レビューメディア「ジグソー」

NEC製CDプレイヤー最後の力作

 

 

今では通信機器・PC関連のイメージしかないNECですが、かつてはオーディオ機器も手がけていて、多くの名機を輩出していました。

このCD-10はNECがオーディオ機器から撤退(社内ベンチャー発のオーセンティックが後を引き継ぐ形となった)する前の最後のタイミングで発売され、10万円クラスとは思えない物量と音質で話題となった機種です。絶大な影響力を持っていた評論家、故長岡鉄男氏がリファレンス機として愛用していたことでも知られます。


実はこの機種の基本構造はNECが先行して発売していたCD-816という機種に酷似していて、メカなどは殆ど同一のものといわれています。ただ、CD-10はCD-816からさらに細部を突き詰めた設計となっているということが出来ます。

音質はNECの名作プリメインアンプA-10シリーズに通じるものがあり、力感やスピード感、分解能という点で明らかにクラスを超えたものです。しなやかさや繊細さという要素は後退気味ですが、同一クラスの他社製品と比較試聴してみるとあまりの違いに驚くほどでした。

幸い組み合わせているプリメインアンプ、SANSUI AU-α707DRには配列の互換性があるXLR端子(2番HOT)が用意されていますのでバランス接続も試しましたが、力感や純度の高さに磨きがかかる印象です。もっとも、XLR入力はアンプ側で録音機器に出力することが出来ないため、常用するのは依然としてRCA入力ですが。

更新: 2024/10/02
総評

10年以上の付き合いで凄さを実感

このレビューは割と初期に投稿したため写真を殆ど掲載していませんでしたが、先日故障対策でヒートシンクを装着しましたので、その際に写真も撮影しました。それを活用しつつ追記していこうと思います。

 

 

 

 

 

本機の特徴といえるのは出力の豊富さです。

 

通常のRCAアナログ出力、光デジタル、同軸デジタルの他に前述のXLRバランス出力や、RCAピンによる逆相出力も備えます。

 

 

 

 

 

 

 

私が所有する個体はオーディオ機器が捨て値で取引されていた頃の中古品です。製造番号の見方がNECのPC製品と異なるらしく、製造時期等ははっきりしたことはいえません。

 

 

 

 

 

 

 

ただ純粋な製造番号は下5桁(この場合00021)のような気もしますので、かなりの初期ロットである可能性があります。製造者の日本電機ホームエレクトロニクス(NEC-HE)の解散が2001年、NECによるオーディオ機器のサポート完全終了が2011年ですから、随分古くなってしまったものです…。

 

 

 

 

 

 

 

こちらは上蓋を外した内部写真です。10万円クラスのCDプレイヤーとしては異常に電源関連の専有面積が大きい(写真右側の上半分はほぼ電源回り)のが特徴といえます。

 

 

 

 

 

 

 

使われているコンデンサーは殆どが日本ケミコン製のオーディオ専用品、AWFです。今ならコンデンサー代だけでいくらかかるのかと思ってしまうほど贅沢に使われています。

 

D/Aコンバータについては各所で説明し尽くされている通り、Philips製の名作16bitラダーDAC、TDA1541A S1(TDA1541Aの最高選別品で王冠マーク2つが印刷されます)を左右に2つずつ搭載するという4DACシステムを採用しています。もっとも、現代の感覚ではやはりラダー型の16bitではCD規格であっても能力は不足していたように思います。CD-10は基本的には今でも素晴らしい音を持つ製品ですが、どうしても高域方向の粗さは常に感じられますので…。

 

とはいえ、回路設計自体もバランス伝送を大前提としたものとなっていて、このクラスとしては考えられないレベルでの本格的バランス回路でした。4DACシステムはそのための前提条件といえます。

 

デジタルフィルターはNEC独自の16fs TFC(Transversal Filtering Circuit)を採用し、これによりローパスフィルターを排除することが可能となり音の鮮度が大きく向上したとされています。この16fsは8fsを半周期ずらした波形を生成することで、その中間値から16fs相当の信号を取り出すというものです。NECが1987年に発売したCD-830DS(クラス的にもCD-10の前身に当たるが、内容的な前身は下位モデルCD-816となる)で初搭載されていた技術です。

 

 

 

 

 

 

 

電源及びアナログ回路側の基板を見ると、音声信号が通る部分にはフラットケーブルや汎用コネクターは使われず、全てある程度の太さを持ったケーブルを、半田直付けで接続していることがわかります。これも本機ならではの鮮度の高さや情報量の豊富さに貢献しているということでしょう。製造工場は泣いていたでしょうけど…。

 

 

 

 

 

 

 

これは天板を写したものですが、2箇所ビス留めされていることが判ります。この2箇所は天板の剛性を保つと同時に、メカ側とアナログ回路側を仕切る内部の板を補強する意味もあるのでしょう。現在SOULNOTEで活躍する加藤氏もNEC在籍時にこの製品の設計に関わったと仰っていましたが、この時代は現在のSOULNOTEとは真逆で、とにかくしっかり固定して共振を排除することが持てはやされていました。

 

 

この製品を使う続ける間にSANSUI CD-α607やPioneer PD-D9という、より新しい製品も入手しましたが、この製品の圧倒的な鮮度の高さや三次元的音場にはどちらも及ばず、高域方向の緻密さに弱点があることは理解しつつもこの製品を手放すことが出来ないでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数年色々なSACD/CDプレイヤーを聴いていますが、恐らくこの製品から入れ替えて素直に納得出来るレベルの製品となると、現行モデルであれば30万円台が最低ラインという気がします。とてもそのクラスの製品は買えませんので、まだまだCD-10に頑張って貰うことになりそうです。

  • 購入金額

    4,200円

  • 購入日

    2007年03月30日

  • 購入場所

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • Yujiさん

    2012/07/20

    懐かしいですね。NECのエースナンバーを背負ったCDプレーヤー!
  • jive9821さん

    2012/07/20

    コメント有難うございます。

    NECのオーディオ機器はこの前の世代までは黒い無骨なデザインだったのが、A-10Xやこの製品では急にゴールドパネルのシンプルなデザインに変わって驚かされた覚えがあります。本当はA-10Xも入手したかったのですが、実物を殆ど見ることがなかったんですよね…。

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