レビューメディア「ジグソー」

意外と骨太なJ-Rock

2022年にTVアニメが放送され大反響だったガールズバンドを題材とする「ぼっち・ざ・ろっく」。劇中バンド「結束バンド」のフルアルバム「結束バンド」も2022年12月に発売されてロングヒットを記録し、発売から1年後に日本レコード協会認定プラチナディスク(累計25万枚以上出荷)となるなど、約15年前に大ヒットを記録した「けいおん!」シリーズにも負けないほど反響を起こしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「けいおん!」シリーズと同様に楽曲製作や演奏に本職のミュージシャンを多数起用して単体の音楽として通用する楽曲を製作したことでアニメのファンのみならず、J-Rockファンにも支持が拡大したことも大反響となった大きな理由でしょう。

 

アニメのストーリー(このレコードを買ってからAmazon Prime Videoで通して視てみました)としては、コミュ障陰キャながら長年練習した抜群のギターの腕前で動画サイトで支持を集める高校生後藤ひとりが、偶然バンドメンバーと出会うことで物語が動き出すというもので、現時点ではヒット作であるにもかかわらず第2期の予定も無いようです。もっとも現在はTVアニメを再構成した劇場版総集編の公開中ではありますが…。

 

劇中の結束バンドは

 

 

・伊地知虹夏(リーダー、ドラム担当)

・山田リョウ(ベース、コーラス、作曲担当)

・喜多郁代(ヴォーカル、ギター担当)

・後藤ひとり(リードギター、作詞担当)

 

 

の4人で構成されますが、このメンバーの名字はJ-Rockバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバー(伊地知潔、山田貴洋、喜多建介、後藤正文)から取られていますし、担当楽器も概ね同じです。TVアニメ最終話ではエンディング曲もASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲「転がる岩、君に朝が降る」を結束バンドがカバーしたものとなっているなど、全面的にASIAN KUNG-FU GENERATIONへのリスペクトが感じられます。

 

作中で後藤ひとりはメンバーから「ぼっちちゃん」(名前の後藤「ひとり」→「ひとりぼっち」→「ぼっち」と連想されたもの)という愛称を付けられていますが、これも後藤正文のソロ活動時の別名「Gotch」(ごっち)から着想を得ているものと思います。ちなみに私はASIAN KUNG-FU GENERATIONはほぼ聴きませんが、レコード漁りの産物で後藤正文のGotch名義は知っていましたので、何となくこの流れかなとアニメを視る前から予想していました。

 

「ぼっち・ざ・ろっく」については話題になっていたのでそのうち視てみようかという程度だったのですが、何故かその前にアルバムをアナログ盤で買っていました。これは特に聴きたいと思って買ったわけではなく、オーディオ店でフォノイコライザーやMC昇圧トランスの試聴を散々させて貰ったにもかかわらず、結局購入しなかったのが申し訳なかったので何か手頃な買うものを探した結果、このレコードが目にとまったというだけの理由でした。

 

他にも買ったまま積んでいるレコードが多く、なかなかこのレコードも聴く機会が無かったのですが、先日丸一日時間が空いた際に積みレコードのWAVファイル化をするためようやく通して聴いたのでここで取り上げることにしました。

 

 

 

 

 

更新: 2024/08/27
総評

生バンドの良さと歌の巧さ

CDと同様全14曲収録で、LP2枚組となります。180g重量盤で比較的溝も広くカットされた音質面では有利な仕様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2枚組なのでダブルジャケット仕様となります。内側はこんな感じですね。

 

 

 

 

 

 

 

レコード盤は前述の通り180g重量盤で、通常仕様のレコードと比べると静電気を帯びやすい点には注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収録曲は以下の通りです。

 

 

Side A

 

01. 青春コンプレックス
02. ひとりぼっち東京
03. Distortion!!
04. ひみつ基地

 

Side B

 

05. ギターと孤独と蒼い惑星
06. ラブソングが歌えない
07. あのバンド

 

Side C

 

08. カラカラ
09. 小さな海
10. なにが悪い

 

Side D

 

11. 忘れてやらない
12. 星座になれたら
13. フラッシュバッカー
14. 転がる岩、君に朝が降る

 

 

基本的には劇中の担当通り喜多郁代役の長谷川育美がヴォーカルを担当していますが、「カラカラ」は山田リョウ役の水野朔が、「なにが悪い」は伊地知虹夏役の鈴代紗弓が、そして「転がる岩、君に朝が降る」は 後藤ひとり役の青山吉能が、それぞれヴォーカルを担当します。

 

結束バンドは実際のライブにおいてはヴォーカル以外は本職のミュージシャンを起用して演奏しますので、「バンドリ!」シリーズのようなキャストが演奏する形ではありませんが、その分音楽としての完成度は高く保たれます。また一部楽曲では後藤ひとり役の青山吉能がギターを演奏しながらの弾き語りを披露することもあります。

 

実は結束バンドのフルアルバムは現状これ1枚ですが、劇場版の楽曲を収録したミニアルバムがリリースされているほか、フルサイズのワンマンライブ「結束バンドLIVE -恒星-」は通常の声優ユニットと同様に映像化もされているのですが、配信サイトでは楽曲のみの音源も用意されています。

 

これらを聴いての感想としては、特に喜多郁代役の長谷川育美の抜群の歌の巧さに感心します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結束バンドの人気の高さから「THE FIRST TAKE」にも登場しましたが、何というか詞の世界観を歌に乗せるのが特に上手いなと感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギターと孤独と蒼い惑星」は作詞を担当した歌手ZAQがCrosSingでセルフカバー版を公開していますので聴き比べると面白いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

単純な歌の技術でいえば当然専業歌手のZAQに分があるのですが、世界観の作り方は個人的に長谷川育美版のほうが自然に感じられました。

 

 

と、ここまで書いてきましたが、私自身は先にASIAN KUNG-FU GENERATIONを殆ど聴かないと書いた通り、J-Rockはあまり守備範囲ではないのです。楽曲として特に好みのタイプかと言われると、そうでもありません。

 

ただ、このご時世にアニメの性質があったとはいえ打ち込みに頼らない生バンドによる演奏というストレートさは、とても好ましく感じられました。正直おっさんはこの生バンドの音に弱いのです。生バンドが奏でる生の音と、想像以上の歌唱力でついつい聴かされてしまう作品に仕上がっています。

 

 

 

 

 

 

 

このアルバムを今から聴かれる方は、配信やダウンロードで提供されている「結束バンドLIVE -恒星-」と聴き比べてみるとこれも面白いと思います。ライブを聴いた後ではアルバムの音源が何となく物足りなく感じられるという、ある意味本物のバンドサウンドです。

 

  • 購入金額

    6,600円

  • 購入日

    2024年05月05日

  • 購入場所

    ノジマ オーディオスクエア

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