリティと言う点ではボリュームコントロールや巻き取りのためのリールを備えるもの、防水性を追求したものなどの工夫がある。さらに顔の周りに位置するものとしてきらびやかなカラーやスワロフスキー風装飾をしてファッションテイストを加えたものまで様々。価格も3桁前半~10万の声を聞くものまで1000倍近い差がある。そんななか実売3~4千円の激戦区に投入されたカナル型イヤホンが「PHILIPS SHE9000/98」だ(同社では“インイヤーヘッドフォン”と称する)。この価格帯に求められるのはコストパフォーマンス。3000~4000円というのは聞こえれば良いという状態から、音楽を本気で聴くことにしてまず考えるくらいの投資。このゾーンのリスナーは「ちょっと良い」のをはっきりと実感したいゾーン。最低ランクの機種とは明らかに違う「なにか」を求める。このインイヤーヘッドフォン「SHE9000/98」がそのお眼鏡にかなうか、試してみよう。
まず外箱はシックな紫基調のものだ。そこにPHILIPSの社名がコーポレートカラーの青で入る。
そこに書かれているうたい文句は「力強い高音質・重低音再生-Deep Bass-」
この機種は低音に力を入れている機種のようだ。外箱裏には英語、中国語、韓国語、日本語の順で商品説明があり、これが少なくとも東アジア全域で売られるグローバルモデルであることが判る。このあたりの工夫でコストを下げているのだろう。箱を開けると本体とサイズの異なるイヤーピースが収められている。あえてポーチやクリップといった収納系のグッズやボリュームコントロールといった付加価値にふらず、音質のみで勝負に出ている。外箱の工夫と合わせて、かけられるコストはすべて音質にまわした、ということなのだろう。
気がつくのは一種変わったイヤーピースがあることだ。これはフォーム系のイヤーピース。フォーム系は潰して耳に押し込むと中で復元しより密閉度を高める素材。押し込まれるシリコン系より圧迫感がなく、高い遮音性が得られる素材だが、ただ汗や雨といった水分に弱い傾向にあり、こういった量販価格帯のイヤホンに使われることは少ない。これが付属していることでPHILIPSの本気を感じた。
シリコンタイプのものも、本体側に密着する部分に赤い硬めのシリコン素材を使い、耳に当たる部分は黒の薄い素材としている。この外側の素材は非常に柔らかく、耳への密着性が良いものだ。下から薄く赤い色が浮かび上がるスモーク調のカラーに見え、他にはない個性を出している。
本体側もCOOLだ。ヘアラインのアルミ素材で、カラーはいぶし銀のような鈍いシルバー。そこに左右記号やラインが朱色に近い赤で入る。ちょうどイヤーチップがスモークの後ろから朱が透けるようなカラーなので、非常に独特。
一方フォーム系チップのcomplyフォームイヤーピースは素材の特性上単色なので、もう少しシックな感じになる。
イヤホンプラグは金メッキされた高級タイプ。工夫としては両耳のユニットへコードが分かれる部分までは布巻。分岐後はゴムの様な素材。この布巻のところは適度な硬さがあり、ペタペタせず絡みにくい。
一方普通の素材となる両耳のユニットまでは細いこともあり絡みやすい。ただこれを防ぐために絡み防止のスライダーが付属しており、これをユニット側に移動しておけば絡むことは少ない。
まず箱から出すなり聴いてみたが....う~ん、なるほど「Deep Bass」...というかBassのみ。低音の量はものすごいがもこもこしていて質は高くなく、中域・高域はかき消されている。今回同時にレビューしたヘッドホン「PHILIPS Fidelio L1」がエージング必須だったため、一緒にエージングしてから評価することにした。一晩中鳴らすので、5日間にわたってApple iPod shuffle 3rd Gen
につないで鳴らしたが、Apple iPod shuffleは「充電しながら音楽を鳴らす」ということができないため、一緒にエージングしている「PHILIPS Fidelio L1」のエージング状態を見に行くと、必ずバッテリー不足で切れており、正確なエージング時間は判らない。ただ1回6時間は保つとすると計30時間、最後の1日は「PHILIPS Fidelio L1」のエージングから開放されたiriver P8
を用いて24時間ぶっ通しに実施したため、50時間は間違いなく超えている。
すると....上が晴れてきた!低音の量は変わらないがもわっとした感じがガッツリした感じとなってきた。今まで自分が持っていたものの中で最も下がでる。ブンブン、ズムズムと言う感じだ。確かに「Deep Bass」。量が圧倒的だ。このインイヤーヘッドホンはどのような音楽に合うのだろうか。
存在感のあるそのカラーリングに反して、実際の大きさは小さく、耳の中にすっぽりと入る「SHE9000/98」。どのような音楽に合うのか手持ちのイヤホンと比較してみよう。
比較するのはVictorのイヤホン「HA-FXT90」。
ツインシステムユニット採用の低域の分解能と高域の開放感のバランスが良い。カーボン素材の低音域用振動板を保つイヤホンだが、低音の量は多くなく「きちんと聞こえる」という点に美点がある。むしろ高域の開放感は密閉型とは思えない広がり。女声バラードなどは大得意。
あとひとつは超個性派イヤホン(色がw)、「Carot One TITTA」。
青のイヤーピースとオレンジメタリックのハウジングのブッ飛んだ組み合わせから出る音は主張がある暖かい音。重低音はないが中低音は弾む音で充実しており、楽しい。ジャズ系のドライヴ感やJ-POPの楽しさは格別。
これらは購入価が「PHILIPS SHE9000/98」から比べると格上も格上。購入時「Victor HA-FXT90」は1万円弱、「Carot One TITTA」は9千円弱。2012年12月現在3~4千円、発売直後でも5千円を切っていた「PHILIPS SHE9000/98」と比較するとおよそ倍。このクラス違いともいえる無差別級マッチはどういう結果になるのだろうか。
まず外観比較。
強烈な補色関係の色合いの「Carot One TITTA」に「PHILIPS SHE9000/98」も負けていない。シブイガンメタ調の沈む銀に入る朱のアクセント、小粒だが主張がある。「Victor HA-FXT90」はツインユニットのハウジングが大きいが、色合いは地味。特に(保護も兼ねているのだろうが)ユニットから伸びるコードを覆う保護材がプラスチッキーか。
プラグ側は意外に本機が一番高級感がある。
「Carot One TITTA」はユニットハウジングとコード分岐部はアルミだが、プラグ部分はオレンジのプラスチック。「Victor HA-FXT90」は何の変哲もない黒のプラスチック。「PHILIPS SHE9000/98」はメタル調のリングがアクセントになっている。フィニッシュはいずれも金メッキだ。
コード長は「Carot One TITTA」=「PHILIPS SHE9000/98」<「Victor HA-FXT90」で「Victor HA-FXT90」のみ125cmで少し長い(写真では「Carot One TITTA」が短いようだがコードキーパーへの巻き癖によるもの)。
イヤホン類はポケット、あるいはポーチなどに入れたプレイヤー本体からコードを伸ばす場合が多いと思われ、本機の120cmでも十分な長さだ。胸ポケットに入れた場合は少し長すぎるかも知れないが、この際は絡み防止に布で覆われたコードは有効だ。
重量は軽く、9g。
「Carot One TITTA」の13g、
ツインシステムユニットの「Victor HA-FXT90」は18g、
と本機が一番軽量級。耳につけるものゆえ、あまりに重いものはうざったいが、スピーカーなど振動ものはある程度の質量を要求する面もあり、最大倍違うこの差がどう出るか楽しみだ。
各試聴曲の設定テーマにしたがって、3つのイヤホンで比較試聴を行った。
環境は以下の通り
試聴元ファイル:下記各CDよりリッピング⇒FLAC変換したもの
リッピングソフト:fre:ac
再生デバイス:iriver P8
なお標準で2種のイヤーピースを添付する「PHILIPS SHE9000/98」に関してはシリコンキャップをつけたものでの評価を「SHE9000(シリコン)」、低反発フォームクッション(complyフォーム)をつけて聴いた評価は「SHE9000(フォーム)」と表記した。
比較対象機のVictor HA-FXT90は「HA-FXT90」、Carot One TITTAは「TITTA」と表記した。なおCarot One TITTAに関しては普段使いではMONSTERのジェルタイプのイヤーチップ
に変更しているが、この比較では販売状態での比較したく元に戻した。
試聴ソース①:ジャズボーカル
I Will Wait For You/Lisa from “JAZZ BAR 2011”
「Lisaの息づかい、囁く歌声のエロさw。フルアコの存在感。」
・SHE9000(シリコン):ベースはイヤミにならないギリギリレベルだが少しこもり気味。リムショットは柔らかな感じ。音場は狭めでLisaは近いがハスキーさが強調されている感じ。
・SHE9000(フォーム):こもって聞こえたベースは少し晴れる。音場がやや広がった感じ。Lisaの声自体は変わらず柔らかめの中低域が持ち上がったもの。
・HA-FXT90:ベースはきちんと聞こえるがふくよかさはない。ハイハットとリムショットがきつく聞こえる。後者はメタルスネアのよう。アコギも弦鳴りよりもピッキングの方が目立つ感じ。音場は上に広がり、Lisaのボーカルは明瞭。擦過音が良く聞こえるので、最後の吐息とともにはき出される声は少し色っぽい。
・TITTA:エロい。ヤヴァい。音域は広くない。ベースは胴鳴りよりも弦鳴りが主、そんなに音場も広くないが、最後の囁くようなLisaのボーカルはのどの奥でならす声が吐息とともに唇を放たれるのが判る。
【判定】エロ度:TITTA>>SHE9000(フォーム)≧SHE9000(シリコン)>HA-FXT90
※TITTAのエロさが群を抜いている。
試聴ソース②:ジャズ
I & I/矢野沙織 from “I & I”
「シンバルの音。近めに録っているライドのレガートでシンバル全体が鳴っている感じだが、シンバルの「大きさ感」が描き出せるか。」
・SHE9000(シリコン):ゴキゲン。ベースのドライヴ感がいい。ハコが鳴っている感じ。シンバルはやや引っ込んだ感じだが、シンバル自体の鳴りは聞こえる。広がりは薄い。
・SHE9000(フォーム):ベースのドライヴ感は同様に素晴らしい。弦だけでなくボディが鳴っている感じ。シンバルは少しマスクされたような鳴りで引っ込んだ感じ。
・HA-FXT90:シンバルの空気感は一番良い。鳴っているシンバルの揺れは判る。ただシンバルの倍音がメインで基音は薄い。ベースは硬めだがガツンとしたアタックはあり、引っぱる。
・TITTA:ベースはドライヴィンだが、弦の音の方が大きい感じ。シンバルの大きさ感も佳く表すが、少しごちゃっとした感じ。空気感を描き出すところまでは行かない。
【判定】シンバルの音:HA-FXT90>SHE9000(シリコン)≧SHE9000(フォーム)≧TITTA
※ベース中心に見ると断然SHE9000(シリコン)。グイグイ引き込まれる。
試聴ソース③:フュージョン
TRUTH 21c/T-SQUARE plus from “TRUTH 21c”
「音像分離。大きく録っているバスドラと8分音符刻みで延々と弾かれるベース、ソロ以外ではベタでならされるキーボードがきちんと描き出せるか。」
・SHE9000(シリコン):ベースはきちんと音が鳴っている。響く!でもヌケは今ひとつ。スネアのチューニングが下がった感じ。
・SHE9000(フォーム):シリコンと大差ないがさらに重心が低く、ベースが上がった。その一方ギターは少し引いた感じ。
・HA-FXT90:分離は良い。低音はなく、バスドラのアタックの下にベースがベタで鳴っている感じ。堅い音だが、ギターのニュアンスは良く聞き取れる。
・TITTA:バスドラはドスっ、という感じに。ベースは符割りが見えてきた。低域が充実してて分離が良い。スネアのドスが利いている。
【判定】音像分離:TITTA≧SHE9000(フォーム)≒SHE9000(シリコン)>HA-FXT90
※塊感と分離のバランス、から言うとTITTAか。僅差。中~高域だと圧倒的にHA-FXT90。
試聴ソース④:J-Pop
ライヴ/唐沢美帆 from “ライヴ”
「音場の広がりと音質。右ch端のアコギのアルペジオ、左ch端で鳴るエレキギター、ストリングスの広がり、左chから鳴り始め中央へ展開してくるハープ、バックが薄いAメロの「部屋の大きさ感」。打ち込みのハイハットの音が耳に刺さるかどうか。」
・SHE9000(シリコン):少しくぐもった感じになる。広がりは少ない。ハイハットは少しキツイ。
・SHE9000(フォーム):同様に少しくぐもった感じで、広がりは少ない。ただアコギの音はピッキングばかり目立つものでなく、ボディの鳴りが感じられるバランスに。ハイハットは耳にやさしい。
・HA-FXT90:Aメロの部屋の感じは一番描き出す。音場の広さも感じる。ただ重心は高く、ハイハットはやや耳に刺さる。
・TITTA::Aメロの部屋の感じは少し淡いが判る。音場の広さはあって低域もソコソコ。ただハイハットは最もに刺さる。
【判定】音場:HA-FXT90≒TITTA≧SHE9000(フォーム)≒SHE9000(シリコン)
※堅い打ち込みのリズムのいなしかたの違い。一長一短だが、SHE9000はこもった感じになってしまった。
試聴ソース⑤:アイドル系
Love ♡ Wars/Queen(板野友美) & Elizabeth(河西智美) from “Love ♡ Wars”
「低音♡。ドライヴするベースのボトムエンドの充実度とバスドラムの分離。低音域の音量と音圧、中~高域とのバランス。」
・SHE9000(シリコン):ベースはブリブリ弦が唸っているし、ドラムも胴鳴りがしているがチョイ過剰気味でモワっとしている。Queen & Elizabethのボーカルは少しこもった感じ。ギターも少し引っ込んで、ベースモニター?という感じ。
・SHE9000(フォーム):シリコンの音調に静けさが加わるので、左右chの端で鳴っている音や、Queen & Elizabethのボーカルは良く聞こえる。ただ上の伸びは相対的にかなり低下する。
・HA-FXT90:バスドラはビーターのアタック音、ベースも弦鳴りはなくアタックだけという感じ。ただその分Queen & Elizabethのボーカルはニュアンス含めよく聞き取れる。
・TITTA:バズトラのアタックは「くる」。それは皮鳴りもふくめたもの。バスタムも皮鳴りが聞こえる。ベースはブリッとしたピックアップとブリッジに近い感じの音で、「量」はたいしたことがないが、ベースの躍動感がある。
【判定】低音:SHE9000(フォーム)≧SHE9000(シリコン)≧TITTA>>HA-FXT90
※低音の「量」に絞ると上記だが、SHE9000はヌケがイマイチで「質」を加えるとTITTAも結構イイ。
試聴ソース⑥:アニメ系
風のとおり道/杉並児童合唱団、久石譲 from “となりのトトロBOX”
「音響(残響)コントロール。左右chの端で延々と続くシーケンスパターンにかけられた浅いリバーブ、合唱にかけられた荘厳な感じの厚いリバーブ、メロディとリンクしたグロッケンのような響きと対旋律の矩形波系の音色の残響の違い、リムショットなどリズムにかけられたディレイを含む深~いエコー...これらの差が描き出せるか。」
・SHE9000(シリコン):歌声にかけられた残響は薄い感じだが、左右のシーケンスパターンははっきり聞こえる。リムショットの深いリバーブは...というかリムショット自体が遠くにかき消されているような感じ。
・SHE9000(フォーム):フォームならではの静けさで合唱にかけられたリバーブは良く聞こえる。ディレイを含むリムショットのリバーブは奥に引っ込んでいる。
・HA-FXT90:リムショットは基音が目立って残響は少し↓。合唱と矩形波の対旋律のリバーブは◎。左右の広がりを感じる。
・TITTA:リムショットのリバーブの深さが気持ちよい。合唱のリバーブは小さめだが、それは声が前に出てきたから。左右の広さ感はソコソコだが、各リバーブのかかり方の違いが聞こえる。
【判定】残響:HA-FXT90≧TITTA>SHE9000(フォーム)≧SHE9000(シリコン)
※HA-FXT90のクリアさと見通しの良さが光る。ただTITTAのリムショットのディレイとリバーブの深さは格別。
試聴ソース⑦:クラシック
ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18 第1楽章 Ⅰ.Moderato/小山実稚恵、BBC交響楽団 from “ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調”
「ダイナミクス。スフォルツァンドのオーケストラヒットの雄大さ。オクターヴ奏法のピアノの打鍵の力強さ。」
・SHE9000(シリコン):スフォルツァンドで「下が鳴る」迫力。コントラバスがドンと来る。ピアノのオクターヴ奏法の部分は上は伸びていないが、ストリングスの中域の厚さで意外と○。
・SHE9000(フォーム):シリコンの音色傾向にフォームによる静寂さがプラス。オクターヴ奏法の部分も、やや多くの音が聞こえる。スフォルツァンドの迫力は少しこもった感じで、やや劣るが、ほぼシリコンと同レベル。
・HA-FXT90:ストリングスは表情が良くくみ取れる。高音楽器が厚いので、スフォルツァンドの部分は意外に迫力ある。ピアノのオクターヴ奏法の部分は分離良く、激したピアノ、ストリングスもヴァイオリンの包み込むような広がりとコントラバスのベース音が聴き分けられる。
・TITTA:雄大な感じはないが、ストリングスは厚い。スフォルツァンドの迫力は今ひとつ。ラッパの響きはいいけど。後半のオクターヴ奏法の部分のピアノは「くる」。
【判定】ダイナミクス:SHE9000(シリコン)≒SHE9000(フォーム)≧TITTA>HA-FXT90
※オーケストラのフルヒットはさすがに要求性能が高い。迫力も含めたダイナミクスさではSHE9000だが、TITTAの分厚さ、HA-FXT90の煌びやかさも一長一短。というかいずれもドングリの背比べ。
「TITTA」と「HA-FXT90」はほぼ真逆。色気の「TITTA」と透明感の「HA-FXT90」、味付け積極的に行うのでハマるとスゴイ「TITTA」と、日本人のきまじめさ?あくまで性能追求の「HA-FXT90」という感じか。対して「SHE9000」はいずれもソコソコそつなくこなしている。でも光るのはベースが強い曲。特に元があまり低音が多くないが、ポップな曲、というのはハマる。ズムズムと体を動かす低音で楽しい!
逆にもともと低音が多い曲は少し過剰になりがち。ラウドネスやベースブーストをバンバン入れるような人は気にならないかもしないが、明瞭感は喪われる。ただし、これはエージングがさらに進めばもう少し好転する可能性がある。いずれにしても価格以上のお値打ちイヤホンであることは間違いなかった。
今回、激戦の3~4千円台の価格帯に音質で挑んだ「PHILIPS インイヤー ヘッドフォンSHE9000/98」を使用する機会を得た。対比したのはより上級のクラスのイヤホンであるにもかかわらず、主に低音に輝きを魅せたその音色は「Deep Bass」の名に恥じないものだった。
この機種の魅力は
・充分な低音
・フォーム系チップも試せる豊富なサイズのイヤーチップ
・コストパフォーマンスの高さ
である。特にアイドル系の低音強めのダンスチューンには最適だった。
一方、
・高域の相対的弱さ
・充分なエージングが必要なこと
はウイークポイントだろう。
高域に関してはこの低域があるからアラが見えるだけで、この価格帯のイヤホンとしては充分なモノではあるが、それがエージング前だとさらに強調される。この価格帯のイヤホンを使う層はそのような作業の知識がないことも多く、パッと聴いて低音モコモコのヌケの悪い機種、と片付けてしまわれそうな点は残念だ。その作業の果てにはどっしりとした低音に乗るはっきりとした中音域、という世界が広がっているのだが、それにたどり着くまでこれを使い続ける、というのはなかなか辛抱強い作業となる。
しかし、このイヤホンがもつポテンシャルはそこにある、というのがレビュー後半になって判明したのは嬉しい誤算だった。低音好きのひとに勧められる、コストパフォーマンスが高いイヤホン、それが“Deep Bass”「PHILIPS SHE9000/98」といえるだろう。
末筆とはなりましたが、今回このような機会を与えてくださった株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン様及びzigsow事務局様に御礼申し上げます。またレビューアップまでの応援など常に支えとなってくれたおものだちの皆様はじめzigsowerの方々に感謝いたします。
ありがとうございました。
【仕様】
・再生周波数帯域:6-23,500Hz
・インピーダンス:16Ω
・感度:102dB
・スピーカー径:10mm
・最大入力:15mW
・コネクタ仕上げ:金メッキ
PHILIPS SHE9000/98製品情報
オーディオなんちゃってマニア道
エージングすると上は出てくる。ただ特筆する点はないが。
最初は本当に出ない。エージングによってやっと出てくる。ちょっとカルい感じの高域。
やや低音がかぶさるのでヴォーカルは基音中心のドスが効いた感じに。迫力はある。
男声だとドス効きすぎるので、意外にアイドル系で声が細いのを補うのが良いか。
多い。ただソースによってはやや過剰。
低音好きな人、もしくは音量絞り気味でもしっかり下が出るので、そのような好みの人には最適。
密集している。分解能は高くない。ただ逆に塊感、エネルギー感はあるが。
悪く言えばごちゃ。よく言えば突破力。デジタル系のドンシャリ系の音楽には合う。
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