所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。最近のダウンロード販売全盛の時代では、意味を喪いつつありますが、「アルバム」というのは音楽家にとって一つの作品でした。曲順、装丁、クロースフェードなどの効果...曲単体ではなく全体通して聴いてもらえるよう工夫を凝らしたものでした。そんな中、アルバム全体を貫くコンセプトを明示されるアルバムがいくつかあります。アーティストが何かに強くインスパイアされ、制作したアルバム。イメージアルバムのように依頼ではなく。そんなアーティストの世界観が見えるアルバムをご紹介します。
高中正義。
以前触れた通り、
フュージョンブーム前夜のギタリスト。でもインスト曲中心でも、ジャズを基調に置くのでなく、ロックとポップスがベース。比較的明快で、夏(常夏の島)を感じさせる曲が多い。「BLUE LAGOON」が代表曲の、夏!ギタリストだ。
そんな彼が、絵本にインスパイアされて制作した作品。その絵本とは“The Rainbow Goblins(虹伝説)”。イタリア人画家Ul de Rico(ウル・デ・リコ)が描いた絵本“The Rainbow Goblins”は、虹の橋が地面に接するところで、色を捕まえ食べてしまう小鬼(GOBLIN)の話。この小鬼が自然界から報復を受けて滅び、虹は蘇る。その後虹は決して地面に足を付けなくなったという話で、極彩色の華麗な画とスケールの大きな話。これにインスパイアされた高中が、2枚組のアナログレコードで出したコンセプトアルバムが“THE RAINBOW GOBLINS”。見開きいっぱいに元絵本の華麗な画が描かれたアルバムはすばらしい出来で、1981年の発売直後に購入していたが、アナログレコードの再生環境がなかったときに、CDでも聴きたくなり購入。
アルバムは英語のあらすじナレーションを挟みながらストーリーに沿って組曲風に綴られる。
「SEVEN GOBLINS」は、悪役たる7匹の小鬼達が登場するシーンで、「ゴブリン、ゴブリン...」という(たぶん)小林泉美による声(ヴォイス)が、16分音符で繰り返される導入。徐々にテンポアップとピッチアップがされるが、サンプラーとかがない時代であり、テープエコー??1小節目の4拍目のスネアが後ろにズレ、2小節目の4拍目にギターのカッティングが入る、ファンキィでトリッキーな曲。さつまこうじのソプラノサックスが、高中のきっちりした16分音符でスケールを上下するギターと絡み合い、スリリングだ。
「THE MOON ROSE」は、高中お得意のヴァイオリン奏法での幻想的な導入に続いて、コンプレッサーとエコーの効いた音で、どこかスパニッシュな?異国情緒溢れるメロディが流れる。ストリングスとエレピの音が軽やかで、月夜のダンスという感じ?
「THUNDER STORM」は、雷のようなはじけるドラムと、喰うベースで、名の通り16ビートの切れが良い。当時のコンサートでは、この曲で高中含む各ミュージシャンが、小鬼のお面(しかもでかい!!)を被りながらプレイしてたwのが印象的。
「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」は、「黒船」
にも通じる雄大な曲で、ヴァイオリン奏法で荘厳に始まり、ディレイの効いたボトルネック奏法で幻想的に展開。4分音符頭打ちのピアノがドラマチックだ。最後はストリングスがドラマチックに入り、ドラムのフィルもタム回しとシンバル多用の大盛り上がり。ラストにふさわしい大曲で、エンディングの、スケールを上下する高中お得意のフレーズもよく錬れている。
自分にとってはこういった作品(画とコラボした楽曲)もあるのか、と開眼させられた作品。今聴いてもすばらしいクオリティ。ただCDは画がほとんどないので↓そもそも画がCDサイズなので鑑賞にはイマイチだし。
絵本付きで売り出されないかなぁ。それとも紙ジャケで出た限定盤はもう少し絵が豊富なのかしら?
【収録曲】
1. PROLOGUE
2. ONCE UPON A SONG
3. SEVEN GOBLINS
4. THE SUNSET VALLEY
5. THE MOON ROSE
6. SOON
7. MAGICAL NIGHT LIGHT
8. RAINBOW PARADISE
9. THUNDER STORM
10. RISING ARCH
11. JUST CHUCKLE
12. RAINBOW WAS REBORN
13. PLUMED BIRD
14. YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE
「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」
ぜひ絵本を眺めながら「通しで」聴いて欲しい...
非常に物語性の高いアルバム。
目の前に情景が広がるようだ。
-
購入金額
3,600円
-
購入日
1986年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。