セール価格が妙に安かったので、何の予備知識もなく買ってしまったイヤフォンです。後で調べて本来は意外と高価な製品だと知った程に、存在以外はほぼ知らない状態で買ってしまったのが、今回取り上げるEarSonics SM3 v2となります。
EarSonicsは2004年創業のフランスのイヤフォン専業メーカーで、自社工場内で開発から製造まで一貫して行っています。本来はカスタムIEMを手がけているブランドですが、日本では流通の関係でユニバーサルIEMのみが販売されていました。現在は代理店がついておらず、正規流通品はユニバーサルモデルも含めて手に入らなくなってしまったはずです。
そのEarSonicsが2016年に発売したラインナップの中間モデルとしてリリースされたのが、このSM3 v2です。当時の店頭価格は7万円前後で、3BAドライバー3ウェイ構成となっています。
パッケージ裏面にスペックが記載されていますが、3BAドライバーの割には周波数範囲は20 - 18,000Hzと少し高域方向が狭めとなっています。まあ、静まった室内で集中して聴かない限り、18KHzよりも上の音を意識して聴くことは出来ないでしょうけど…。
パッケージの演出はクラス相応というところでしょうか。当時約7万円ですから、中級機から高級機に片足を突っ込んだ程度というクラスですね。
パッケージ内容はこの通りです。面白いのはイヤーピースはダブルフランジタイプが標準であるということでしょうか。ノズルがやや細身で、他に手頃なイヤーピースを用意できませんでしたので、この後の試聴は添付イヤーピースで行いました。
聴き疲れしにくい傾向だが、質感がもう一歩
それでは実際に音を聴いてみましょう。
写真では標準ケーブルを組み合わせていますが、標準ケーブルで傾向が少しつかみにくかったので、試聴時にはBrise Audioの福袋に入っていたFlex001SE相当と思われる、CIEM 2Pin - 2.5mm4極バランスケーブルを組み合わせています。
DAPは写真通り、HiBy R6を使っています。
まずは最近聴き慣れている「CWF II / Champlin Williams Friestedt」を聴きます。
第一印象としては中域重視型という印象でしょうか。レンジはやや高域方向に頭打ち感があるものの、低域方向はよく伸びている感じがします。ただ、量感はそれほど多くはなく、押出しも弱めなのであまりはっきりと出ているという印象は受けないかも知れません。
音場はイヤフォンとしては広めで、中域の密度も十分に濃く描写されます。CWFの楽曲では、ジョセフ・ウィリアムズ、ビル・チャンプリンの2人のヴォーカルがなかなか良好です。
高域方向はまずまず繊細ですが、イヤーピースの影響もあってか少し量が少なめという印象でしょうか。ただ、どの帯域でも刺激分があまり感じられずまろやかさを感じる音で、イヤフォンとしてはなかなか珍しい音調です。
ところが、首をかしげざるを得なかったのはこちらのソースです。
デイヴィッド・ギャレットのヴァイオリンの音色が全然良くないのです。CWFでヴォーカルの質が良かったので期待して聴いたのですが、ヴァイオリンの音に芳醇さが全く無く、妙に痩せてしまうのです。ハイハットの音よりもヴァイオリンの音の方が刺激分に感じられてしまうほどでした。
その後も何曲か聴いてみて、ロック・ポップス系のヴォーカルなどは概ね好印象であるものの、スピード感重視の曲ではやや物足りなさが残るという印象です。ミディアムテンポ以下の曲は概ね好印象でした。
ヴァイオリンの音を聴いていなければもう少し高評価だったと思うのですが、これが気になってしまうため手放しで評価できるというところまではいきませんでした。とはいえ、実売価格1万円のイヤフォンとして評価すれば全く文句ない水準であることも間違いなく、今回に関しては十分にお買い得だったと評して良いでしょう。
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購入金額
10,000円
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購入日
2021年06月13日
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購入場所
eイヤホン
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