まとまった時間が取れなくてレビューが遅れてしまいましたが、ようやくそれなりのデータを取り終えましたのでレビュー記事とさせていただきます。この様な機会をいただいたこと感謝しております。
(目的)
・二階と一階のLAN配線(ころがし)をPLC化によって撤去したい。
・知人宅でPLCが全く使い物にならず相談された経験あり。
PLCが本当に使えないのかじっくりと検証して再確認したい。
・PLCが有効な用途を考えてみたい
(結論)
・我が家の二階から一階の配線をLANケーブルからPLC化することはスループットの問題で断念。
・知人宅では全く使い物にならなかったPLCだが、我が家ではそれなりに使用できる(無線LANと同等?)
・監視カメラなどの設置に有効だと思われる
・無線LANが使用できない建造物(鉄筋コンクリート)内での使用に有効だと思われる
(調査1:FTP転送によるスループット計測)
・調査は極力外的要因を排除したいのでLAN環境(100BASE-T)のみで行う。
・FTPサーバーに1GBのダミーファイルを作成(CentOS)
$ dd if=/dev/zero of=dummyfile bs=1024 count=1000000
・ダミーファイルをFTPクライアントでnullデバイス指定でダウンロードして計測(WindowsXP)
ftp> get dummyfile nul:
●ケース1:100BASE-T有線LANの場合
ftp: 1024000000 bytes received in 94.84Seconds 10796.68Kbytes/sec.-->(86.37Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 89.97Seconds 11381.70Kbytes/sec.-->(91.05Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 94.56Seconds 10828.87Kbytes/sec.-->(86.63Mbps)
ほぼ100BASE-Tの性能は出ていると思われるので、サーバーとクライアントの処理能力によるボトルネックも加味してこの値を基準とする。
●ケース2:一階と二階のコンセントにPLC接続しLAN接続した場合
ftp: 1024000000 bytes received in 310.67Seconds 3296.08Kbytes/sec.-->(26.37Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 310.88Seconds 3293.93Kbytes/sec.-->(26.35Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 317.44Seconds 3225.83Kbytes/sec.-->(25.81Mbps)
100BASE-Tで86Mbps出ていたが、26Mbpsまでスループットが低下した。単純計算すれば1/3の速度におちつくという結果が出た。ただ、26Mbpsが遅いのか?というと無線LANと比較した場合、それほど劣っているとも思えない。
残念なのはPLCのパッケージに記載されている、規格値「210Mbps」がやや誇張された数値に感じることだ。これを見て、半分の100Mbpsでも出てくれたら十分だと控えめに期待していたので、実測26Mbpsしか出ないという現実に落胆せざるを得なかった。パッケージ裏には「UDPで90Mbps」「TCPで65Mbps」と目立たなく記載されてはいる。
(調査2:フィルター付きタップの有効性)
・同梱されて来たフィルター付きタップの効果を検証する
・数値で出したいのでスループットを計測する
●PLCアダプターにフィルター付きタップを組み合わせた場合
ftp: 1024000000 bytes received in 325.83Seconds 3142.76Kbytes/sec.-->(25.14Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 310.11Seconds 3302.06Kbytes/sec.-->(26.42Mbps)
ftp: 1024000000 bytes received in 309.05Seconds 3313.42Kbytes/sec.-->(26.51Mbps)
色々試してみた内の数値は率直に言って変化は無かった。ノイズ源となっている機器を突き止めて、フィルター付きタップに接続しないと効果は期待出来ない。その為のPLC用フィルター付きタップだと言える。
どうやってノイズ元を突き止めれば良いのだろうか?カットアンドトライで試してみるしか無いと思われる。ちなみに検証は昼間に行ったので蛍光灯や白熱電球は使用せずに行った。エアコンも動かしていない。(コンセントを抜けるものは抜いてみたので冷蔵庫がもっとも怪しい感じだ。但し切り分けていないので根拠は無いが・・)
(実験:LAN対応監視カメラをPLCのネットワークで設置してみる)
・自宅内で電源コンセントがある場所なら容易に設置出来る点は利便性が高い
コンセントがある場所に、PLCアダプターとLAN対応カメラ(ACアダプタ必要)を持って行く。自宅内の適当な場所で設置してみた。設置してみてまず気づいたのは、コンセントの空きが2つ必要なこと。PLCアダプタと監視カメラ用にだ。知人宅で見たPLCアダプタはコンセントプラグの背にコンセントを差し込めるタイプのプラグだったので完全にその点では配慮が足りないなと感じた。その配慮があれば、もっと気軽に色々なところで使用出来るだろう。
それとこれは安全上の話なのでメーカー関係者さんには是非届いて欲しい意見。PLCアダプタのプラグが小さすぎて、手でつまんだ時にうっかり端子に触れてしまうことが有る。このままソケットに差し込んだら・・・感電!!これは是非とも改良した方が良いと思う。少なくとも私は体感的に危険と感じ差し込む時には慎重になった。注意していても押し込む時に力を入れるので滑ってしまう可能性はある。(私は押し込む時は親指一本でグイッと押し込む様に注意した。)
さて家庭内のコンセント数カ所で試してみたが、手持ちのLAN対応監視カメラが古い(フレームレートが低い)ので全く問題なく監視カメラとして使用することが出来た。最近の機器を使用した場合は期待通りのフレームレートが得られるかどうなるか分からないので、スループットから事前に調査が必要だと思われる。
(最終的なコメント)
PLCは定評のある某大手メーカー製品を知人宅で全く無力(親機と子機のセッションが頻繁に切れる)だと言う状況を目の当たりにしていたので、使い物にならないという先入観を持っていた。しかし我が家でレビューをさせていただいた限り、スループットこそ期待値には達しなかったが、セッションが切れる等という事には遭遇しなかった(実際に使ってみても監視カメラ映像は問題なく動画を配信し続けてくれた)。無線LANと同様の感覚で使用するには速度的に良いライバルだろう。
無線LANとの違いは、PLCアダプタの配下にHUBを接続して複数の有線LAN端末を接続出来る点だ。ここは無線LANに比べてアドバンテージだと感じる。まさにパッケージ裏の図にある家庭内の各部屋にネットワークを分配させる用途にはうってうけだ。(その場合の問題(課題)は価格だろう。価格面を考えると普及率の高いWiFiに軍配が上げざるを得ない。)
という訳でスループットを要求されるメイン回線には使えないが、「それほど速くなくても繋がれば良い」というケースであれば、LANケーブルを敷設する代わりに手軽に対応出来る。LAN間接続モード(WDS)に対応した無線LAN機器はまだ少ない。その点手軽なPLCアダプタなら容易にWDSでやりたいと考えるであろうネットワーク構築が可能だ。
家の電源コンセントさえあればOK!この手軽さは、仮設的なLANケーブル敷設の代わりと考えれば、有線LANに比べ手軽にかつシンプルに出来ることが想像出来る。例えばホームパーティーを自宅の庭などの屋外で行う場合を想定してみる。屋内に設置した無線LANの伝搬距離では電波の伝搬上、距離的に無理な場合があるとしたら、庭にあるサービスコンセントにPLCアダプタを接続し、そこに無線LANアダプタを接続すれば無線LAN-APを庭先に仮設することが簡単に出来てしまう。同様に屋上でもコンセントさえ有れば屋上パーティーに無線LAN-APを手軽に仮設出来る。PLCは無線LAN(WiFi)との競合製品(どっちを選ぶ?)と一般的には捕らえられるが、両者を組み合わせると発展的な事が出来そうに思える。
さて我が家に置けるPLCアダプタの利用は、やはり臨時のLAN配線用途、もしくは監視カメラ設置にとどまりそうだ。残念ながら一階と二階の通信速度はNASや常時稼働のサーバー設置の関係上、100Mbpsでも不満が出ているので、これを1/3に落とす訳にはいかない。特に動画ファイルをNASに転送したり、作業用PCにCOPYしたりという用途が増えて来たので速度は無視出来ないのだ。
気軽に「つながればいい」という用途で使いたい。それが私の今回のレビューの総合的な結論。
残念ながらフィルター付きタップは試行錯誤したが効果のある場所(ノイズ源)を見つけられなかった。もっともそれを簡単にやってのけられる技術と知識を持っていたら、一商売出来そうに思えるし、メーカー側としてもこんなに普及活動に苦労はしないだろう。ということでこれ以上の追求は断念する。
以上、長々と書いてしまいましたが読んで下さった方はありがとうございます。まだやれそうな事がありそうに思いますがキリが無いのでこの辺にしておきます。でもまた何か思いついたら試してみてレビューは更新しますのでよろしくお願いいたします。
aoidiskさん
2010/11/14
速度は期待している数値は出ないが、使えない速度でもない、
その点用途を選ぶ。
本当、接続は簡単ですよね。
shinさん
2010/11/14
ウチの環境(おそらく電気配線の回路で違うのでしょう)では安定はしています。FTP転送でレビューに掲載した以上のパターンでサンプル数値を取ったのですが、大差なくほぼ同様の数値が出ます。むしろ数値が揃いすぎていて驚いている位だったりします。(その為にLAN環境での検証に限定したのですが)
ウチの間取り(要するに家が狭く部屋が少ないくせに一階と二階に分れている)のせいで、音がうるさいものを置く部屋、パソコンを使用する部屋が別れている関係上、スループットはそこそこ無いと使い勝手が悪いのです。
結局階段ルートのLANケーブルは撤去出来ません・・orz
jakeさん
2010/11/14
ちなみに配線をあんまりバラしたくなかったので、同梱のタップは使いませんでした……大きいんですよ、あれ。
無線LANが届かない場合の代替手段と見ればアリなのですが……802.11nとかハイゲインアンテナとかで無線LANの高性能化が著しいので、やや不利ですかね。
shinさん
2010/11/14
ウチより優秀ですね。ちょっと悔しい(w
ウチはレビュアー募集の応募にFTPで数値取ってレビューすると宣言してましたのではなからそのつもりでFTPのみの数値しか取ってませんが、なるほどCIFSでもドライブマップしてからベンチマーク取れば良い訳ですね。Windows Serverは2000しか無いのですが、まぁファイル共有のベンチ取るには別に良いですかね。また後日時間とってやってみようと思います。
無線LANは設定を苦にしない人なら最短の近道ですね。簡単設定な某社のAOSSなんかもありますし。
ただしウチの場合はむしろ離れた部屋の方のHUBに沢山ぶら下がっている上、サーバーはルーターが有る方に設置で、無線LANを使うにしても必ず有線LAN部分が必要なのでLAN間接続モード(WDS)が使えないと実用的ではありません。
WDS対応の機器ももちろんありますがWEP暗号は論外として、実用的な暗号強度を持ったWDS対応機器となるとハイエンドモデルなので2台購入となると、実売でもPLCよりコスト高になります。故にPLCは理想型なのですが肝心のスループットが・・痛し痒しですね。
PLCもここいらでなんとか頑張らないとWiFiに水をあけられてしまいますので頑張って欲しい次第ですが、一般的にも言われている様にPLC自体がノイズを発すると言う問題も指摘されている事から難しいのかも知れません。ウチはPLC機器からのノイズ干渉は今のところ何も気づきませんが。
DOZENさん
2010/11/16
ただ、コンセントに挿すだけでつながるとは驚きです。
NASを運用しているならばGbEでしょう!流石に規格値1000Mbpsは出ませんがだいたいの製品が600Mbpsくらい出るそうです。我が家もGbEに非対応なのは残すところルータのみといった具合です(爆)。
shinさん
2010/11/17
レビュー商品のパッケージにも「使えなかったら返金します」旨記載されていたし。
ギガビー化は局部的に(HUB1個だけ)やってますが、ウチの場合は残り2個のHUBを同時にグレードアップしないとネットワーク構成上意味がないので今一歩踏み出せないでいます。でもそろそろ手頃な価格にはなってきたので頃合いかな。
ルーターの高速化については、なにしろADSL 8Mbpsなので全く問題なし(無意味)です(苦笑 光回線への乗り換えタイミングを完全に逃してしまったので惰性でADSLを使っています。まぁ、WANの高速性が欲しい場面はLinuxのISOファイルを落とす時程度なので、余裕を持ってBitTorrent辺りでまったりと落とせば事足りてます。まずはLAN環境のギガビー化ですね。NASも快適に使いたいけどiSCSIも使いたいし・・