レビューメディア「ジグソー」

音質重視なら大本命か

元々日本では洋楽ロックバンドの中でもトップレベルの人気を誇っていた英国のロックバンド、クイーンですが、映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットによってより幅広い層へとリスナーを拡げました。

 

そのクイーンの数ある名曲の中でも最も支持されている楽曲が、前述の映画のタイトルともなった「Bohemian Rhapsody」でしょう。元々は1975年に発表された楽曲で、当時のシングル曲の演奏時間は3分前後という常識を覆し、6分近くもあり、楽曲もあらゆるジャンルを内包するような複雑な構成でしたが、英国のヒットチャートで9週連続1位という記録を打ち立てるほどの大ヒット曲となり、クイーンの人気を不動のものとしました。

 

当時の常識からはかけ離れたほどの多重録音が駆使され、アナログテープを利用していただけに音質劣化もひどく、オーディオ的な品質という意味では決して良いものではないのですが、それでもこの名曲を少しでも良い音で聴くべく、オーディオ界でもこの曲の音質を追求する試みが多く見られました。

 

2018年の「OTOTEN」ではオーディオ評論家の小原由夫氏、土方久明氏による「ボヘミアン・ラプソディ頂上決戦」という、ありとあらゆるフォーマットでこの楽曲の音質を比較検証するというイベントまで開催されたほどでした。

 

この「ボヘミアン・ラプソディ頂上決戦」で、他のメディアからは頭一つ抜けて素晴らしい音だったのが、2015年のRecord Store Dayで限定5,000枚リリースされたアナログ12インチ45回転盤のレコードでした。私もその音に衝撃を受け、慌てて英国から未開封中古を取り寄せたほどです。

 

 

 

 

 

 

 

このレコードはそれ以降音の良さが知れ渡り、私が買ったときよりも遙かに高額で取引されるというプレミア盤と化してしまいました。私としては配信のQobuzがどんなに音が良いといってもこの12インチには到底及ばないと思っていますので、この曲はこのレコードで聴いて欲しいと思っています。とはいえ、既に日本で4桁価格で入手するのが困難なものを広くお薦めするのも難しいところでしょう。

 

そこで目を付けたのが、丁度本日発売という「ボヘミアン・ラプソディ50周年記念盤」シリーズです。

 

このシリーズは「Bohemian Rhapsody」を収録しているアルバム「オペラ座の夜(A Night At The Opera)」のLP盤、シングル「Bohemian Rhapsody」の12インチ盤及び7インチ盤を同時発売するというものです。日本ではユニバーサルミュージックから直輸入日本仕様で発売され、LPが限定1,500枚、12インチ、7インチはいずれも800枚ずつのみ販売されるということです。

 

限定ではありますが私は一昨日Amazonで12インチ盤を普通に予約できましたし、店頭販売分もあるでしょうから入手性はRecord Store Day限定盤とは比較にならないくらいに良好なはずです。

 

今回は50周年記念12インチ盤と2015年Record Store Day限定盤と比較してみるという趣旨で入手してみました。

更新: 2025/11/19
総評

音質はかなり良好な部類

今回購入した日本仕様盤とは、簡単に言えば英国から輸入したレコードに帯と解説を同封しただけのものです。よって中身は普通の英国盤そのものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帯は通常のLPのようなたすき掛けではなく、CDの外装に付いている紙帯と同じような構造となっています。

 

 

 

 

 

 

 

解説書をどけると本来の裏面側アートワークが見られます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レコード盤はトランスルーセントブルーのカラー盤で、一応重量盤となっているようです。写真には写りにくいので掲載しませんが、内周無音部のマトリクスには「Abbey Road 1/2 Speed」の記載があり、2015年のRecord Store Day限定盤と同じく英国アビィ・ロード・スタジオによるハーフスピード高音質カッティングが施されているようです。

 

それではRecord Store Day限定盤も用意して早速聴き比べてみましょう。Technics SL-1200G+TEAC PE-505+audio-technica AT-OC9/IIIで再生して、その音はMOTU HD192経由で録音しておき後から再度音を確認する際に利用します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の50周年記念12インチ盤は、Record Store Day限定盤に対してやや高域が抑え気味で低域方向の力感や解像度が向上しているというのが第一印象です。恐らく高品位なオーディオシステムで再生することに最適化した音質調整を施しているのでしょう。一聴すると50周年記念12インチ盤の方がHi-Fiという印象を受けます。

 

しかし高域をやや落としたことによる弊害なのか、Record Store Day限定盤にあったフレディ・マーキュリーの息づかいの生々しさや、残響音の豊かさがやや削がれたように感じられます。はっとするような鮮烈さはRecord Store Day限定盤の方に分があります。

 

ベースラインの質感や力感は50周年記念12インチ盤の方が間違いなく上であるだけに、この2つの違いは好みの差でしかないといえます。

 

では私がどちらに軍配を上げるかといえば…。

 

僅かな差ではあるもののRecord Store Day限定盤の方を取ります。あのOTOTENで聴いた時のインパクトは、同じ環境で聴いても50周年記念12インチ盤では鮮烈さが落ちる分だけ出にくいのではないかと感じられたためです。

 

ただRecord Store Day限定盤は品質管理が甘かったのか、ノイズや音飛びが多いという弱点があり、その点50周年記念12インチ盤はほぼデジタルで提供されているものと同等の水準で収まっているという良さがあります。

 

他のメディアと比べれば50周年記念12インチ盤でも十分アドバンテージは感じられるものと思いますので、興味のある方は市場在庫がある内に入手されることをお薦めしておきます。

  • 購入金額

    4,400円

  • 購入日

    2025年11月19日

  • 購入場所

    Amazon

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