レビューメディア「ジグソー」

銀含有量が多そうなわりには、高音が“ギンギン”しておらず、各楽器の輪郭が立って聴きやすい、銀メッキ-銀・銅合金8芯ケーブル、NiceHCK BlueCat

DAPの変更によるバランス接続端子変更(2.5mm4極⇒4.4mm5極)に伴う、ポタオデ用の新持ち出し用低価格基準ケーブル(=持ち出しに勇気がいらないようにさほど高額ではなく、外出先でイヤホンを評価する際に「基準」となりうる、クセが強すぎないケーブル)選定のため、2023年前半に安価で評判の良かったNiceHCKのリケーブル「Catシリーズ」を聴きまくる...の第3弾。

 

今まで、低価格な方から評価の高い、米国製亜鉛銅合金油浸ケーブル使用のBlackCat

正統派の銅オンリー線=ドイツ製高純度純銅ケーブル使用のRubyCat

と検証してきたが、続いてはBlueCat

やに比べれば高いが、やはりケースなしのビニール袋入り
BlackCatRubyCatに比べれば高いが、やはり廉価線、ケースなしのビニール袋入り

 

このBlueCatから8芯編みになる。線材は「2% シルバーメッキ-銀・銅合金(2% silver plated silver-copper alloy conductor)」。この2%というのは、銀・銅合金の銀の含有率だと思う。Aliの商品ページには「Material:Japan silver plated Furukawa copper」との記載もあるので、きっと古河電工の銀・銅合金線、FWUHD(Furukawa Wire Ultra High Drawability)の2%Ag線に銀メッキしたもの。一般的な銀含有銅合金というのは1%程度のものが多いとのことなので、銀多めと言える。外観的には銀と青の被覆をもつ8芯線。編みは密だが硬くはなく、ケーブル全体としては4芯線のBlackCatRubyCatよりしなやかまである。

NiceHCKにしては、金物系のデザインはシンプルで、品が良い
NiceHCKにしては、金物系のデザインはシンプルで、品が良い

 

重さは8芯なのにさほど重くなく、39.5g。

4芯のに比べれば重いが、太め線4芯でステンレス金物のより軽い
4芯のRubyCatに比べれば重いが、太め線4芯でステンレス金物のBlackCatより軽い

 

この高濃度銀含有線にさらに銀メッキをしたケーブル、どんな音なのだろうか。今回の「Catシリーズ」試聴環境であるDAP=Shanling M3X Limited Edition

とイヤホン=Westone UM Pro50

の組み合わせで評価してみた(DAPのセッティングは、ゲイン=Low、DACモード=Turbo(DUAL DAC)、EQ=スルー)。

 

まずいつもの最初の評価曲、ハイレゾ録音(PCM24bit/96kHz)の「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」を、吉田賢一ピアノトリオのアルバム“STARDUST”から。

これ、ソロ以外の部分ではRubyCatとの差は大きくない。銅線vs銀メッキ線、しかも銀含有合金なので、イメージ的には低域はRubyCatで、高域はBlueCatかと思ったが、そこまで単純ではない。ただベースソロの部分はBlueCatの方がくっきりとした輪郭。よりベースが浮き出してくるような感じ。これは低音が↑というよりは、ソロの部分で他楽器が引いて、ソロ楽器のアタック部分などがマスクされず明確度が上がった印象。積極的にメロディを聴かせるBlackCatとは違った方向性だが、BlueCatのメロディの「立て方」は悪くない。

 

もう一つの超高音質ハイレゾ音源、宇多田ヒカルの“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”(PCM24bit/96kHz)

から名曲「First Love」。楽器の音域的なものなのか、こちらはRubyCatとは結構違う。この曲打ち込みのベースが結構な音量で入っているが、低域が出ないとグルーヴィさが足りないし、出すぎると塗り壁的低域となって他領域を侵食するのだが、RubyCatはどちらかというと後者寄りで、ちょっとベースが居座る感じ。対してBlueCatは存在感はあるものの、もっと芯が出て、ヒカルの震える声に寄り添い、下支えする。BlueCatの方が単調でなくエモーショナル。音色傾向は異なるものの、ヒカルのヴォーカルやベースの存在感は近いBlackCatとの比較ではBlueCatの方がより世界が広く開放的。

 

同じ女声バラードをもう一曲。女性声優あやちゃんこと洲崎綾のメモリアルファンブック“Campus”

付属CDから「」。同じバラードと言ってもこちらは、ピアノ、生ギター、ストリングス、ドラムスとベース以外にエレキギターやキラキラしたシンセ音が入っていて音数が多い。この曲の場合、Aメロの静かな部分は銀の効果か透明感を増すBlueCatの方がいいのだが、サビになってガッと盛り上がってくると、高域のきらめきをやや上げて主張するBlueCatよりも、音が増えてもベースが陰らず、ストリングスの厚さで面で押してくるRubyCatのほうが好ましい。ただあやちゃんの声を中心に聴くことにすると、BlackCatのヴォーカルフォーカスの音造りの方が....

 

音飽和系の打ち込みダンス曲は、アイドルマスターシンデレラガールズの女子大生アイドル新田美波(CVあやちゃん)の初期持ち歌「ヴィーナスシンドローム」。

キックがガンガン攻めてきて、ビート感が強い割にあやちゃんの歌もなんとか埋もれずに聴こえるRubyCatに対して、より高域寄りのBlueCatは意外にもラウドなサビになってもあやちゃんのヴォーカルが縁取りされた感じで埋もれない。低域はキックのアタックも当然強いのだが、その裏で同時発音になっているシンベもきちんと聴こえ、むしろビート感は強い。ギターソロは思ったほどには違いがないが、そのあとのブレイク時のキラキラとしたサウンドエフェクトが、より広く飛び散りドラマチック。BlackCatあやちゃんのヴォーカルは埋もれないものの、フォーカスが強すぎて他の音、特に左右に飛び回るSE系の音やストリングス系の広がる音が地味なので、これはBlueCatがかなりいいな。

 

同じく低域↑の曲ながら、もっと「キレ」が必要なジャパニーズフュージョンは、T-SQUAREの「RADIO STAR」を、ゲストベーシストにJINOこと日野賢二を迎えたセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”から。

こちらも、低域が出つつもBlackCatのような強調感がないRubyCatも悪くはなかったが、BlueCatは低域をさほどに損なわずに、高域のアタック成分が乗ってくるようで、各音符のメリハリがつき、テクニカルなインストソングに合う。ピアノソロの部分もベースのほかに坂東慧クンのフットワークによってキレのあるキックが下を支える中、リリカルなピアノが美しく聴こえて好印象。

 

ピラミッド型音像の古典ロック、Eaglesの「Hotel California」は、同名アルバム(24K蒸着盤)から。

70年代録音のこの曲、印象的かつ有名なギターのプレイで、そちらに注目(注耳?)しがちだが、大き目音量で入る故Randy Meisnerのベースラインが実はかなりキモ。BlackCatは、ベースラインは追えるものの、アタック側がより強くやや腰高。RubyCatはこのベースがしっかりと腰を据えていて、抜けきらない感じも含めて「70年代してる」。一方、BlueCatは特にバッキングのギターの見通しが良くなって、左右に散らされたティンバレスやタムの破裂音もより迫り、それでいてベースラインがないがしろにされているか、というとそんなことはなく高低のバランスは結構いい。ただ、これが70年代の曲の音か、というとちょっとクリアすぎるきらいもある。12弦ギターのシャランとかき鳴らした感じなどはすごく良いのだが、全体としてはクッキリ・ハッキリしすぎて雰囲気が出ない。

 

オーケストラ曲としては激しめの戦闘シーンでのBGM、艦これBGMのフルオーケストラ演奏は、交響アクティブNEETsの“艦隊フィルハーモニー交響楽団”

から「鉄底海峡の死闘」。これは低域の絶対質量としてはRubyCatに譲るも、BlueCatの音の「立ち」の良さが光る。とくに中間部の音数が少なくなって、和笛のような音色のピッコロや、空間を渡るトライアングルの響きなどは、BlueCatの方が色があってとても良い。ティンパニなどの下の音域の迫力を出している領域も、そのアタック部分はBlueCat>RubyCatなので、不足なく聴こえるし。一方聴感上の攻撃力は高いBlackCatだが、中音域の一番聴こえる部分の主張が強いからで、上と下の伸びが足りず、こういったワイドレンジ曲ではやや苦しい。

 

配信でよく使われる高ビットレート(269kbps)のmp3は、YOASOBIのサポートベーシストで知名度急上昇中のやまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。

BlackCatは、エネルギー感が強く、ベースのパンチやヴォーカルの芯もあって結構いいバランス。「ベーシストひかるちゃん」と「ヴォーカリストひかるちゃん」が両立している。RubyCatは芯のあるキックと存在感あるベース域で、ベースプレイは堪能できるのだが、ひかるちゃんのヴォーカルはラウドな曲に埋もれがち。これらに対してBlueCatは音の粒立ちが良いので、ベースの「頑張っているところ」はきちんと前に出つつも、もう少し高域が伸びて、ひかるちゃんのヴォーカルも前に出る。あとブレイク部分のピアノがきれいだな。

 

このBlueCat、購入価は4,000円少々、現在4,500円くらい。Amazonでは取り扱いがないが、AliExpressでは定価2万円超。ちなみにこの「AliExpressの定価」って当てにならず、いつもRubyCatより安く売られているBlackCatは18,000円位なのに、RubyCatの方は定価1万円少々。そのRubyCatの方はAliExpressの表示価格は6,000円くらいだけど、常に半額以下になるクーポンが表示されている、ということで現在でも販売価格順は、BlackCatRubyCatBlueCatという順番。

 

ただ一番高いとは言っても大きな差ではなく、銀含有線に銀メッキした銀優勢配合のケーブルなのに、8芯化が効いているのか低音もある程度あって、上もギンギンにならず、ベースがドンっと構えていて欲しい曲や、上が抜けすぎない方が雰囲気が出るヒストリカルな曲以外は、適用範囲が広いケーブル。

 

このケーブルは現代音楽に対しては汎用性も高いので、持っていても損がないと思います。

 

【仕様】

線材:古河電工日本製銀メッキ銅線(銀2%含有)

プラグ素材:アルミ

スプリッター素材:アルミ

ケーブル長:約1.2m

更新: 2023/11/29
高音

過剰でない奥ゆかしさ

この価格帯の銀メッキ線としてはギンギン(銀銀?)しておらず、耳刺さり成分は少ない。

 

反対に、低音もっこりイヤホンとの組み合わせなどで、銀らしい「高域の煌めきを足そう」と考えて使うつもりなら物足りない。

更新: 2023/11/11
中域

クッキリ、しっかり、各パートが立つ

とにかく各楽器やパートの描き出しが明確。定位的な分離というよりは、各楽器の音に「ふちどり」をした感じ。特に前に出るパートに顕著。

更新: 2023/11/14
低音

低域の量そのものは普通。ただベースのアタックは立つので不足感はあまりない

量ではなく音質で存在感を示す感じ。銀の含有量が多めの銅合金線にさらに銀メッキというスペックから想像するより低音はある。

 

ただその表現方法?のため、「合わない」ジャンル/低域音質がある。

更新: 2023/11/14
扱いやすさ

やや密な8芯なので、しなやかではあるものの曲げるとき抵抗感はある

...とはいっても硬いわけではないので、急角度に曲げて束ねるなどしなければ、十分扱いやすい範疇。

  • 購入金額

    4,085円

  • 購入日

    2023年06月13日

  • 購入場所

    NICEHCK Official Store (AliExpress)

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