ZARD。cybercatはあまり多くの楽曲を持たないアーティスト。いや中心人物坂井泉水が存命の時はむしろあまり興味のない方に分類されていた。いわゆるJ-POP正統派なのだが、どちらかと言えばソウルフルだったり、アレンジにシカケがあったり、テクニカルだったりという飛び出たところがある楽曲の方が好きなので、あまりに素直で直球の曲を創る彼女にあまり興味が持てなかったというか、耳に残らなかったというか。「イイ曲だな~」と思っても、それが購買につながらなかったというか。
ただ衝撃的な彼女の死後、音楽番組などで特集が組まれ、やはりイイ曲もたくさんあるな、と少し入手することにした。そんな経緯で手に入れたZARDのラストシングル。ただ実はこの曲、泉水の死後にリリースされている。
元になったのは2ndシングル“不思議ね…”のカップリング曲で泉水が初めて作曲まで手がけた曲らしい。そういう思い入れのある曲だからか、元曲は明石昌夫によるアレンジなのだが、泉水本人はリアレンジを望んでいたらしい。泉水死後の事ではあるが、その願いがなかった形だ。新アレンジャーは岡本仁志。
その「素直に言えなくて ~featuring Mai Kuraki~」。cybercatは元アレンジを識らないので比較としては論評できないのだが、コーラスとして倉木麻衣が加わっているところがウリ?共通のプロデューサーの長戸大幸を通じて交流もあったようで、泉水をリスペクトする麻衣がコーラスに加わった形。麻衣のカラーのソウルテイストは抑えられているが、でも声の粘りは隠せず、cybercatにとっては少しイイ感じの変化が加わっている(と思う)。AメロのAm7⇒G⇒F#m7-5⇒F⇒Em7⇒Dm7(⇒Am7)と下降ラインを採るコード配置もベタと言えばベタだが、オーソドックスなZARDの曲には合ってるかな。
「Hypnosis」もカップリング曲(28thシングル「MIND GAMES」)のリアレンジらしい。「素直に言えなくて ~featuring Mai Kuraki~」のアレンジャー岡本仁志が同じくアレンジを手がけるので、曲調は結構違うが違和感はない。こちらは生ギターと生ピアノ、男性コーラス(GARNET CROWの岡本仁志とdoaの大田紳一郎)が彩る曲でよりフォーキィ。泉水の声も軽やかだ。
DVDの「あの微笑みを忘れないで」は一周忌に行われた追悼ライヴから。生前の彼女の歌う映像が流れる中、生のバックバンドが演奏するというスタイル。国立代々木競技場第一体育館を埋め尽くしたファンが惜しみなく手拍子で盛り上げ、サイリウムを振り、拍手を送り、映像の泉水に向かって手を振る。自分の死後にまで、人々に歓びを与える。アーティストにとってどんなに幸せなことだろう。音楽家、音楽関係者も音楽は自己の表現であるとともに、それがたつきをたてる元でもあるので致し方ない点もあるとは理解はできても彼女の死後これでもかと繰り返されるセールやフェアにあまりいい気がしなかったのは事実。ただそれらには、これだけ素晴らしい歌声を朽ちらせる事なく、後世に伝えるという気持ちもあったのかな。泉水の歌の人の心に届く「力」に気がついたのが彼女の死後だった...というのがザンネンだったな..と思ったり。
【収録曲】
<CD>
1. 素直に言えなくて ~featuring Mai Kuraki~
2. Hypnosis
3. 素直に言えなくて ~featuring Mai Kuraki~ (Instrumental)
4. Hypnosis (Instrumental)
<DVD>
1. あの微笑みを忘れないで (追悼ライブ 2008.5.27 国立代々木競技場 第一体育館より)
「素直に言えなくて」
-
購入金額
1,260円
-
購入日
2013年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。