所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽には流行り廃りがあります。アーティストとしては、自分の表現を続けられるのが一番の幸せだと思われるので、その流行りの波に乗って自分をアピールすることは悪いことではありません。時代の波に乗って登場し、今でも確固たるポジションをキープするアーティストのデビューシングルをご紹介します。
倉木麻衣。現在でも活動を続ける女性アーティスト。曲は書かないが、ほぼ全ての詞を書いて自分を表現する。当初はウィスパーヴォイスと言われる、囁くような声で英詞が多い、洋楽っぽい曲を歌っていたが、現在ではもう少し王道のソウル調J-POPを歌う。ただ、2~3ヶ月に一度以上のリリース間隔だった21世紀初頭に比べると、最近は一曲も新曲がリリースされない年も出てくるなど、作品発表の間隔は開いてきている。それでも新曲をリリースするたびにチャート一桁までは上ってくる「売れている」「売れ続けている」アーティストでもある。
それもこれもこのシングルから始まった。
“Love, Day After Tomorrow”。この英詞がメインの曲、そして数カットの写真以外ほとんど素性が明かされない情報統制の中、「ナゾの帰国子女」というような立ち位置で売り出した麻衣、この曲一曲で、当時宇多田ヒカルのフォロワーとして多く現れていたソウルディーヴァ(R&B系楽曲を歌う女性歌手)から抜きん出て存在感を示した。
表題曲、「Love, Day After Tomorrow」。作曲はその後も麻衣と良く組んでいる(そして以前はZARDにも曲を提供していた)大野愛果だが、サウンドプロデュースと編曲にボストンの音楽チームCybersoundを採用し、かなり日本離れしたサウンドに仕上がっている。麻衣は、初期の特徴となる吐息多めのウィスパーヴォイスを使って、クセのない英語の発音で歌う。♪Love, day after tomorrow…… wish you knew/I'm still in Love, But you're gone, And now my heart is breaking/Love, day after tomorrow…… I need you back/My heart is waiting for your love, L.O.V.E one more day♪「L.O.V.E」って当時流行ったよな....
続く「Everything's All Right」。曲の提供は北浦正尚で、1曲目とはかなり違う明るい曲調、弾むようなリズムに載せて表題曲より明るめに麻衣が歌い上げるが、驚くほど曲の「肌触り」が似ている。これは一般的な編曲だけでなくサウンドプロデュースまで手がけるCybersoundのカラーかもしれない。ちょっと薄膜が手前にあるような霞んだ、もしくはかすれたような風合いの作品。歌詞は♪Always go ahead And give me a chance♪と前向き。
次の「Everything's All Right (Remix)」は、原曲の編曲を手がけているCybersoundのメンバー、Perry Geyerがリミックスを手がけているが、結構違った肌触りになっている。速さがかなり速められていて、ヴンヴンとうなるシンベとよりハネるように感じられる打ち込みのリズムパターンが刺激的に押してくる。麻衣の声にはエフェクトが強めに入っていて、さらに少々遠目に抑えられていて、ヴォーカルよりリズムが目立つバランスとなり、ダンサブル。
20世紀の末にこのサウンドとヴォイスで出てきて、数多くいたソウルディーヴァの中で、独特の地位を確立した。その後徐々に王道J-POPに路線変更したが、初期についた彼女自身に対する強い印象は薄れることはなかった。
そんな息の長い活動の起点となった作品でした。
【収録曲】
1. Love, Day After Tomorrow
2. Everything's All Right
3. Everything's All Right (Remix)
4. Love, Day After Tomorrow (Instrumental)
「Love, Day After Tomorrow」(リンクが切れているように見えるけれど、ちゃんと観れます)
音楽的にも企画的にもあの時代に合っていた
時代に合っていて、でも他と微妙に異なったアプローチで独特の存在感を放った
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購入金額
1,260円
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購入日
2000年頃
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購入場所
北のラブリエさん
2021/03/25
cybercatさん
2021/03/25