レビューメディア「ジグソー」

人間の存在意義とはなんだろうか

カフカというと、とかく「変身」ばかりが一般的には知られ、
その救われない感じと気持ち悪さをから、
敬遠している人が多いのではなかろうか?
正直言って、この作品も救われない作品ではあるが、
非常にすばらしい作品だと思う。
より、現実に近く、わかりやすい。
必ずしもわかりやすければいい、というものでもないけれど。

何か疑問や空虚さを覚えたことはないだろうか?
皆さんは、肩書きで呼ばれる社会に。
誰々さん、ではなく、某社部長の誰々さん。
仕事相手の誰々さん。何々を発明した誰々さん。
誰々のだんなの誰々さん。
そう、常に他のものから連想され、
その人のみを思い浮かべてくれない世の中。

誰にも、必要とされない。ありのままの、あなた自身としては。
仕事があり、役割があってこそ人に必要とされる。
お金の切れ目は縁の切れ目と、ある意味似た言葉もある。
お金があるかないかにかかわらず、財界人が、仕事をやめたとたん
周りの人々との関係がなくなるとはよくきくところ。

果たして、あなたが人生の次のステップに進んだときに、
なくならずに続いた関係はどれだけありますか?
中学のときの友達は高校のときの友達だった?
大学生になったときは?そして、社会人になったときは?
利害関係のない関係なんて、大人になればなるほどなくなってしまうものです。

さて、本作品は人間の価値、いや存在そのものが、職業のみにより規定された村の話。
そんな中、主人公は"手違いで"城の測量士として呼ばれてしまう。
そして、主人公には当然仕事は存在せず、彼には人間としての価値、
”存在”すら認知されなくなってしまう。
さらに、すべての営みは官僚的である。
話は多少の好転や悪化というブレを繰り返しながらも
常に同じ調子で進む。
現代社会の疎外感を浮き彫りにした作品である。

栄光あれ、就職難のわれらが祖国に


(別に共産主義者ではありません)
  • 購入金額

    820円

  • 購入日

    2012年08月09日

  • 購入場所

13人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • aoidiskさん

    2012/08/09

    カフカ 懐かしい~

    ドイツの作家でしたっけ?

    この人から、ドイツの作家の本

    いくつか読み始めた記憶あります。

    とはいっても、翻訳本しか読めないので、

    翻訳者によってかなり、文章変わるから

    何ともいえないけど、好きな作家でした。
  • TakOnuさん

    2012/08/09

    >aoidisk様

    そのとおりです。ドイツの作家です。
    」まぁ、わしたち一般人は翻訳本でしか読めないのは残念ですね……。
    ホント,訳者によって雰囲気が変わりますよね。
    その奥深さからか、知り合いには、ありとあらゆる訳者の本を集めて読み、
    原文のみならず、その英訳、フランス語訳など読むという。
    非常に凝ってる人もいますね。

    しかし、いい作家ですよね。

ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。

YouTube の動画を挿入

YouTube の URL または動画の ID を入力してください

動画の ID が取得できません。ID もしくは URL を正しく入力してください。

ニコニコ動画の動画を挿入

ニコニコ動画の URL または動画の ID を入力してください

動画の ID が取得できません。ID もしくは URL を正しく入力してください。

ZIGSOWリンク挿入

検索対象とキーワードを入力してください

    外部リンクを挿入

    リンク先の URL とタイトルを入力してください

    URL を正しく入力してください。

    画像を挿入(最大サイズ20MB)

    画像を選択してください

    ファイルサイズが20MBを超えています

    別の画像を追加

    ZIGSOW にログイン

    ZIGSOW会員登録(無料)はこちらから