機械生命体ボーグと、宇宙艦隊40隻以上の艦艇との激突は、宇宙艦隊側全艦の撃沈という一方的な敗退に終わった。
それは後に「ウォルフ359の戦闘」、または『ウォルフ359の虐殺』という名で呼ばれる事になる。
USS-サラトガ副長、ベンジャミン・シスコはこの戦いで乗艦と、妻を失った。
宇宙暦46388.2 シスコはアルファ宇宙域辺境の星、ベイジョーへと向かっていた。
ベイジョーの軌道上に位置する宇宙ステーション、DS9の司令官に任命されたのだ。
シスコは妻の死後、息子ジェイクの安全を優先して深宇宙探査任務を避け続け、太陽系内の後方勤務を希望し続けてきたが、その希望は叶わなかった。
ボーグとの戦闘は、彼が後方にいた三年間の間にも何度か発生しており、多くの優秀な艦隊士官を失わせていた。
そんな中、中佐の階級を持ちながら三年も足踏みしている士官を後方で遊ばせておくほど、艦隊には余裕も容赦も無かったのである。
妻を失ったことへの悲しみ、前線任務における死の恐怖と息子の安全。
ただでさえ、辺境任務という「左遷紛い」の場所へ飛ばされた上、任務自体も気にくわない。
ベイジョー自体も、カーデシアの軍事占領から独立したばかりで、政治的にも混乱しており、国土の荒廃は目を覆うばかり。娯楽もなく、治安も悪く、まともな教育施設もない。
シスコは、DS9司令官への任命を不服とし、艦隊を去るべきか真剣に考えるほどになっていた。
しかし、シスコは不満を抱えたまま、ベイジョーの宗教指導者カイ・オパカとの面会する。
ベイジョーは既に内戦寸前の状態にあり、オパカこそが内戦を食い止めるキーマンであると聞いたからだ。そのオパカ自身からの面会要請ともなれば、断るべき理由も無かった。
それに、たとえ任務が不満でも、交代要員が来るまでは自分がDS9の司令官であり、その任務を全うする義務がある、と。
艦隊を辞する決意をしていながら、彼は骨の髄まで艦隊士官であった。
オパカは、そんなシスコの耳を掴んで言った。
「皮肉ねぇ・・・ここでの任務を望んでいない人が『選ばれし者』とは」
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米国の人気SFシリーズ『スタートレック』のスピンオフにあたる、シリーズ第三作。
辺境の惑星「ベイジョー」へと派遣されたシスコ大佐は、そのベイジョーの宗教指導者より「天空の神殿を見つける、選ばれし者」が自分であると言われ、「天空の神殿」の捜索を依頼されます。
なんだか、SFというより出来の悪いRPGのような始まりかたですが、この天空の神殿探しから見つかった「あるモノ」のせいで、このDS9はアルファ宇宙域でも最重要の基地となってしまい、彼自身もここでの任務に生き甲斐を見い出します。
不安定な情勢に揺れ続けるベイジョー、DS9再占領を意図して虎視眈々と隙を伺うカーデシア、辺境宇宙域から始まる未知への探索と、民間人も訪れる宇宙基地という特殊な環境。
今までの「宇宙探検に出かけていく」お話から、事件やトラブルが「やってくる」という、スタートレックとしては異色のシチュエーションで展開していくストーリーは、毎回実に丁寧に作られており、第一シーズンでも結構な数の「当たり」なお話があり、導入編としては非常に高いクオリティを保っていると言って良いでしょう。
個人的に「要・注目」なのは、第5話「恐怖のウイルス」と第19話「謎のカーデシア星人」の二つ。
第5話は、DS9の名物凸凹コンビ、クワークとオドーの織り成すコメディタッチの活躍が見物。
第19話のほうは、純粋に内容が凄いです。
予算調整のために作られる低予算の「ボトルショー」なのですが、よくもまあシーズン1からこんなレベルの高い内容を作ってくるもんだと感心しました。とにかく、この話はオチが非常に印象的です。
そういうわけで、初っ端から非常にレベルが高い本作品。
それどころか、最終シーズンまでこの脚本のレベルの高さが上がりこそすれ下がらず維持され続けたのは、実に凄いことだと思います。
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購入金額
16,590円
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購入日
不明
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購入場所
とっぷりんさん
2011/07/27
Vossさん
2011/07/27
惜しくも授賞は逃したものの、1996年度のヒューゴー賞にもノミネートされました。
(受賞作は、ライバル番組の「バビロン5」で、こちらは次の年も授賞。バビロン5は史上初の二年連続受賞作品となった)
・・・・シーズン4BOXで紹介しようと思ってたのだけど、先に言われたわw