VICTORIAをプレイして、パラドックスインタラクティブ社のゲームにハマった、L2さんが次に手を出したソフトです。
VICTORIAと同じく、歴史再現系ストラテジーです。
武将とか、政治家とか、司令官とか、そういった人物はゲームには登場しません。
(国王については、名前と簡単な能力値があります、が自由に動かせる訳では無いです)
歴史ストラテジーとしての、他のゲームとの違い。
まず、国家のパラメーターがシンプル。
国家財政を表すものは、国庫(単位はダカット、ヴェネツィア中心にヨーロッパで流通していた金貨の事、らしい)のみ、軍の食料も、装備も、全てこの国庫の支出金額として、纏められています。
当然、春に金銭収入、秋に食料、なんてものはありません。
領地には、交易で収入を得ている特産品、特産品以外の日々の流通などの経済規模に応じた基本税額などが設定されており、その数値の12分の1が毎月収入となります。
「毎月、入ってくる収入があるんだ。じゃあ、それを貯めて○○(兵の雇用or建設or開発)しようぜ」
というのが、野望シリーズだったり、何とか史シリーズだったりする訳ですけれども。
このヨーロッパユニバーサリスでは、毎月の収入は、ダカットで表されているものの、実は、物納だったり、労働力の供出だったりするものの総量であるとみなされているようです。
その為、毎月の収入は、技術研究への投資、安定度(治安とか民心掌握)への投資のような国庫から直接支出できない(方法は有るにはあるけれども)項目に使われている限りでは、前述のように物納だったり、労働力の供出を直接受け取っている形なので、問題無いのですが。
国庫に貯める、となると、その時点で現金化(貨幣を鋳造して貯める)という行為になります。現代でも、信用、或いは担保となる資産の裏付けなしで貨幣を鋳造するとなると、ジンバブエなどのように、増やした分だけ貨幣自体の価値は下がり(物価が上がる=インフレになり)ますよね。
故に、毎月の収入を国庫に貯めると、インフレ率が上がってきます。
そうなると、国家が支払う、あらゆる支出(戦争賠償金除く)がインフレ率分高くなります。
特殊な施設を建設する以外には、ほぼ、回避する事が出来ませんので、累積するインフレは、たとえ年に1%の進行だったとしても、十年で10%、百年では100%(!)加算されてしまうのです。
このインフレ率は、減少させる手段がとても少なく、一旦上がってしまうと、その後、ずっとそのままという恐ろしいモノです。
初めてプレイする時には、その恐ろしさに気づかないのですが、年月が経つにつれて、恐ろしさが表面化してきます。
軍隊の維持費は、国庫から支出されるので、軍を持っているだけで、毎月の収入を一部国庫に入れる→インフレ率アップですよー、のお知らせ。
そして、気づいた時には、もう手遅れなんですよね。
なので、他のゲームの様に拡張政策なら大丈夫と、
「領土を頑張って拡張して、二倍位にしたよ!やったー!」
なんて言ってみても、
「収入、倍になるどころか実質減った……」
という事も無いとは言えないのが、その恐ろしさ。
この現象に拍車を掛けるのが、毎月の税収と共に、国家の収入となる、毎年一回の人頭税(年の初めにかける人口に応じた税金徴収制度)が、まだ、殆どの国家で採用されていない(人口そのものを把握していない)という事。
この人頭税は、最初から現金で納められるもので、インフレを進めることなく、国庫を増やす手段なのです。
しかし、殆どの国では、まだ、この恩恵に与れません。
導入には、税務署を建設する事が必要なのですが、この建設に掛かる費用が高額(領土一つに付き50ダカット=歩兵12部隊(初期費用の場合)分、現代で言うアメリカ・ロシアレベルの兵数は言い過ぎかもですが、それに近い)で、小国でプレイする時には、税収を得る為に、貴重な国庫を放出するというジレンマに遭遇します。
まあ、使わなくても、軍の維持費は国庫から引かれちゃいますから、軍隊全部解散しない限り、ジリジリと目減りして、0になっちゃうのですけれどもね。
あと、税務署立てても、使った国庫を何年掛ければ元が取れるのか、という問題もあります。
小国で始めて、周りに強大な国家が存在する場合、元を取る前に、滅んだり、税務署立てた領土をとられたりして、水の泡。という流れが一般的ですので、ジレンマは加速します。
そして、そもそも、水の泡のように簡単に滅びてしまう、泡沫のような国々は、税務署を建てる技術レベルに到達していない事がしばしばあります。
この場合、毎月の収入を税務署建築が解禁される技術に投入して、レベルが上がるまで、待たなくてはなりません。
すると、上記のジレンマにあるように、国庫は徐々に消費されていき、いざ、解禁!という時には、そんなお金が無いというオチ。
国庫を使わないように、軍隊を解散して、軍備をゼロにすれば、目減りは無くなりますけれども、そういう時は、侵略されますよねー。
諸行無常、弱肉強食とは、この事でしょう。
技術開発についても、文化グループという物があり、ラテン(イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどなど)、正教(主にハンガリーより東のヨーロッパ)、ムスリム(所謂イスラム国家+中国)、アジア(アジアに位置するイスラム以外の国家)、異教(4つのグループに含まれない国々)と分けられていて、技術発展に要するコストが違います。
おおよそ、ラテンを基準として、正教は10%、ムスリムは20%、アジアは40%、異教は90%もの余分な費用が掛かります。
他にも、ヨーロッパに近くない国は、多くのペナルティがあり、最大で10倍の差が付くこともあります。
アメリカのネイティブ民族国家でプレイすると、このシステムにより、史実通りにスペインが来襲してきた際には、こっちは槍メインの歩兵なのに、相手は、銃で武装していて、大砲もあったり、という事態が起きます。この場合、一万人で囲んでも、千人の部隊は損害を受けずに、包囲側が壊滅、という被征服者の悲哀が存分に味わえる訳です。
逆に、そういう場面で、千人対千人で互角で戦えちゃうと(無茶苦茶努力して不可能だと思う差を互角に引き上げたのでなければ)、どんな国でもプレイ可能国家には生き残る可能性がある、という遊戯に寄ったゲームバランスとしてはともかく、歴史の流れを感じる、このゲームとしては興ざめだな、と思います。
色々と、とっつきにくかったり、出来る事が少なくてモヤモヤする事も多い作品なのですけれども、プレイしていると、激動の時代を目の当たりにしている浪漫があります。
当時存在していたとされる国家をどれでも選べる訳ですが、操作担当国にしても、なお、滅びの運命から逃れられないくらいの格差がある国は多いですね。
それは、史実でその国が遭遇した格差を表現する再現性でもあるので、
「ああ、この辺りの国があっちの属国として貢物を送り続けたのは、そういう事なんだなあ」
と、感慨深くなります。
年表とか、ウィキペディアの記事を見る時にも、ちょっと、感情移入出来たり。
このシリーズは、既に4がDLCや追加(バランス変更、新システム導入)パックも発売されていて、どんどん歴史の流れをシミュレートする臨場感というか、現場に立っている感が強くなっていって、面白いです。
この作品は、ボードゲームをPC上で表現しているようなグラフィックなので、物足りないと感じる人の方が多いかも。
でも、奥の深いゲームなので、新作が出ていても、時折、プレイしたくなります。
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購入金額
4,400円
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購入日
不明
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購入場所
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