レビューメディア「ジグソー」

低域の強さと中~高域の広さが特徴、ビート強めの現代的な音楽にはだいたい合う多種金属混合線、NOBUNAGA Labs INSPIRE 薦枕

バッテリー劣化のため、持ち出しても使うメインDAPを、ONKYO DP-X1AからShanling M3X Limited Edition

に変更した結果、バランス接続規格が変更となり(2.5mm4極 ⇒ 4.4mm5極)、それに伴って、店頭などでイヤホンを評価するときの基準IEMであるWestone UM Pro50

に繋ぐバランスケーブルも変わるので、持ち出して使うのに「惜しくない」低価格な基準ケーブルの選定作業を先日行った。

 

2023年前半にコストパフォーマンスと明確なキャラクターで人気だった、NiceHCKの「Catシリーズ」4種(当時)の中から、結局古河電工製の銀2%含有銅線の銀メッキ加工線を導体に使った蒼猫ことBlueCatを基準ケーブルに選んだのだが、この「MMCX⇔4.4mm5極バランスケーブル」、ひょんなことでもう一種増えることになった。

 

以前CIEM(miro BLEST)

を造ったアルファ☆デシベル、CIEM製作完了後もX(Twitter)をフォローしていたところ、耳寄りな情報が。

 

新品未使用ながら、長期在庫品となっているケーブルの特価販売。このケーブルセール、10種20本を保証なし(初期不良の対応はあり)で半額以下で売るというもの。

 

その中で、「MMCX⇔4.4mm5極バランスケーブル」は3種4本あり、いずれもNOBUNAGA Labsのものだった。

 

・NOBUNAGA Labs Advance 辻が花

・NOBUNAGA Labs HYBRID 姫鶴

・NOBUNAGA Labs INSPIRE 薦枕

 

辻が花は、クライオ処理をした高純度無酸素銅の4芯ケーブル、姫鶴は銀メッキした7N OCC 4芯 + 4N純銀線 4芯を組み合わせた8芯ケーブル。薦枕(こもまくら)は金メッキした4N純銀線を中心に、4N純銀線、6N OCCの3種を一つの芯線にした4芯ケーブル。

 

この中では、定価の半額以下の売価と言うことで、NiceHCK Catシリーズ並の価格まで下がった純銅の辻が花と、金メッキ銀線+純銀線+単結晶銅線を採用した金銀銅の異種混合線を採用する薦枕に興味があり、抽選販売となったこのケーブルセールに応募してみた。

 

最終的に16本に応募があり、応募総数182、特に「4.4は激戦」とのことだったので、おそらく10倍以上の倍率をかいくぐって、第一希望の薦枕の購入権を得ることが出来た(自分は、薦枕の購入権を得たならば第二希望の辻が花の抽選には不参加で良い、としたので、選出は薦枕のみ)。

「薦枕(こもまくら)」って一発で読めたヒト、おる?
薦枕(こもまくら)」って一発で読めたヒト、おる?

 

定価19,800円、購入価9,800円。50.5%引き!
定価19,800円、購入価9,800円。50.5%引き!

 

薦枕は、NOBUNAGA LabsNOBUNAGA Labs INSPIREシリーズに属するケーブルで、「線材の材質・太さ・本数を独自に組み合わせ開発された3種混合の新導体を採用」したもの。MMCXコネクタタイプでは、3.5mmシングルエンドプラグの埴舂(うえつき)と2.5mm4極バランスプラグの篠波(ささなみ)、そしてこの4.4mm5極プラグの薦枕がラインアップされている(ぜんぶ名前、読めんがなw)。

金メッキ線材が混じっているからか、黄色っぽい色合い
金メッキ線材が混じっているからか、黄色っぽい色合い

 

金具の精度はCatシリーズとは雲泥の差
金具の精度はCatシリーズとは雲泥の差

 

薦枕は、7線の4N純銀・金メッキ線を3本、3線の4N純銀線を2本、おなじく3線の6N OCCを2本、計33線7本を1芯にした4芯編みのケーブル(ちなみにこの上に各線材の本数を調整して29線にしたものを8芯編みにしたNOBUNAGA Labs INSPIRE NEO 薦枕 麗(こもまくら うらら)という上位版がある)。

 

MMCXタイプのIEM/イヤホン類は、Westone UM Pro50以外にも複数あり、薦枕のクラス・価格などを考えれば、JVCのCLASS-Sシリーズ等

やCIEM

に組み合わせるのも一案かと思ったが、今回は比較的直近に比較試聴している評価環境、Shanling M3X Limited Edition⇒評価ケーブル⇒Westone UM Pro50で評価してみた。

 

比較対象は、2023年下期以降の持ち出しポタオデ環境の標準ケーブルとした蒼猫ことBlueCatと、薦枕が金(メッキ)を含む異種混合線を採用しているので、同じく金を含む多種金属混合ケーブルとして、銀メッキ亜鉛銅合金線+銀メッキ金銅合金線のSilverCat(こっちは金銀銅+亜鉛だな)。

 

いつもの曲を評価してみた。

 

まず、高品質録音のハイレゾ音源(PCM24bit/96kHz)、吉田賢一ピアノトリオのアルバム“STARDUST”

から「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」。まず「標準ケーブル」のBlueCatは、キレが良く、シンバルの広がりや、リムショットの立ちが強い。ベースは追えるもののさほどに深くはなく、アタック優勢。ピアノも明確で、メロディが明確。SilverCatにすると、シンバルのアタック部分は充分に「通る」ものの広がりはやや抑えられ、ピアノが左手の和音も含めて主張する。下は充分にあるのだが、若干まるめの音で、BlueCatのようなアタックはなくなる。しかしミディアムテンポのトリオ構成のジャズには合っている。ベースソロの下の充実感も充分。薦枕は同じ異種混合線なので、SilverCat調になるかと思ったが全然違う。1芯に3線2本のOCCが効いているのか低音がガッツリある。中域はSilverCatをさらにグレードアップさせたような濃密さ。高域はBlueCatほど主張せず、SilverCat並。つまり、中域~低域をより濃く、硬くしたSilverCatのような塩梅。低音の安定感がイイナ。

 

同じく高音質ハイレゾ録音曲(PCM24bit/96kHz)、宇多田ヒカルの「First Love」は“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”から。

BlueCatは、開放感とギターの響き、他を食い過ぎないまでも芯があるベース、そして切なく歌うヒカルの声が透明感があって良い。ヒカルの声がもう少し湿度感があって「主役」となるのは、SilverCat。グッと重心が下がりつつも、まるめの主張しすぎない音で鳴るベースが下を支え、グルーヴィ。ラストの残響たっぷりのタム廻しも力強い。ただ、シンバルの広がりや、金属感の強いキラキラした音などは少し抑えめで、全部の音が近い感じ。薦枕はさらに下が力強い。シンセベースはエレキベースの減衰系の音ではない「面の鳴り」をしていてしっかりと土台はある。タム廻しもより「破裂音」が大きい。上の抜けはSilverCatと大差ないが、横の広がりは一回り大きい感じ。

 

女性声優あやちゃんこと、洲崎綾の歌うバラード、「」は彼女のバースディイベントでリリースされたファンブック“Campus”から。

BlueCatは、Aメロの上の伸びと開放感が良く、あやちゃんの声も透明感が高く非常に魅力的だが、バックが五月蠅くなるBメロ⇒サビへと進むとちょっと下が足りない。ヴォーカルにきっちりフォーカスするSilverCatは、BlueCat程の透明感はないが、あやちゃんの声はしっかりと聞こえつつもベースも、柔らかくしっかり出ていて、バランスが良い。薦枕あやちゃんの声とピアノのバッキングの「ボディ」が強い。上への伸びはさほどではないが、左右の広がりがハンパなく、右端のアコースティックギターや、左端のキラキラしたシーケンス音がしっかり聴こえるので、高域の不足感が少ない。そしてベースは硬めながらしっかりと支える。キックは、より前に出るのでグルーヴ感が増す。これは薦枕圧勝かも。

 

ソシャゲーアイドルマスターシンデレラガールズから、あやちゃんが演じた女子大生アイドル新田美波の初期持ち歌「ヴィーナスシンドローム」。

BlueCatは、新田美波の清純さと切なさが同居していてあやちゃんの表現が味わえる。ディスコティックな低音域は、量はないものの、デジタルで速いビートのアタックは捕らえているので、しっかりとビート感はある。SilverCatはヴォーカルは強く、中央やや右で鳴るフランジングしたようなハイハットの刻みもしっかりと聴こえるのだが、キックの頭が若干丸く、すこしダンスビート感は減じる。薦枕あやちゃんのヴォーカルの清純さは、BlueCatには少し譲るが、きちんと中央に大きく描き出される。そして下の充実度は一番。特にキックが強くて前進感がスゴイ。左右に駆け回るSEやブレイク時のキラキラとしたSEの広がりも大きく、楽しい。清らかなBlueCatか、ダイナミックな薦枕かという感じ。

 

同じくビート感が大切なロック調フュージョン「RADIO STAR」は、T-SQUAREのセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”から、

JINOこと日野賢二をゲストベーシストに迎えたテイクで。テクニカルで高速ユニゾンも多いこの曲は、ベーシストフィーチャリングながら、BlueCatの「速度」が好ましい。ベースソロも前半のプル中心の部分は充分グルーヴィだし、河野啓三のピアノソロの強弱の表現が素晴らしい。ぐっと重心は下がるものの、低域には量よりスピードが欲しいロック調ジャパニーズフュージョンであるこの曲と、SilverCatの相性はあまり良くない。とくにプッシュのまるめ音色が、シビアなキックとの絡みではちょっとキックに負けている感じ。ただ、ピアノの特に左手領域は非常にボディがあって良い音だが。ベースコンシャスなこの曲と薦枕の相性は極めて良い。プッシュのボディもプルの抜けも良く、両方美味しい。ソロではない部分は圧倒的にプッシュと指弾きなので、それでもバックに埋もれないのはグルーヴィ。特に、ソロ後半のラップとスラップのプッシュ、ドラムのキックが絡むリズミカルな部分はサイコー。ピアノソロはBlueCatほどは抜けないが、しっかり芯のある音で、ベース領域に負けていない。

 

同じくベースが大切な曲としては、時代をグッと遡って、ロックの古典「Hotel California」をEaglesの同名アルバムの24K蒸着盤

から起こしたFLACで。12弦ギターのアルペジオや生ギターのカッティング、シンバルレガートの広がりが美しいBlueCatは、抜けきらない声質のDon Henleyのヴォーカルはよく聴こえるが、ベースがアタックがくっきり出て、硬い。ちょっと「オールディーズ」という感じではない。SilverCatはギターの響きの美しさとまるめ音色ながら下をしっかりと埋めるベースでしっかり70年代を演出する。Donの声も、BlueCat程ではないがしっかりと聴こえる。また、左右の端まで広げられたギロやティンバレスの音も広さを表現している。薦枕は下の量感は文句ない。しっかりと下がありながら、ギターの響きも通り、見通しが良い。Donのヴォーカルもベースにしっかり乗りつつ、ギターに囲まれている。特に生ギターのカッティングは群を抜いて良い。ただ、ベースの音質はBlueCat程ではないものの、クリアで「速く」、70年代的ユルさではなく、80~90年代風高音質。音質とバランスが良いのは薦枕だが、時代感も含めて描き出しているのはSilverCat

 

オーケストラ楽曲としては、ゲーム「艦これ」こと艦隊これくしょんの初期の戦闘テーマ曲「鉄底海峡の死闘」を、交響アクティブNEETsによるフルオーケストラアレンジで、アルバム“艦隊フィルハーモニー交響楽団”から。

音が「立って」攻撃力が高いBlueCatは、戦闘場面のBGMとしては勇壮感が強く悪くないが、下は弱く、やや腰高。SilverCatは下も上も出ていて、より面で押してくる感じ。下のスピード感はさほどにないのだが、この楽曲の低域は、弦楽・管楽の低音組が中心で、アタックが速いのはティンパニ位なので、充分下の押し出し感がある。それを上回るのが薦枕。下も上も出ているのはSilverCat同様なのだが、弦楽低音組の弓を速く弾いた時のザリっと感やティンパニのアタックも強く、さらにどっしり感が強い。その割に中域の広さは随一で、スネアのロールや弦楽中域組の広がりが大きく、多点攻撃?と言う感じ。

 

サブスク配信音源で多い高ビットレート(269kbps)のmp3は、先日行われたMIKU EXPO 2023のヴァーチャルステージで、シンベやアップライト、エレキベースと弾き分けて場を盛り上げていた、やまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。

BlueCatは、ラウドでベース突っ込み気味のこの曲で、上手く過剰な低音をいなしていて、ひかるちゃんのヴォーカルやピアノを浮き出させている。ソロなどベースの魅せ場は高音弦を使うことが多いので、不足感は少ない。バックが入る前の、イントロのひかるちゃんの独唱部分では味が濃くてイイナ、という感じだったSilverCatは、ラウドなバックが入ってくると、低音のスピードが足りない。そのくせ量はあるので、キレが悪いのがより目立ってしまう。最後に薦枕。ハイ、優勝。低音の圧、スラップのキレ、グリスのヴォリューム感、ひかるちゃんの声の立ち、群を抜いて良い。

 

イメージとしては、SilverCatを現代的に、よりゴージャスにした感じ。高域はメチャクチャ通るわけでも伸びるわけでもないが、中~高域の左右の広さが広く、見通しが良い。そして低音はガッツリ&スピード感↑で、現代的な音多め楽曲には最適だし、結構守備範囲が広い。

ラウドで音多めの現代楽曲もしっかりとスピード感を持って描き出す
ラウドで音多めの現代楽曲もしっかりとスピード感を持って描き出す

 

さらに4芯なので軽く、金具精度も良いのでスライダーもスムーズで取り回しが良い。耳掛け加工はされていないが、柔らかいので耳に掛けてもフィットする。逆に耳掛け型でないイヤホンにも使えるので、良い面もある。

重さは4芯でもあり軽く、25g少々
重さは4芯でもあり軽く、25g少々

 

低音の強さと中~高域の広さ、そしてヴォーカルの明瞭さを備えた品。さすがCatシリーズとは価格帯が違うだけのことはあるという感じ。こいつは、家でのじっくりリスニング用に使おうと思います。

 

【NLI-KMR仕様】

・ケーブル:4N純銀・金メッキ+4N純銀+6N OCC 4芯

・ケーブル長:120cm

・イヤーフック:ワイヤー無し

・ケーブルスライダー:スライダー有り

・プラグ:4.4mm5極ストレート型プラグ(NLP-PRO-TP4.4/5-S)※ショートシェル仕様

・イヤホン側プラグ:MMCXコネクタ (NLP-MMCX-DIY)

・インピーダンス:0.3Ω以下

・保証:3ヶ月

更新: 2023/12/01
高音

高域の「量」はないが、特に左右の空間が広く、開けた感じがある

高域は、強い低域や、主張する中域に比べるとやや地味だが、中高域を中心に左右に非常に広いので、閉塞感は全くない。

更新: 2023/11/23
中域

ヴォーカルがしっかりと主張する

ヴォーカルは前に来るが、後ろが薄いわけでは決してなく、左右にも広いので、広がりは大きい。

更新: 2023/12/01
低音

スピード感と「量」とを両立している

クリアでガツンと来る低域。しっかりと量があり、揺るがない。

更新: 2023/11/23
扱いやすさ

ごつさはなく、スライダーも軽快

耳掛け部分の加工がないのを、加点と取るか減点と取るかは使い方次第だが、ケーブルはクセがなくて柔らかく、非常に扱いやすい。

  • 購入金額

    9,800円

  • 購入日

    2023年11月18日

  • 購入場所

    アルファ☆デシベル

13人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2023/12/01

    私もsasanamiを持っていますが,Nobunagaの中では使いやすい汎用ケーブルの代表だと思っています.変な個性がなくて,柔らかくて,扱いやすい,優等生です.
  • cybercatさん

    2023/12/01

    多種金属混合線なので,もっとクセがあるか,と思っていたのですが,クセがなくてワイドレンジで,使いやすいケーブルですね.

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