Wacom Cintiq 24HD DTK-2400/K0 は主にデジタルクリエイティブワークを主業務とするプロフェッショナルをメインのターゲットとする液晶ペンタブレットだ。
つい先日のCESで後継機であるCintiq 27QHDが発表され、フラッグシップの座からは一歩引いた機種である。
ペンタブレットとしての機能は同社のIntuos5(現Intuos Pro)と同等の機能を有し、2048段階の筆圧検知、±60段階の傾き検知、最小0.005mmの読み取り精度を持つ。
派生品として、デジタイザペンでの入力以外に指先での入力にも対応したCintiq 24HD Touchも存在する。
液晶を持たないペンタブレットと本機の様な液晶ペンタブレットの差は言うまでも無く、デジタイザペンで触れた画面に直接描いている様な感覚を有する点だ。
アナログの紙とペンを用いた筆記やイラストレーションであればこれは当たり前の事であるが、これをデジタルに置き換えようとした場合には様々な制約がつきまとう。
そこで入力検知部分に直接液晶画面を割り当てる事で直接的にアナログでの筆記行為をデジタルに置き換えたものが本製品の最大の特徴であると言える。
より直接的に、直感的に表現する事に力点を置いたデバイスであると言えるだろう。
ほぼ全ての日本人は、ありがたい事に紙とペンで筆記を行う術を子供の頃に習得する事が出来る。
よって液晶ペンタブレットによる入力行為は極めて自然に受け入れられるものとなる…ハズである。
ここからは、あくまでも筆者本人が感じた主観を元に書き記させて頂くため、全ての人にとって同様の感覚とはならない可能性がある事を明記させて頂く。
アナログな行為とは、個々人の感覚による差異が大きいものだからだ。
このレビューを読まれる方々におかれてもそれは例外ではない、その点をご理解頂ければ幸いである。
さて、ここで話は筆者がはじめてWacom製ペンタブレットに触れた時期に遡る。
その当時、筆圧検知段階は256段階だったと記憶しているが、タブレットに触れているデジタイザペンを見ずに画面を見ながら作業せねばならなかった事に非常に戸惑った記憶がある。
ある意味当然の事であるが、ペンタブレットに行っている筆記行為が人間の目に触れる最終出力はモニタなのだ。 書いている場所と書かれている(出力される)場所に物理的な距離が生じるのである。
この感覚の修正、いや適応といった方が良いだろうか、ともかくその物理的な距離を脳内で補正する作業に半月ほどがかかった。
筆者は所謂グラフィッカーを生業としており、それまではマウスとキーボードで彩色(用意された原画に対して色を置いてゆく作業)をしていた訳だが、これがペンタブレットに置き換わる事での作業効率の改善は目を見張るものがあった。
それから時は流れ現在に至る訳だが、時代の移り変わりに伴ってペンタブレットを使った作業にもよりアーティスティックな表現が求められるようになった。
一定の筆圧で綺麗に描画するよりも、筆圧を利用したタッチ(微細なムラ)が要求される段階に差しかかる。
正にこういった作業におけるペンタブレットの親和性は抜群である。
そこに、液晶ペンタブレットを導入し、更なる表現力の向上を求めたわけだが…
確かに脳内での場所変換作業がなくなり、ダイレクトに思考が伝わるようになったが…
あろうことか、自身の利き手が邪魔に感じるのである。
紙に絵を描く時、思う様に描けずに紙を回転させて描きやすい線を引くというのはごくごく基本的な事なのであるが、この紙を回転させるという行為には自身の手が邪魔にならない様に描きやすくするという意味も含まれているのだ。
幸いな事に現在広く使用されるペイントツールには概ねカンバスの回転を行う機能が実装されているので描きにくい角度に手首を曲げたりすることなく気持ちよく描く事は可能だ。
だが、デジタイザペンを持つ手の下に何らかの確認したい情報があった場合、手をどかしてしまう事は出来ない。
頭の中で、実際に描かれる部分との物理的距離を補正する必要があるペンタブレットには、描かれる部分の周囲を邪魔されることなく見通す事が出来るという副産物的なメリットがあったのだ。
長らくペンタブレットを用いて作業を行ってきたが、液晶ペンタブレットを使ってみて初めて感じる事が出来た感覚である。
この気持ちの良さを、アナログを直接的にデジタルな行為に置き換えた液晶ペンタブレットに求める事は出来ない。
結果的に筆者自身は用途によって液晶ペンタブレットとペンタブレットの両者を使い分ける事で感覚の部分をカバーしている。
先にも書いたが、これはあくまでも筆者が個人的に感じている感覚である。 この点に目をつぶっても尚、液晶ペンタブレットによるダイレクトな書き心地が勝るという方もおられるだろう。
だが、少なくとも液晶ペンタブレットに無い利点がペンタブレットにもあるという事はお伝えしておきたい。
お世辞にも手の出しやすい価格とは言えない液晶ペンタブレットだけに、導入を検討される方には十分な検討をした上で判断をして頂きたいと思う。
デメリットがある事を理解した上でご自身の制作スタイルに合致すれば、多少の慣れこそ必要であれ表現の幅が広がるであろう事は想像に難くない。
使い込んだ先には更に自身の表現力を向上させてくれるまたとないパートナーとなるだろう。
極めて高いレベルにクリエイティブワークを支えてくれるが…
見た目と描かれる所が一致するのは、まさに紙とペンをデジタルに置き換えたもの。
所謂板タブレットに慣れ親しんだ者の視点では、自身の利き手が邪魔に感じてしまう。
お世辞にも手が出しやすい価格設定とは言えない
競合する製品がほぼ皆無であるが故に、選択肢が無く価格設定については苦言を呈したい。
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購入金額
0円
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購入日
2014年12月09日
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購入場所
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