所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。誰もが知ってるメジャー盤から外国での方が有名な知る人ぞ知るの名盤をご紹介していきます。
“η Σπαρτη(スパルタ)”。日本の誇るプログレバンドKENSOの中興の作品。KENSO-日本よりもむしろ外国で有名かもしれないこのバンドは、現役の歯科医師である清水義央を中心に、いまも活動を続けるセミプロバンド。高いテクニック、強い芸術性、どことなくなつかしい日本的な香りが漂うメロディーライン等で一部では大変評価が高いグループだ。
このアルバム、制作期間中にメンバーチェンジがあり、1stからのオリジナルメンバーであるドラムスの山本治彦が離脱したため、制作に数年を要したらしい(1曲目と2曲目は山本が叩いている)。でもこの危機に、その後15年以上にもわたってこのバンドを支えつづけた日本の誇るスーパードラマー村石雅行を得るのだから、物事はどう転ぶか判らない。
人によってはバンドメンバーが固定され、アルバム全体が濃密なストーリー性を持つ、このあとの“夢の丘”
こそKENSOの最高傑作と呼ぶが、山本の卒業作といえる2曲と、一音聴いただけでスゴイエネルギーを感じる東京芸大卒業直後の村石のイントロデューシングを兼ねたこのアルバムこそメジャーデビュー盤=KENSO(3rd)からの比較的新しいファンであった自分にとっては鮮烈だった。また曲としても現在でも繰り返し演奏される名曲がそろっている。
1曲目の「Good Days,Bad Days」は壮大な出だしで、山本カラーの集大成ともいえるロック色の強いドラムサウンド。早いピアノのリフに合わせて、オルガン、カッティングギター、ベースラインが一丸となってどこか東洋風なメロディーを奏でる。曲想がころころと変わりまさに王道プログレ。
一転して、村石の鼓のようなはじけるドラムが聴ける3曲目の「The Stone of Golden Hair Village」(これは当時金髪だった村石にちなんでいるらしい・・・金髪村の石=金髪の村石)、ギターとの完璧なユニゾンと倍速、半速を自由自在に使いこなすドラミング。プログレといいつつもわかりやすさを残していた山本に対して村石の超絶リズム感に惚れ込んんだ。
つづく「MISKATONIC」でも6/8⇔7/8⇔4/4拍子の変動が妙に自然。4拍子に戻るところが破綻がなく、ビート感の正確さが異次元。この後村石はポップスからジャズまで幅広いアーティストのサポートにまわるが、彼が原石のうちに知ることができたのはマニア冥利に尽きる。
清水も実はこのアルバムに思い入れがあったらしく、あまりの名盤さに最近(といっても2009年だが)リマスター盤“SPARTA NAKED”として復活させた。でも、こちらは元盤の、当然新品購入のキングレコード盤。
いまでもヤク切れの禁断症状よろしく、時に無性に聴きたくなり、ときどき引っ張り出して聴く愛聴盤です。
【収録曲】
1. Good Days,Bad Days
2. BIFUKA
3. The Stone of Golden Hair Village
4. MISKATONIC
5. PM
6. GESSHYA SENKOH
7. The Shadow Over Innsmounth
8. Neuro - Psychoma
KENSO OFFICIAL HOMEPAGE
「Good Days,Bad Days」
オリジナル“η Σπαρτη”の評価は、多分不当に低い
途中でメンバーチェンジがあって、担当したドラマーによって曲の毛色や方向性が違うので、とっちらかった感もあり、アルバム全体が濃密な物語性を持つ次の作品にして最高傑作と名高い“夢の丘”と比較されがち。音色的にも加工が多いため、やや芯がなく遠くで鳴っている感じもあり、清水自身もそこが納得いかなかったらしく、後に音色加工を極力廃した“SPARTA NAKED”としてリマスターするなど、オリジナルは若干評価が低いが、自分は大好き。いろんな音が詰め込まれた「若い音」のアルバムが、自分のあの頃を思い出させて。
-
購入金額
3,008円
-
購入日
1989年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。