レビューメディア「ジグソー」

前方定位にこだわる意味はあるのだろうか?

独SENNHEISERでHD600系やHD800等を開発した技術者、Alex Grell氏が独立して新たに設立した会社がGrell Audioです。

 

SENNHEISER在籍時から追究していたという「生演奏に近い音」を目指してブランド第1号ヘッドフォン(TWSが先行して発売されていた)として、米国の共同購入サイト「Drop.com(旧Massdrop)」とのコラボで発売したのが本製品Grell OAE1です。

 

音楽の聴かせ方がうまく多くのファンを獲得したHD650やHD800等の名機を開発したGrell氏でしたが、実際にライブ会場に足を運んで演奏を聴く度に自分が作ったヘッドフォンとの音の差を痛感したということで、SENNHEISER製品とは全く異なった性格のヘッドフォンとして登場してきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発売当初は外装が一部異なり4.4mmバランスケーブルが添付されていたOAE1 Signatureだったのですが、後に価格を下げたレギュラー仕様としてOAE1がリリースされています。OAE1は元々$299とそこそこの価格帯なのですが、現在は乱売に入ったようで通常$99で日本への送料も無料、大規模なセール時にはそれ以上に安くなる場合もあるという、手頃な価格帯の製品となりつつあります。

 

この製品はドライバーの配置法(詳細は後述)などかなり尖った構造の製品なのですが、ヘッドフォンとしての最大の特徴はヘッドフォンとしては一般的な脳内定位(自分の脳の位置に音が定位する)を良しとせず、前方定位(スピーカーや生演奏と同様、自分の顔の前に音が定位する)を目指しているという点です。

 

OAE1が目指すのと同様に前方定位を狙ったヘッドフォンとしては、他にCrosszoneのCZシリーズや、UltrasoneのS-LOGIC機構採用製品などがあります。私自身本当にスピーカーのような前方定位が得られるのであればとても魅力的だと思い、それらも何度か試聴してみたのですが、確かに一般的なヘッドフォンよりは音場が前方に展開されるものの、自然とはとても言い難い音で結局興味を失ってしまっていました。

 

それでも何故敢えてこの製品を買ったのかといえば、ポータブルオーディオやPC周辺機器等の輸入代理店として知られるアユートが、先日秋葉原で開催されたポタフェス東京でGrellの新モデルOAE2を参考出品していたことで、急にOAE1の存在を思い出したためです。

 

 

 

 

 

 

噂の前方定位がどの程度の出来か、そして私の愛器HD650の開発者がどのような音に辿り着いたのかに興味が出てきて買ったわけです。

更新: 2025/12/28
総評

ライブの音というよりはPAを通した音を狙った?

あまり重要とは思えませんが、テクニカルデータはこちらでご確認ください。

 

 

 

 

 

 

 

元々の価格でも5万円クラスですからそこまで高価な製品ではありませんが、それを踏まえた上でもあまり外装はパッとしません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入力は2.5mm4極で、左右両方の入力端子の一方に挿すことで音が出ます。

 

ただ内部配線の問題なのか、私の個体では左に挿すと右側の鮮度がやや下がる感じがあり、右に挿した方が左右の音質差が少ないため、基本的には右側で常時使うようにしています。

 

 

 

 

 

 

 

左右の識別は入力端子に印刷されたL/Rで可能ですが、イヤーパッドの中に大きく「L」または「R」が印刷されています。

 

さて、音質評価ですが、普段HD650を鳴らしているFOSTEX HP-A8で行います。HP-A8は出力が2系統あるため、両方を同時に聴くことが可能です。

 

 

 

 

 

 

 

まず音の第一印象はとにかく低域が強いということです。生演奏の音を目指したという触れ込みですが、この音を聴く限りロック系の楽曲をPAを通して聴いた音を基準においているのではないかと感じたほどです。

 

高域は量的にはごく普通に出ているのですが、質ははっきり言ってしまうと価格なりというにも少し質は低いと思います。ドラムセットの音全体が不自然ではあるのですが、やはりハイハットの音の偽物感は特に気になります。ただ鳴らし始めは特に酷く、最近になってある程度音は良くなってきましたので、エージング不足という理由もあったのでしょう。

 

注目の前方定位ですが、確かに他のヘッドフォンよりは地位する位置は前方です。しかし私の感覚では頭の真ん中から目の辺りまで前方に寄ったという程度で、自然な音場とはとてもいえません。

 

またドライバーをかなり角度を付けて組み込んでいる関係上、ハウジングを耳の前方側に置くか後方側に置くかで音の印象が大きく変わります。ドライバーからの直接音があまりにもダイレクトに届いてしまうと前述の質の低さが余計目立ちますので、気持ち敢えて位置をずらしてやった方が好結果となる可能性があります。

 

SENNHEISER時代の製品とは音の傾向は全く違いますので、Grell氏の業績を信頼して無試聴で買うとかなりガッカリする可能性が高いでしょう。既に信頼できるヘッドフォンを何代か所有している方が興味本位で買ったり尖ったヘッドフォンを使ってみたいという程度の動機で手にされた方が良い製品でしょう。

  • 購入金額

    15,600円

  • 購入日

    2025年12月21日

  • 購入場所

    drop.com

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