レビューメディア「ジグソー」

リリースされない理由はあるということ

あのビートルズの正真正銘の新曲がリリースされるということで、12インチシングルレコードを入手してみました。後で叩き売られるかもとは思ったのですが、それを待って入手困難というのもちょっと困りますので…。

 

と、若干冷めた反応となっているのは、曲に対する期待値が低かったからです。特に後期になってからのビートルズはきちんとレコーディングされた曲は何らかの形でリリースしていて、未発表のまま放置されていたということは曲が完成にほど遠かったか、思うような出来にならずにボツになったか、どちらかでしかないからです。

 

ただ、曲の背景を知ってちょっと興味が出たのです。この曲がジョン・レノンによって書かれデモ・トラックとして録音されたのは、ビートルズ解散から随分後の1970年代後半で、この曲の存在を知ったポール・マッカートニーがリンゴ・スターや当時存命だったジョージ・ハリスンと共に完成させてビートルズ名義で発表するという構想から生まれたものだというのです。

 

ただ、ジョンが自宅でラフに録音したデモテープがあるだけで、このテープにはジョンが弾いていたピアノがかなりうるさく入っていて、ジョンの声を綺麗に取り出すのが不可能だったそうです。一応ジョージのギター・トラックなども多少は録音されていましたが、その時点で制作を諦めることになったのだとか。

 

しかし時代が変わり、最新のAIを活用することでジョンのヴォーカルを抽出することに成功したため、新たにポールの演奏やコーラス、リンゴのドラムを今年になって収録し、ジョージが残したギターを活用しつつ、ポールがさらにギターを付け足すという形でようやく完成したとのことです。プロデュースやアレンジは、ビートルズの「アンソロジー」シリーズの制作で腕を振るったE.L.Oのジェフ・リンに加え、ビートルズのプロデューサーとして著名なジョージ・マーティンの実の息子であるジャイルズ・マーティンが担当しています。また、実はこの曲はジョンのデモ版が海賊盤として出回ったのですが、そこにあったBメロがカットされているなど、本来のものとは異なる形になってしまっているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はろくに調べずに買ったので気付かなかったのですが、カップリング曲にはビートルズのメジャー・デビュー曲である「Love Me Do」の最新ミックスが収録されていました。つまりこの1枚でビートルズの始まりと終わりを収録するという意図でしょう。ポール・マッカートニーが「この曲がビートルズ最後の新曲」と明言していますので、これ以上に未発掘曲などは無いということではないかと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

海外盤としては珍しく、レコードを保護するスリーブと歌詞カードが分かれています。

 

 

 

 

 

 

 

「Now And Then」が収録されるA面はAppleレコードのレーベルデザインが使われています。

 

 

 

 

 

 

 

B面側はPARLOPHONEの当時のデザインなのでしょうか。この辺りは詳しくないのでよくわかりません…。

更新: 2023/11/08
総評

貴重な音源なのは確かだが、ビートルズを名乗るに値するか

実はこの曲は発売の時点でYouTubeにMVとオーディオが公開され、楽曲を聴くだけであればそれで十分なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、私はレコードを予約していましたので、敢えてそれを待ってから聴こうということで、公開直後にはこれは視ないようにしていました。

 

レコードは12インチ45rpmで、かなり溝が広く取られたオーディオ的に豪華な仕様です。

 

 

 

 

 

 

 

レコードの回転を止めて写真を撮ると、かなりはっきり溝が写るほどです。

 

 

 

 

 

 

 

決して高音質というわけではありませんが、この溝の幅がもたらす余裕は音にしっかりと表れているように感じます。密度がしっかり詰まっている印象を受けます。

 

一方で楽曲としてはどうなのかというと…。

 

あくまで私個人の感想でしかありませんが、まあ普通の曲だな、と。アルバムの中に1曲入っていて不自然というほど低い水準の曲ではありませんが、仮にごく普通にリリースされていればシングルカットはされなかっただろうと思います。

 

実はこの曲に対する世間の評判はかなり両極端で、ビートルズの新曲ということで手放しで絶賛する人もいれば、この程度の水準の曲をビートルズを名乗って出して金稼ぎに使うなという辛辣な意見もみられます。

 

確かに私もこれがビートルズ名義の新曲でなければ、シングルレコード1枚に3千円超えの金は出せなかったでしょう。ビートルズという存在の大きさは確かにあります。しかしファンからすればどのような形であっても新曲が出れば楽しみになるし、盲目的に支持したいという気持ちもわかります。

 

 

ただ発表に至らなかった曲というのは、前述の通り何らかの理由があって未発表のままであるわけです。特にジョンはこの曲を書いた後、妻ヨーコとのアルバム「ダブル・ファンタジー」を存命中に制作(発売は死後)していますし、残されていた制作途中の楽曲もアルバム「ミルク・アンド・ハニー」として世に送り出されていますが、この曲はそのどちらにも収録されていなかったわけで、ジョン自身があまり完成形に持っていく意思がなかった可能性が高い楽曲です。ましてビートルズの再結集で使うことを想定していたとも考えられません。そう考えるとこの曲を世に出すことはジョンにとって良かったのか、ちょっと考えさせられます。

 

 

  • 購入金額

    3,390円

  • 購入日

    2023年11月07日

  • 購入場所

    タワーレコード

13人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • タコシーさん

    2023/11/09

    「Now And Then」という言葉は昔聞いた感じがしたのですが、
    カーペンターズのアルバム名でした 持ってはいないのですが。
    昨日の朝日新聞にビートルズの曲の記事が載っていました
    昔、聴いた曲なら懐かしいと思うけど、掘り出した曲だと
    微妙ですね。まだまだ出てくると思いますよ。

    NOW AND THEN  時々 という意味なんですね 初めて知りました
    今、そしてそれから...位に感じてました...ww
  • jive9821さん

    2023/11/09

    > タコシー さん

    私も真っ先に思い浮かんだのはカーペンターズのアルバムでした。

    ビートルズの方は、本来以前の音源掘り起こし企画「アンソロジー」シリーズの一環で発見されたものの、当時の技術ではヴォーカルの抽出が困難で音源化が断念されていたもので、この楽曲が最後になるとポールが明言しています。これ以上は掘り起こすネタも残っていないそうです。

    かなり無理のある音源化ですが、恐らくポールは自身が現役のミュージシャンである内に、ビートルズに何らかのケリをつけたかったのではないかという気がします。

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