村松健、ピアニスト。ただデビューの頃から彼の演奏に惹かれずっと追っかけているコアなファンはともかく、後から聞き出した新しいファンはそのディスコグラフィーを遡る(もしくは最初に触れたのが昔の作品なら時を下る)ととても戸惑うかもしれない。それほど彼の作風は二転三転している。当初「フュージョン」のくくりでデビューした1980年代、鍵盤楽器中心とは言え、シンセサイザーも用い、ドラムやベースも入ったトリオ以上の演奏が多かった。音場処理も積極的で比較的リバーブ深めの幻想的な演奏。これが90年代に入るとぐっと生のピアノの比率が高まり、ストイックになる。音もかなり生音系で素っ気ない。2000年代に入ると今度は現在居住している奄美大島というロケーションの影響か三線とのコラボもあり、いわゆるヒーリング音楽が主となる。
「春の野を行く」や「出逢いと別れ」といった代表曲のいくつかは各時代のアルバムで繰り返し演奏されているので、その時代その時代での彼の心境や解釈が感じられておもしろい。
で、今回は1989年の「フュージョン」カテゴリーからピアノ中心へと変遷する過渡期の時代のアルバム。非常に限られた楽器が生音に近く迫る。そういう意味では初期のリバーブガンガンの音作りではないんだけれど、まだオルガンなどピアノ以外の楽器もメロディを取っている。またこの頃から日本的な旋律が多くなり、「懐かしい」サウンドが多くなる。
「フローティング-睡蓮の開く朝-」。日本的な旋律でオーボエの宮本文昭がピアノと絡む。なつかしい薫りがするメロディ。
「遠い面影」。リズムマシンのように淡々続く阿久井喜一郎のドラムに西川公平のアルトフルートが絡む。村松はピアノとオルガン。日本的暗さが底辺を流れるどこかなつかしい、切ない旋律。遠い昔幼い頃暗い森に迷い込んだような感覚。
「あの角を曲がれば」。ほとんど音加工がされていないアルトサックス(今野菊治)が少しオフで鳴る。wlm オルガンのパーカッシブななつかしい郷愁のメロディ。子供のころを思い出す、胸が締め付けられるような唄。
感じるのは「幼い頃」「夕暮れ」「ひとりぼっち」「田舎の風景」。時代的、状況的にはトトロのイメージ、です。今は廃盤で入手困難なのが残念ですが....
【収録曲】
1. フローティング -睡蓮の開く朝-
2. フィールド・ソング
3. 雪どけ水
4. 虹が消えないうちに
5. 遠い面影
6. 素直になれたら
7. あの角を曲がれば
8. パープル・ストリーム
9. あかね色によりそって
10. 星が生まれる丘
11. 遠い面影 -昨日と同じ今日-
Ken Muramatsu Official Site
Sony Music 村松健 (本アルバムの試聴ファイルあり)
「星が生まれる丘」
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購入金額
3,200円
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購入日
1995年頃
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購入場所
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