「狂気」。言わずと知れたPink Floydの超定番。Pink Floydも息の長いバンドのため、様々なキーとなるメンツが関わり、抜け、音楽性も変遷していくのだが、この「狂気」のあたりが最もバンドとしては安定していた。オリジナルメンバーのベースRoger Waters、キーボードのRichard Wright、ドラムスのNick Masonに、ギタリストが初期の中心人物Syd BarrettからDavid Gilmourに変わった4人構成の時代。 この4人構成はこのアルバムを中心に前後5年ずつ、約10年続くが、このアルバムで腰が据わったという感じだ。
Pink Floydというとプログレバンドに分類されていることが多いが、それはこのアルバム以降定番となった「コンセプトアルバム」という作品の作り方にあるのかもしれない。全体通して詞から、曲から、構成から、音から強いメッセージが伝わってくる。曲そのものは、もちろんストレートなロックではないが思いの外キャッチーな面もある。
それを一番表しているのがシングルカットもされた「Money」。サンプリングマシンもデジタル編集技術もない時代に生み出されたのが信じられないようなイントロのレジの鐘や小銭のジャラジャラ音、レシートを引きちぎる音が組み合わされ、リズムとなっていく様(Amazonの試聴ファイルでも1コーラス目の最後の部分にその片鱗が見られる)。当時のアナログテープをダビングし、切り貼りし構築したもの。この導入と特徴的なベースラインが単なるロックの範疇をはみ出しているが中間部のギターソロのあたりは実は典型的なブルース展開であり、「いわゆるプログレ」とは一線を画す。
ラストの「Eclipse(この邦題の「狂気日食」もよく付けたものだと思いますが)」などは、The BeatlesのSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandに通じる薫りもあり、そういう意味でもプログレではないんだろうなぁと。
ただこのアルバム全体が非常に「狂気」の感じを受けるのは暗い詞、一本調子に明るい曲の欠如、構築された(パラノイアともいえる)音世界などもあるが、自分にとっては「The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)」の曲のイメージが強い。Clare Torryのシャウト(これは断じて「スキャット」ではない!)が狂気をはらんでいるような泣き声のような突き刺さるものだったから。
そんな名盤、とうにレンタルレコード屋で借りて聴いてはいたのだが、やっぱりこういう名盤はきっかけがないと買いづらいもので....
そこで今回ご紹介のエディションに遭遇。20周年記念エディション(リマスタリング)。さすがに録音時の1973年は機材や技術の方が追いつかず、逆に前述のような切り貼りのサウンドコラージュなどの手法が生まれるきっかけともなったが、音質そのものはイマイチ。それを20年後技術で磨きをかけたエディション。
直接比較したわけではないが、記憶の中の音と比較すると音が「近い」。
特に3曲目「Time」、時計と鐘の音が耳元で鳴る!エフェクト処理されたドラムもどれくらいの部屋を想定した処理をしているのかが明確で音像が「見える」。音の奥行きと広がりで、一気に曲の世界に引きずり込まれる。
また例の「Money」もレジスターの音、ボーカルと左のギター、右のキーボードの分離が良い。Dick Parryのサックスソロはダーティーな音が曲にマッチ。
装丁の方もBOX仕様で中には「XX」の刻印のあるイメージ画が数点。ボックスも例のプリズムのジャケットを縮小印刷しピラミッドをバックにすかし印刷。すごい凝った仕様です。
やっぱコレクターですね。
【収録曲】
1. Speak To Me~Breath(生命の息吹き)
2. On The Run(走り回って)
3. Time
4. The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)
5. Money
6. Us And Them
7. Any Colour You Like(望みの色を)
8. Brain Damage(狂人は心に)
9. Eclipse(狂気日食)
Pink Floyd Home Page
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購入金額
3,300円
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購入日
1995年頃
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購入場所
退会したユーザーさん
2011/10/14
このアルバム大好きどす!
幼い頃家にこのレコードがあって、フシギなジャケットと子供には全くワカラナイ音に「UFOみたいでコワイ。。。」という印象を持ってました。
2003年に出たSACDリマスタ版も買って、今年出たリマスタ版も買おうかと思っております
(^0^/
cybercatさん
2011/10/15
>2003年に出たSACDリマスタ版も買って、今年出たリマスタ版も買おうかと思っております
名盤のうちのいくつかは、当時録音していながら当時の技術・機材では埋もれてしまったものというのがある場合があり、リマスタリング盤や高音質盤を聴くと新たな発見がありますね!
ワタイツさん
2011/10/16
しかもエディション!
カッコいい。
私も確か・・・。
持ってるといってもエディションじゃないですけど・・・(^o^;
技術が進歩してエフェクト処理も昔と違ってかなり違いますよね
しかもエディションとなると音の違いは歴然かも知れませんね。
XXの刻印がエディションを感じさせますよね
cybercatさん
2011/10/16
>私も確か・・・。
やっぱり...(^^ゞ
>技術が進歩してエフェクト処理も昔と違ってかなり違いますよね
>しかもエディションとなると音の違いは歴然かも知れませんね。
ものによってはリマスタリングしてもあまり変わらないばかりか、マスターテープの摩耗でむしろダメになるのもありますが、これは向上してます。
ワタイツさん
2011/10/16
開けるまでどんなのが入ってるか
>ものによってはリマスタリングしてもあまり変わらないばかりか、マスターテープの摩耗でむしろダメになるのもありますが、これは向上してます
人気があるアーチスト(古い年代)ほどマスーテープが使い込まれてますよね
cybercatさん
2011/10/16
>開けるまでどんなのが入ってるか
それは立派なzigsowerですね!!