所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。最近の配信やサブスク中心の楽曲購入形態が浸透した状態では、あまり気にならないかも知れませんが、以前はアナログレコードやCD、DVDやカセットなど物理メディアで曲がリリースされていたため、そのひとまとまり(アルバムやシングル表裏など)を貫くカラーというのが大切でした。収められた曲はそれぞれ良い楽曲ながら、ジャンルとしてのとりとめがないため、印象が薄くなってしまった作品をご紹介します。
GYARI、旧名ココシガPことココアシガレットP。その名の元となった、ココアシガレットを咥えてジャズ系楽曲を歌い、ピアノを弾く鏡音リンを中心としたストーリー性ある楽曲動画を上げる活動をしていたが、以前それと同時に作詞も手がけるヴォーカリストrinaとのユニット、Margaretでの活動をしていた時期がある。
rinaは、あの震災のことを綴った“星巡りのワルツ”
に収められた2曲の作詞をした人物で、その後その2曲を自身で歌い、それを含む楽曲をGYARIとのコンビ、Margaret名義でリリースしている。
そのMargaretの、2枚目にしてラストの作品が本作“夜ノ見ル夢”。
担当としては、ピアノGYARI、ヴォーカルrinaとクレジットされているので、前作同様GYARIがダビンクで連弾を形作り、rinaが歌う形。
一方作詞の方は曲個別のクレジットがないが、少なくとも半分の2曲はrinaの作ではない。
そのせいなのか、収められた4曲の方向性がややばらけている感じ。
出だしの「満天の想い」は(おそらく)オリジナル。ややジャズ系というかラグタイム風?な小粋なアレンジとコードヴォイシングされた明るく小粋なJ-POP。中間部のGYARIのソロは華やか。♪何気ない朝が来て、また一日始まる、平和なテレビを観ながらあくびをする、そんな穏やかな日も、魔法かけたみたいに、キラキラいい日に輝き、羽模様に、なにしてても君が浮かんで、きっとこれが恋なの♪と歌われるかわいらしい曲(注:この作品“夜ノ見ル夢”収録曲の歌詞情報はないので、歌詞はcybercatの聴き取りで、採用漢字・仮名遣いも作詞者の意図と異なる可能性がある)。
「Fly me to the moon」は言わずと知れたジャズスタンダード。元々のヘヴィな「In other words」テイストではなく、Joseph HarnellのBossa調アレンジの流れをくむ、一般的なものがベース。当然?歌唱は英語。聴き所はGYARIのソロ!かなり攻めた音も使ったジャジィなモノで、ボカロやボイロを使った企画曲?しか識らないなら、かなりド肝を抜かれるかも。
「月光ステージ」は、2009年のGYARIのニコ動殿堂入りのヒット曲
で、鏡音リンを中心とするバンドが、「月光ステージで、心のこもった音楽を奏でると、電子世界で、どんな願いでもひとつだけ叶う」ということを信じて演奏をするというバックストーリーをもつ楽曲。元曲はVOCALOID歌唱で、作詞は津軽野ユンボ。この曲は元々ボカロ曲だったものを人が歌う、ということで前作“ハジマリノヒ”路線。
ラストの表題曲「夜ノ見ル夢」はちょっとクラシカルな感じの楽曲。...もしくは、コーラス曲にありそうな、というか。ゲーム音楽にありそうな、というか...歌詞も♪感じて、美しさ、この世界の煌めき♪、♪今願う、大切な人に、愛を伝えたい、私はそこにいないけれど、わたしを忘れないでいて♪と壮大。今まで上梓されたGYARIの楽曲とは最も離れている感じの曲。
結局このCDは2016年4月のM3-2016春と、直後のTHE VOC@LOiD 超M@STER34 in ニコニコ超会議2016で頒布された後、他では頒布されることがなく、GYARIとrinaの活動終了にて、Margaretとしても続く作品はリリースされなかった。
現在のように「単曲バラ売り」というのが広く受け入れられている状態ならともかく、モノとして一つのCDに収めるにはやや印象がバラバラな曲が収められた盤。そのため曲単体の印象と比較して、ディスクとしての印象が弱い作品。
もう少しテーマ性を持っていた方が、広く受け入れられたとは思うけれど、Margaretとしての活動はこれで終了したので、その時の二人の方向性の差異がそのまま表れた作品なのかも。
そういう意味では各曲のクオリティと、盤としての評価がちぐはぐな感じがしてしまう作品です。
ディスクの装丁は前作の「手作り」という感じのものより上質なのだが....
【収録曲】
1. 満天の想い
2. Fly me to the moon
3. 月光ステージ
4. 夜ノ見ル夢
5. 満天の想い-オフボーカル-
6. Fly me to the moon-オフボーカル-
7. 月光ステージ-オフボーカル-
8. 夜ノ見ル夢-オフボーカル-
曲そのものは悪くないのだが...
4曲の曲調が違いすぎて、「作品」としてのカラーが薄い。
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購入金額
400円
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購入日
2020年11月23日
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購入場所
駿河屋
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