私はそれほどアニメを視る方ではないのですが、全話視聴どころかクラウドファウンディングによる資金調達にすら協力しているアニメ作品があります。それがユキヲ作のWebコミックを原作とする「邪神ちゃんドロップキック」シリーズです。

元々は神保町や秋葉原といった私の学生時代の思い出に直結する場所が舞台であったことで興味を持ち、Amazon Prime Videoで配信されていたので全話一気に視て楽しんだことが始まりでした。とはいえ、ドタバタコメディ系の作品ですから、それだけならば一通り視て終わりだったでしょう。

しかし全話見終わった後でYouTubeに公式チャンネルがあることに気づき、それも視るようになりました。今ではすっかりメジャーになったVtuberをなんと6年も前に始めているという先進性もありましたが、この当時は登録者1万人前後というお世辞にもメジャーとはいえない存在でした。結構面白かったのですが、時代の先を行きすぎていたようで…。

そしてX（旧Twitter）もフォローするようになると、公式（実際には柳瀬氏個人でほぼ全て運営されているようです）のプロモーション手法やフットワークの軽さに驚かされることが度々あり、アニメの新作と同じくらいに公式の次の一手が楽しみになってきました。

世間の常識に真っ向から逆らうような斬新な施策が色々と生まれましたが、その中でも特に印象深いのは、本来予定されていたリアルイベントが台風で中止になった時に、販売済みの入場券は返金の上で無料のオンラインイベントを強行したことや、ふるさと納税によるアニメ制作の発表会で出資する自治体の首長をゲストに呼び、大手マスコミを入れながらオンライン中継など、弱小アニメとは思えないような強い印象を残す取り組みが目立ちました。

当初はマイナーアニメの範疇でしかなかった「邪神ちゃんドロップキック」は、いつしかアニメ業界における開拓者のような扱いを受けるようになり、TV局がその取り組みを特集するまでになっていきます。

もっとも型破りであるが故に思わぬトラブルも発生したりしました。全国的に有名になったのは一般ニュースにも取り上げられた、北海道富良野市による「予算支出不適切認定」事件でしょう。

これはふるさと納税の資金で制作された富良野編の作中で、登場人物の発言が公序良俗に反しているということで市議会が予算支出を不適切と判断したものです。最終的には市長決議により予算は無事認可されましたが…。

良くも悪くもプロモーションが話題を呼ぶことが多かった「邪神ちゃんドロップキック」。そのプロモーションを行っていた当事者である宣伝プロデューサー柳瀬一樹氏が、「邪神ちゃん」のプロモーション手法や、実行したことで得たノウハウを惜しげ無く披露するというのが、今回紹介する「宣伝は差異が全て　邪神ちゃんドロップキックからマーケティングを学ぶ 」という書籍です。

正式な発売日は明後日9月9日なのですが、私が予約していた楽天ブックスはフライング出荷されたため、本日午後に届きましたので早速全て読み、ここで取り上げることにしました。