ワインの世界を歴史・文化・生産・流通・味覚・料理・サービス・世界情勢まで多面的に語る構成は、まさにシリーズ特有の「業界の全体像を俯瞰する」スタイルそのものです。
ただ、今回の『ワインビジネス』は、タイトルに「ビジネス」とあるものの、実際にはワインという文化の教養書としての比重が非常に大きく、新規ビジネスのヒントを求めて読むと期待値とのズレが生じると感じました。
テロワール(土地の個性)やブドウ栽培の背景、醸造の哲学や味覚の世界、料理との相性、古酒の美学、ワインが人をつなぐ文化的役割など、ワインを「液体の物語」として語る筆致は非常に豊かで、著者の経験と愛情が伝わってきます。
特に、ワイン初心者が「ワインって面白いかも」と思う入口としてはとても良い本だと感じました。
本書は章構成こそ「生産」「流通」「小売」「世界情勢」などビジネス的な項目を並べていますが、実際の記述は業界の仕組みを紹介する教養寄りであり、ビジネス戦略・市場分析・成功事例・収益モデルといった実務的な示唆はほとんどありません。
そのため、新規事業のアイデアやワイン業界での差別化ポイント、参入障壁や市場規模の分析• D2CやEC、サブスクなど現代的なビジネスモデルといったビジネス書としての深掘りを期待すると、どうしても物足りなさが残ります。
シリーズの他ジャンルで得られたような「ビジネスのヒント」や「構造的な気づき」が、本書ではあまり得られなかったというあなたの感想は、内容を踏まえると非常に自然だと思います。
ワイン文化の入門書としては非常に良書で、ビジネスのヒントを求める読者にはやや不向き。
読んでみてそんな風に感じました。
もちろんワインの魅力を情緒豊かに伝える点では素晴らしい一冊です。ワインを文化として理解したい人にはおすすめ。
しかし、タイトルに「ビジネス」とあることで期待される実務的な示唆は薄く、ビジネス視点で読むと満足度が下がる構造になっています。
一方で、新規事業のヒントを求める読者には、別の資料や市場レポートのほうが有益だと感じました。
文章表現の美しさ、知識体系の構造美
ワインの世界を語る比喩や語彙選びに独特の香りがあり、文化としての奥行きを感じさせる文章が多い。ただし情緒が前面に出る分、ビジネス書としての鋭さは控えめ。
歴史・生産・流通・味覚・世界情勢といった多層的な領域を一冊にまとめており、ワインの全体像を俯瞰できる構造は美しい。ただし深掘りよりも広く触れることに重心がある。
専門用語の説明は丁寧で、初心者でも迷わず読める導線が整っている。反面、情報の密度は軽めで、ビジネス的示唆を求める読者には物足りなさが残る。
必要な情報を後から参照しやすい構成
ワインの基礎知識を確認したいときに「辞書的に使える」。
情緒のグラスは満ちている
ワイン文化の基礎を一冊で俯瞰できる点では価格に見合う価値がある。ただしビジネス的な深掘りや実務的示唆は少ないため、“新規事業のヒント”を期待するとコスパはやや低めに感じる。
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購入金額
1,650円
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購入日
2025年12月06日
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購入場所
Amazon

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