先日、日頃お世話になってる方の家へパソコンの修理へ(3度目)
2度目くらいの時に
『親指シフトキーボード』の話になり盛り上がったのですが今回伺うとその親指シフトKBがあるではありませんか!
前回、親指シフトKBの話をした後、懐かしくなりわざわざ物置から探したそうです。
そのKBをご厚意+PCの修理代の代わりとしていただいたので、書いていくことにしました。
どうぞ宜しくお願いします。
注意事項
今回、普通の『日本語キーボード』としてのレビューです。
””いやいや、親指シフトKBのレビューなのに何故ッ!?””
俺が親指シフトKBの使い方が分からないからです。
そういう訳でOASYS v10(*Win10対応)やJapanist2003(日本語入力ソフト)といった親指シフトKBを活かすためのソフトは一切使っていません
ご了承下さい。
””KeySwapというエミュレーションソフトを使用””
とにかくBackspaceキーが右上になくて使いにくさ全開でしたので『KeySwap』というフリーソフトを導入し、いつもの場所にBackspaceキーを作りました。他にも数カ所かキーの入れ替えを行い、普段のKBと同じ配列にしました。
追記事項など
2016年9月18日:更なる項目の追加、誤字脱字表現の修正、解体画像の項目と画像の大幅追加
今時122キー!多すぎる・・・
先ずは製品スペックから紹介します
品名:親指シフトキーボード
メーカー:富士通株式会社(*製造時期は富士通高見澤コンポーネント)
製造国/時期:日本/1997年9月
型名:FMV-KB611(N860-2367-T052 CA50100-0199)
キー配列:親指シフト(日本語ワープロソフトOASYS向け)
本体サイズ:サイズ(幅×奥行×高さ)=487.7mm ×192.8mm ×35.4mm
キー数:122
キースイッチ:板バネスイッチ(メカニカル方式)
キー荷重:約35g
キーストローク:約3.8mm
キートップ:エンジニアリングプラスチック+昇華印刷(一部ABS樹脂使用キーあり?後述)
I/F:PS/2(MiniDIN6ピン)
接続ケーブル長:約120センチ(カールコード)
本体/ケーブル色:ライトグレー
チルト:5度
必須ソフト:OAKまたはJapanist
(OAKは単独の製品の他、Windows版のOASYSにも同梱。
ただし、『Japanist V1.0』は単独の製品のみ。)
発売当時の参考価格(新品):12,000円~13,000円
なんと今時122キー!!多すぎて収集がつきません。
ただ、日本語108キーKBとして使うのであれば、14個までならチャタってもOKだと思えます。母音キーやWASDキーがチャたってもまだ予備で6個もキーが残る計算な訳です。
『同時押しキー数は不明』ですが4キーまでは同時押し出来ました。
またここで注意として
shopU曰く「USB変換アダプタを使い、USB接続をした場合、正常な動作をしない」(→リンク付き)
このような記載がありましたのでUSBに変換して使うことが出来ないかもしれません。
*なお、富士通の製品HPには
『必須ソフト:OAKまたはJapanist』
とありますが、普通の日本語JISキーボードとして使う場合は特に必要ありません。
現在Windows7 x64にATOK2016(Windows用)の組み合わせでこのKBを使っていますが何も問題なく動作しています。
外観①ー1 ~ 筐体部 ~
長くなるので先ずは筐体から見ていきましょう!
物置にずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと長い間仕舞われていたとのことで残念な色に変わってしまっていました。
本来の色はこのような感じです(shopUのHPより)
レトロブライトは既に別の方が行っているREVIEW画像があるのでそちらを参照下さい。
ついでなんで『筐体のサイズがどれだけ大きい+19年でどれだけ変色したのか』見て貰おうと思います
新品当時に近い色が、富士通のFKB8724(=FMV-KB321)です。
ものすごく変色してしまっています。 19年という時間の流れを感じさせてくれる、味のある色となっています。
FMV-KB611にカバーに隠れている富士通FKB8724(=FMV-KB321)も日本語109キーKBの中では割と大きいモデルに分類されるのですがそれがかなり小さく見えるほどに、このFMV-KB611はかなり大きいです。富士通子会社のPFU社が出している「Happy Hacking Keyboard」2台分以上の面積がありそうです。
当然ですがこのサイズなので
『Mini-ITXマザーボード(170mm X 170mm)がスッポリ収まります』
なので中身が逝ったらPCケースとして使う事も一応出来ます。但し要改造。
外観①ー2 ~ 筐体構造 ~
捌きます ~ FMV-KB611の開き ~
カバーを開けます。 メチャクチャ固いので薄い金属のヘラがあるとイイかも。
開けるとこうなっています。 Numlockキーランプは中央部上にあるという今だと若干珍しい位置にあります。 右上の場所は開いてるんですけど、基板代の節約ですかね?
キートップを外すといつもの白いスライダーが「コンニチワー」
キートップはこういう構造。 奥がFMV-KB611(→色の濃い方)です。FKB8724系とキートップの形状が全然違います。 当たり前ですが
互換性はありません
なので注意しましょう。
*FMV-KB611のキートップを無理矢理FKB8724にはめようとしましたが無理でした
では更に分解します。
錆びてるんだかで取れないところが5カ所ありました。 ただ、この5カ所なんですが・・・他と少しサイズが違います。なので富士通的には「ここは無闇に取り外すな!」という事なんでしょうか?
取り外した部品を板バネに置くとこんな感じとなります。軸の中心は中央部から少し左(0.4~0.6個分)にずれています。
そしてようやく底辺に到着です。 ご丁寧にフィルムが敷いてあります。
しかも、ケーブルには磁石付きです。なんかころがってんなぁ~と思ったものは磁石でした。 ただ極々微量の磁力しかありません。悪さするわけではないですし、そのままにして置いてあげて下さい。
KBを捌いて横から見るとこうなっています。
少なくとも富士通のお家芸である『カーブド構造』では無いですよね。プレート(=鉄板)が物理的にカーブしている訳では無いので。
*富士通KBに見られる『カーブド構造』とは?
外観② ~ キートップ部 ~
次にキートップ部を見ていきましょう
東プレREALFORCE、今回のFMV-KB611、ネタ枠のFKB8754(≒FKB8724)のESCキーを使って比較してみました。
画像は左から順番に
『東プレREALFORCE108P-S』
『富士通FMV-KB611』
『富士通FKB8754-T501(≒FKB8724-T501)』となります。
①ESCキーの材質
東プレREALFORCE108P-S:PBT(ポリブチレンテレフタノール)樹脂
富士通FMV-KB611:PBTないし、その他エンジニアリングプラスチック
富士通FKB8724:ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合)樹脂
PBT樹脂を使ってるKBのキートップは『非常に日焼けしにくい』事が特徴です。
これは素材が持つ”対紫外線特性”によるものです。
PBT樹脂について、とある会社の(製品)HPではこのように記載されています。
強靱、剛性が高く、耐熱老化性に優れる
PBTは、エンジニアプラスチックの中で最も新しい結晶性樹脂で、強靭且つ剛性が高く耐熱老化性(高温でも良好な機械特性を保持)に優れています。
また、電気特性も広い温度域に良好で吸水性も低く耐侯性・耐薬品性にもすぐれバランスが取れています。(*東レプラスチック精工株式会社HPより)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)高級感のあるエンジニアリングプラスチック
繊維素材として使用することが可能で、高い伸縮性などから高機能なスポーツウェアにも最適。高い耐塩素性やUV特性を持っていることから水着などでも使用される素材だ。
(*i-maker.newsより)
以上から、19年前に生産されたこのKBのキートップがここまで綺麗なのは「PBT樹脂(*エンジニアリングプラスチック)」を使っていることが大きいでしょう。余談ですが身近な所ですと”風呂場のシャワーヘッド”はPBT樹脂を使ってるそうですよ?
http://i-maker.jp/polyester-9134.html
②印字方式
では次に各KBのキートップに施されている印字方式を見てみます。
1、東プレREALFORCE108P-S:昇華印刷
相変わらず綺麗ですね。 拡大してみると指が触れる部分だけザラザラ加工がされています。・・・見えますか???
2、富士通FMV-KB611:昇華印刷 *時期によってはレーザー印刷
ザラザラは・・・見られません。ただ1997年9月製造という所を踏まえると
「昇華印刷」
で間違いないでしょう。次のFKB8724で紹介しますが、このFMV-KB611は文字の色が均一に出ています。
同時期に製造販売しており、かつ昇華印刷を採用したFMV-KB311(=FKB8520ファミリー)のキートップ画像と徹底的に比較しましたが字体・太さは一致したので間違いないと考えています。
3、富士通FKB8754-T501(≒FKB8724-T501):レーザー印刷
赤丸で囲った部分だけでないのですが「止め」「跳ね」の部分だけ色が濃くなっています。
打鍵による文字のすり切れではこのようにならないので、明らかにキートップへの印字の際のムラ?のようなものと推測できます。
このキーだけでなく、F1~F12キーのF部分にも同じようなムラが見られるのでレーザー印刷の際に出来た物だろう・・・と俺は思います。
キートップを真っ二つにして光学顕微鏡で観察すれば印刷方式が分かります。
また、その際に出た粉や破片を解析できる場所(材料系学科を持つ大学/専門の研究機関)に持ち込み解析して貰えば使用している材料も分かります。しかし、そこまでして欲しい方は居ませんよね?w
逆にそこまでやるとか『狂気のSATA(沙汰)』ですからね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このネタ、わかるかな。
Cherry軸?何寝ぼけてるんだ!時代は『板バネ』だろ!!
最初に一言
「この打鍵感に心を打ち抜かれました。」
すーっと入っていくあの打鍵感・・・素晴らしい
EXCELLENT!!!!!!!!!!!!!!!!
それ以外、言いようが無いですよ。
何を言うんですか?
『一言じゃダメなんですか!?』
早い話がレビューはこの一言で終わりです。
打鍵感
リニア系です。 Cherry赤軸/Cherry黒軸なんかに近いかもしれません。
でも、打鍵すると分かりますが
『メカニカルなのに結構どころの話じゃ収まらないレベルで軽い!』
です。REALFORCEの変荷重モデルやAll30gモデルのようにボケーッとしてると指の重みで
『ああああああああああああああああああ』
や
『」」」」」」」」」」」」」」」」」」』
のようになります。(Cherry/中華軸などの)ツクモやソフマップでよく見るメカニカルKBからこのFMV-KB611に乗り換えるととにかく軽くてビックリすると思います。
押し下げ圧が約35g(*FMV-KB613)とやたら軽いです。正規のメカニカルスイッチの中では最軽量チームに分類されると思います。
*なお、FMV-KB611とFMV-KB613は同じ板バネメカニカルスイッチを採用する兄弟機です。
日本メーカーのKB用キースイッチだとALPSメカニカル、東プレ静電容量スイッチ、ミネベア/富士通メンブレンなんかが国内の代表格です。
しかし、この富士通の板バネメカニカルスイッチも上の4つに引けをとっていません。かなり高いレベルでまとまったメカニカルキーだなと確信しています。
それの最たる物が打鍵時の音量の設定です。
親指キー(左右)、空白キー、実行キー、(テンキー部は)+キー、0キー、改行(Enter)キー
以上7つのキーは打鍵すると少し大きめの音が出るようなセッティングがされています。 これは『東プレREALFORCE(静音)』と考えは同じなんです。
アプローチがちがうだけ。
この板バネスイッチ、黄色で囲った部分のツメの出っ張りがキートップにぶつかる/ぶつからない、ぶつかる場所で音の大きさの差をつけてる・・・・・・・ような気がします。あとはキートップのサイズ/形状もありますけど。
こういう芸当はCherry軸やALPS軸(正規・偽物・簡易型)には出来ません。音に差をつけるにはキートップをハイプロ系にするとか、軸そのものを変えるしか方法がありません。
そこを含めて考えると、よく出来た構造だなと俺は常々感心してしまいます。高コスト体質だからこそ産んだ構造なのかもしれません。今でこそ『東プレのライバル(笑)』などと陰口を言われたりしますが、板バネメカニカルは残して欲しい。出来れば通常モデルで残して欲しい。
メカニカルKBにとって、打鍵音との戦いは永遠のテーマ。 その答えを1990年代に打ち込んでいたというのは俺にとって驚きです。
今流行している『RGB点灯可能なメカニカルKB』とするには厳しいな。
形的に厳しい感じです。
あと、銅板がズレるだけでチャタリングや認識できなくなる等が発生すると言う事なので、業務用(デスクワーク用)KBとしての利用にとどまるかな?というのが俺の見解です。
普通に使う分には使いやすいので充分だと思います。
某Majest○uch2と違い安心安定のMade in Japanです。
来年9月で製造から満20年ですがチャタリングは認められませんので頑丈さはかなりのレベルだと思います。 今のKBとはカネのかかり方の違いをしみじみ感じさせられます。
板バネKBのキーの仕組み
簡単に纏めてみました。
先ず『板バネってなんだよ!』な方々に。
①キートップを打鍵すると、この白いスライダー(軸)がバネの先端を押します
②すると、ある一定量(2.0mm~2.2mmくらい)下げると黄色い丸で囲った部分にあるヘコみ部分が銅板に接地します
③それにより打鍵したキーの文字が入力される
このような順序となっています。
『面倒くさいことせずに丸い部分を白軸で押せばよくね?』
とか思った人、それは言ったらいけません!w 思ったとしても心の中に留めておきましょう。
開発されたのが高度経済成長~バブル期なので無駄にお金だけは溢れてた時代ですし、無駄にコストをかけた製品がたくさんあったんです。
”実行キー”が無駄に大きすぎてとにかく邪魔。
画像の通り『実行キーの大きさ=方向キー4種の幅が収まる』
この大きさのものがEnterキーの下にある訳です。とにかく邪魔極まりないです。打鍵感はいいだけに・・・なのでこのキーだけキースイッチを切除することも考えています。
とりあえず今はこのアイテムで(物理的に)押せないようにしてあります。ぐらぐら動いてしまいますが、キーロックアイテムとしては機能していますよ。もしかしたら、東プレ用キーロックのが使いやすいかもしれませんが、そこについてはアイテムを持っていないので未検証です。
まとめ
今までメカニカルスイッチの日本代表/ベストナイン/ゴールデングラブ賞と言えば『ALPSスイッチ』でしたが、実は陰に隠れていただけでこんな面白いスイッチがあるんだと凄くビックリかつ感動しています。
しかも作っていたのが『富士通』というのが・・・・。
今のメカニカルKBにない「一部キーにちょっと大きめの音を出させる」など工夫が見ることが出来たのもビックリ&感動です。
数が出ないせいで、FMV-KB611の後継モデルであるFMV-KB613(板バネメカニカル)も生産を終えるのでは?という話もあります。
しかし、このような名作メカニカルKBを廃番にしてしまうと言うのは非常に勿体ない&残念です。
親指シフトでない、普通のJIS108キーモデルでこの板バネメカニカルキーを使用した製品を””台数限定で””出してほしいと願うばかりです。
国内勢だと東プレのように国内外で「15,000円~30,000円」の中~高級KBをバンバン売りさばき、発表資料に『REALFORCEが好調(堅調)なことから~』という文言がありました。
高級KB市場は非常に熱気のある市場となりつつあります。
こういう熱い時期だからこそ海外や国内向けにこの板バネメカニカルKBで勝負して欲しいです。 『メカニカル? ウチが居るのを忘れるな!!!』というのを富士通並びに富士通コンポーネント社には見せて欲しいと願い、終わりにしたいと思います。
今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。
また、KBを譲っていただいた方にもこの場を借りてお礼申し上げます。
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購入金額
0円
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購入日
2016年09月15日
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購入場所
譲っていただいた品
hatahataさん
2016/09/17
親指シフトキーボードを登録しているのを見たのは私を除いて二人目です。
親指シフト入力している人に遭遇したことはありません。
zigsow登録者、あまた存在するというのに…
私のは普通のじゃなくケータイ電話用ですけど。もう使えませんが。
パソコンを使うのに普通に親指シフト入力しているのですが、純正のキーボードはいまだ、入手に至らず。まだ販売されているのですが、なんせ金額が…
しかし凄く細かいレビューですね。キーボードへの拘りが凄いです。
Takahiroさん
2016/09/18
>>親指シフト入力している人に遭遇したことはありません。
もうひとかた居ますよ~レトロブライトまでで終わっていますが、FMV-KB611で。
純正KB高いですもんね。親指用のFMV-KB232ですが・・・新品で3万円台ですし。
同じ親指用のFKB8579-661EV・FKB7628(ThumbTouch)らへんはそこまで高くなかったかと。ただFKB8579は生産終わって市場在庫のみなんでお早めに~とのアナウンスありますね。
KBレビューにな関してはもっと凄い人が居るんでまだまだ・・・
hatahataさん
2016/09/18
日本語をローマ字で入力するなんて、根本的に疑問なんですけどね。言っても解ってもらえません。知らないのが普通ですし。
いやいや、知らない人には専門的なことよりも解りやすい方がありがたいです。