所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。感性というのは育てるもの?磨くもの?いずれにしても、「元」が大きくないと、その後も大きく花開くことはないのでは?現れたときの、今まで何処にもなかったその音楽を聴いたときに、そう感じた「違う」感性の燦めきを見せた作品をご紹介します。
宇多田ヒカル。デビューシングル“Automatic”のMVを初めて見たとき、ホントに日本人か?と疑った。それほど曲のセンスが、日本語の使い方が、MVの撮り方が違った。デビュー曲にしてシングル2位を獲得し、その後のシングルも全て1位を含む一桁前半。人気アイドルグループなどでは珍しいことではないが、彼女の主戦場はソウル系J-POPというもので、彼女が拓いたジャンル。どちらかと言えば「すごくキャッチー」とは言えない曲達をここまで売ったのは、彼女の作る曲の良さと、それまでなかった感性の歌詞、そしてその表現の仕方。英語圏で育った彼女はクリアな日本語に自然に英単語を混ぜ込んで歌った。
それが一番印象的だった曲が、4thシングルである本作“Addicted To You”。「Addicted(中毒、夢中)」というやや馴染みのない単語を使い、歌の中では♪君にaddictedかも♪と混ぜ込む。そして、その心情を♪今大人になりたくて/いきなりなれなくて♪と震える声で表現するヒカルが愛しかった。
このシングルには4トラックが入っているが、曲としては1曲、「Addicted To You」のみ。後半2曲がヴォーカルマイナスワントラック(いわゆるカラオケ)なので、結局2パターンのMIXが収められていることに。
そのなかでは「シングルA面扱い」となるのが「Addicted To You (UP-IN-HEAVEN MIX)」。ハイハットシンバルの音を模したような「チキチキ」というヒカルの声がサンプリングされ、A~Bメロでは左右にそれらが飛びつつ挟まれる。スクラッチ風の音も入り、かなりソリッド。Aメロは特に、バックで流れるシーケンスパターン以外はリズム楽器のみが前に出ている。それがサビに行くとストリングス風の音が加わり、歌詞と共に切なさが増す。♪~毎日会いたくて/この気持ちどうすればいいの/今大人になりたくて/いきなりなれなくて/oh baby (oh baby)/君にaddictedかも♪
「Addicted To You (UNDERWATER MIX)」は確かに「UNDERWATER」な感じの音造り。「UP-IN-HEAVEN MIX」に比べるとフワフワしていて、耳に飛び込んでくる刺激には乏しい。ベースラインがやや強調されているが、ハードな音造りではなく、ボワッと大きな音像で低音域を支配する。そしてシンバルのリバースサンプリングの様な音や、クラベスなどパーカッション系の音が奥に引っ込んでいて、リズムのソリッド感はない。一方柔らかなシンセ音でのシーケンスパターンなどが全体を装飾しているので耳障りは良い。ヒカルの声も少しお化粧がされていて、ザクっと突きつけられるメッセージ性は薄い。しかし、バランス的にはこちらの方が良い面もあって、ヒカルのヴォーカルを味わうのにはむしろこの「B面」の方が良い気がする。
どちらのMIXもそれぞれヒカルの魅力を上手く引き出していると感じる。内面を引きずり出すようなソリッドな「UP-IN-HEAVEN MIX」、訴えかける表現の上手さを前に出した「UNDERWATER MIX」。今のようにダウンロード販売が進んでおらず、シングルといえども1曲ごとの「切り売り」ではなかった時代。シングルの中に同じ曲のリミックスを二つ入れて、それでも飽きさせないその元曲のパワー。当時彼女は15歳!どれほど大きさの「感性の原石」だったんだろう!
このデザイン、シンプルで良い←白黒のヒカルの写真は構造的には「裏」にある
既にリリース後約20年を迎えようとしているとは思えない、まだギンギンに「尖った」感性の作品です。
【収録曲】
1. Addicted To You (UP-IN-HEAVEN MIX)
2. Addicted To You (UNDERWATER MIX)
3. Addicted To You (UP-IN-HEAVEN MIX)[Instrumental]
4. Addicted To You (UNDERWATER MIX)[Instrumental]
「Addicted To You (UP-IN-HEAVEN MIX)」
意外なことにシングルで2番目に売れた曲
衝撃的だったデビューシングル“Automatic”は別格として、誰もが知る名曲“First Love”や印象的なMVで記憶に残る“traveling”、ハードでノリの良い“Movin’ on without you”よりもはるかに売れている。日本語を記号のように使う歌い方が新しかった。
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購入金額
1,100円
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購入日
1999年頃
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購入場所
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