アウグストゥスは生前、帝位の継承を血統に求めている。
これは、彼が自分の血統によって「子孫への優遇」を優先したとして、その業績を評価する人からも評判が悪い。
だが、あの時代に「継承の正当性」を求めるとなれば、それは即ち「偉大なる神君の子」であるという「血統という看板」こそが、一番判りやすかった。
それが故に、二代皇帝ティベリウスは「神君の血を引かぬ、妻の連れ子」という立場からして、ハナからマイナス評価なのも、まあ仕方ないことかもしれない。
それにしても、本巻にて取り上げられた四名の皇帝は、歴史的評価がやたらと悪い皇帝たちである。
殺人狂の暴君であったカリグラ(カリギュラ)はともかくとして、養子という立場と、晩年の引き籠り(笑)以外に失政も欠点も無かったティベリウスなどは、とにかく「不人気」であったという一点で、やたらと低い評価を下され続けた。
19世紀以降の研究や発掘調査結果から、実はローマが得た皇帝の中でも相当に名君の類であったことが判ってきたから、近年ようやっと再評価されたが、それでもなお「不人気」であったという事実は変わっていない。
功績というなら、四代皇帝クラウディウスも中々のものだし、キリスト教徒からは悪魔呼ばわりされ続けている五代皇帝ネロとて、実際にはさほど悪い皇帝だった訳では無かったようだ。
なのに、なぜ未だにこの四名は「悪名高き皇帝たち」として知られているのか。
再評価後は、「ローマが得た皇帝の中でも、トップクラスに有能」と言われるまでの功績を残したティベリウスやクラウディウスは、なぜ当時から「不人気」であったのか。
本巻では、その「見える実績しか評価しようとしない民衆心理」と、後のキリスト教徒による「ローマ皇帝への捏造寸前な歴史的評価」を、作者は近年の資料を基にしつつ、「何故、このような評価が残ってしまったのか」という側面から解き明かしていく。
それにしても、特に二代皇帝ティベリウスは何というか、先代が偉大過ぎたことで「評価されない有能な二代目」そのまんまですね・・・・そら晩年、スネて引き籠るのもワカランではない。
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購入金額
3,570円
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購入日
2011年頃
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購入場所
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