ユーミンこと松任谷由実。荒井由実の名でデビューし、アレンジャー・キーボーディストの松任谷正隆と結婚、改姓し現在も活動を続ける芸歴?40年の才女。全曲の作詞作曲を行うシンガーソングライター。あくまで女性目線の歌詞と、洋楽の影響を受けたイカした(←死語)旋律はそれまでの「フォークソング」とは一線を画していた。
そんな彼女も長い活動期間の中で何度か作風が変遷している。デビュー当初は「あの日にかえりたい」など洋楽のテイストを効かせながらも「フォークソング」の範疇にあったが、1980年代になり映画“ねらわれた学園”主題歌「守ってあげたい」のあたりから当時ニューミュージックの分派として一大ムーブメントを引き起こしたシティポップスの女王として君臨する。その後本作から数作ミリオンセラーを連発し、商業的なピークを迎えるが、1990年代末以降は少し(売り上げ的にも)落ち着き、また自分の世界を構築する作業に入っている。
本盤「Delight Slight Light KISS」は彼女の商業的ピークのはじまりとなったアルバムだった(8連続ミリオンセラーアルバムの1作目)。さすがに高品質な曲も多い。また当時音楽制作現場では隆盛を極めていたSynclavierを多用し、特にドラムスは2曲を除いてすべてSynclavierを用いて録音された。Synclavierの当時としては群を抜く高品位なサンプリング機能と、一体化したシーケンサー機能を駆使し、あまり「リズムマシン」くささを感じないパフォーマンスとなっている。
「リフレインが叫んでる」。なんといってもこのアルバムはこの曲につきる。意外なことにシングルカットはされていないが、1980年代後半のユーミンの代表曲。Synclavierの硬いノリ、ヘヴィなディストーションギターのカッティングに乗せて彼女が歌う♪どうして/どうして僕たちは/出逢ってしまったんだろう/こわれるほど抱きしめた♪リバースシンバルの左右に振り分けた効果音を伴うブレイクがドラマチックだ。
「ふってあげる」。Jhon Robinsonの硬いドラミングが他の曲のSynclavier打ち込みのドラム音と違和感がない曲。Larry WilliamsやJerry Hey、Gray Grantらのホーンセクションがオブリを入れる小粋な曲だが、歌詞は終わりそうな恋に♪私が自由を望んだふうに/ふってあげる♪と最後のつよがり/やさしさをみせる女性のことを歌った曲。
「誕生日おめでとう」では♪月日が灯した/夢を吹き消して/静かに二人を/遠去けても/いつしかそれぞれのケーキにナイフいれる/誕生日おめでとう♪とかつての恋人と自分に等しく流れる時間に想いをはせる彼女の歌声が、ギターのアルペジオ風(クレジットからするとサンプラーによるもの)のバックに載せて流れる小品。かつての荒井由実時代の薫りがする。
このアルバムを奔りとして彼女はビッグセールス街道をひた走るのだが、その後の数アルバムはキャッチーな楽曲と時代の最先端の音響処理で高品位ではあるけれども、今まで見られた彼女の情景を切り取ったようなスルドイ歌詞と洋楽くさい洒落た旋律を持つメロディはそのパワーを落としていく。そのバランスがかろうじて成り立っている、そういう意味でのターニングポイントとなっているアルバム。
そうそう、cybercatが持っているのは1988年発売の初盤だけど、このアルバムジャケットは見る角度によって絵柄が動き、奥行きを感じる特殊印刷のもの。ま、コレクターですから...
【収録曲】
1. リフレインが叫んでる
2. Nobody Else
3. ふってあげる
4. 誕生日おめでとう
5. Home Townへようこそ
6. とこしえにGood Night(夜明けの色)
7. 恋はNo-return
8. 幸せはあなたへの復讐
9. 吹雪の中を
10. September Blue Moon
松任谷由実HP(試聴ファイルあり)
-
購入金額
3,200円
-
購入日
1988年頃
-
購入場所
退会したユーザーさん
2011/09/17
cybercatさん
2011/09/17
おぉぉぉKISS!
学園祭ではCATMAN顔に書いて(書かれて?)汗だくでドラム叩いたこともあったなぁ...
そいえばkusabuturiさんの新プロフ画像も額にペインティングしてますねw
退会したユーザーさん
2011/09/17
仰る通り、色んな意味でユーミンの転換点になったアルバムですね。
日本のレコード会社があんなにお金をかけてプロモーション展開した初めてのCDなんだそうです。
売れ線ポップの要素を入れても手堅いサウンドで纏めてくるのは賢いなぁ、と当時思ったものです!
ユーミンのオリジナルアルバムをリマスタして売って欲しいですよねぇ。
cybercatさん
2011/09/17
>日本のレコード会社があんなにお金をかけてプロモーション展開した初めてのCDなんだそうです。
なるほど。
このあたりからユーミンの初回版は特装盤の限定もの、ツアーは大パノラマのゴージャスなセットになってきたと思います。
そういう意味ではマスを動かしたアルバムと言えるでしょうね!
退会したユーザーさん
2011/09/17
私もこの CD 持っています。(汗
cybercatさん
2011/09/17
ネタ振りですか...(^^ゞ