著者の張栩棋聖・王座・NEC杯は往年の大スター、趙治勲に続く二人目の8大タイトルグランドスラム達成者で、現在の最強プレイヤーといった時には多くの打ち手が張栩を思い浮かべることだと思います。
そして著者の張栩自身、本書のテーマ・コウを最も得意とするプレイヤーの一人でもあります。
コウとは漢字で劫と書きますが、これは仏教用語で43億年を指し、非常に長い時間を意味しています。
囲碁の一つのルールとして、「四方を囲まれた石は取られる」というものが有ります。
しかし下記のようなケースであると、
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┼┼┼●☆❶○┼┼┼
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と打つことで黒は☆の位置にある白の一子を取ることが出来ますが、次の相手の手番で白が
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┼┼┼●②❶○┼┼┼
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②と打つことが可能であったとすると、初めに黒が打った❶の一子は取り返されてしまいます。
そして更に取られた❶の位置に再び黒が石を置くと上の図に戻ります。
「劫」という命名の由来はココですね。
このような場面では将棋で言う千日手のような状態を避けるために
「上のような同一反復場面が現れた場合には、他の着点を一度打ってからではないと石を取り返してはならない」
というルールが定められています。
つまり、黒に❶と打たれた次の手で白は②と打つことが出来ず、②とは異なる着点に打たなければならない、ということです。
逆に言えば、次の次の着手では②の位置に石を置くことが許されていますので、この一子よりより価値の高い着点を打ってから戻ってくる、という形でコウを争うことになります。
囲碁は元々19路で行われるために選択肢が大変多いのですが、このコウというルールのせいで無限と感じられるほどに選択肢の多いゲームになっています。
更に、コウそれ自体にもさまざまなバリエーションがあり、それぞれでコウの価値などが全く変わってきます。
cf. 本コウ、ヨセコウ、両コウ、万年コウ、多コウ、etc.
ヒカルの碁の中にもコウに関するフレーズは数回出現しています。
ジャンプコミックス14巻では塔矢行洋は(負けを読み切っていたので)半コウを争わずに投了し、22巻ではヒカルは何とか敗勢を巻き返すために二手ヨセコウを仕掛けています。
数年前まで子供囲碁教室で講師をやっていたのですが、小学生にコウのルール・戦略を説明するのが一番大変でした…
勝負の根幹にかかわる部分なので、教えないわけにいかないのがまた大変です。
…と、ここまでコウに関する初心者向けの説明で、本書は明らかに高段向けの内容になっています。
出題図によってはもう自分だけの思考では正解に及び得ない完全なる鑑賞用譜に。
コウ含みの戦いを恐れていては上に登っていけないですから…なんとか私もコウの苦手意識を克服して戦上手になりたいものです。
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購入金額
1,575円
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購入日
2011年08月12日
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購入場所
operaさん
2011/12/29
3コウ何とかって言いましたよね確か。。
コウ立てが別のコウを埋める事になるからでしたよね。
将棋だと千日手と言いますが。(笑)
トム様さん
2011/12/29
そうですね、コウ立てになるかならないかにかなり頭を悩ませます。
何度コウ立てを無視されてコウに負けたことか…
アマ同士の対局だと無コウ(受ける必要の無いコウ)に受けたり、受けないと大変なことになるコウ立てを手抜いたりと日常茶飯事です。
3コウ、4コウは無勝負ですね。
自分は未だ出会ったことがありません。