レビューメディア「ジグソー」

商品データベースとしての価値はある

以前TDKのカセットテープだけを特集したムック本を紹介したことがあります。

 

 

 

 

 

 

今回はメーカーを限定せずに「カセットテープ完全アルバム」と銘打った本が発売されました。発売元は今でもオーディオ専門誌「月刊Stereo」を発売している音楽之友社ということで、そこそこマニアでも納得出来る程度の内容を期待して予約購入しました。

 

 

 

 

 

 

 

以前気になるもの登録した時に少し触れたのですが、表紙写真のThat's(太陽誘電)SUONOの記録時間ですが、小さい写真だと「64」分に見えていましたが、現物を見ると「54」分でした。54分は国内のラインナップにもきちんと存在していたようです。私は見たことがありませんが…。

 

 

 

 

 

 

裏表紙はTEAC W-1200の広告です。この製品は2023年時点で唯一の単品オーディオ向けカセットデッキとなっています。もっとも、DOLBY NR用ICの供給が停止され、DOLBY NR対応製品とすることが出来ず、再生時のみDOLBY BNRをエミュレートした独自ノイズリダクションを利用できるようにしたそうです。

 

ちなみに以前オーディオ評論家の福田氏が仰っていましたが、この製品のDECK 2側は案外良質だそうです。前世代のW-890R mkIIよりは明らかに基本性能が高く、十分使える音が出てくれるとのことでした。とはいえ、氏はフルメンテナンス済みのaiwa XK-S9000という名機を愛用しているわけですが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルバム」と銘打つだけあって、各製品の発売年やバリエーション、価格が表にまとめられているほか、パッケージの表面写真も掲載されています。

 

ただ、カセットのパッケージが面白いのは実は裏面なのです。メーカーによって差はありますが、少なくともバイアス、EQ値、周波数特性グラフは殆どの製品で掲載されていて、TDKなどはMOL(最大出力レベル)やS/N比も掲載されていたはずです。パッケージ写真が裏表揃っていれば資料としての価値が飛躍的に高まっただけに、この辺りは少々残念です。

更新: 2023/11/27
総評

開発者インタビュー等はあるが掘り下げは浅い

本の後半には前述のTEAC W-1200の開発者インタビューから始まり、エポックメイキングな製品の開発ストーリーや、個性派製品について独自に掘り下げる記事が掲載されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カセットテープに初めて金属素材(亜鉛ダイキャスト)を採用したTDK MA-Rや、セラミックハーフを採用したSONYのMetal Master / Super Metal Master、G.ジウジアーロ氏の手による独自の球面型デザインハーフが話題を呼んだThat's SUONO、高水準の技術を惜しみなく投入した結果COCOM規制により戦略物資等該当品に指定されてしまったmaxell Metal Vertex等が当時の関係者インタビュー付きで取り上げられています。

 

ただ、あまり細かく裏を取って書いているわけではないようで、所々首をかしげるような記述があります。特にMetal Vertexが「最大残留磁束密度が高すぎて規制を受けた」と説明されている辺りは明らかに間違いでしょう。当時(1989年)maxellはあまり数値データは公表していませんでしたが、この文中で3,400Gaussであると記載されています。しかし同時期のメタルテープではこれ以上の値は当たり前のように見られていました。この時点ではSONY Metal Master(1986年発売)の3,600Gaussが業界トップであったはずですし、DENONは標準クラスのMDで3,500Gaussだったと記憶しています。Metal Vertexは恐らくベースフィルムやバックコート(カセットテープでバックコートを施した製品は他に無かった)を含めた総合的な構造で規制されていたはずです。

 

更にその後にはTDK ADのようなシリーズを取り上げたり個性派製品を幾つか取り上げていますが、最後の方は関係者のインタビュー等も無く、恐らく執筆者が思い入れがある製品を適当にチョイスしたという感じの構成です。

 

カセットテープの全盛期は私が小学生の時代であり、中学生になって各社のフラッグシップを数本ずつ何とか買えたという程度で、ここに掲載されている製品でも売っているのは見かけたけど買う金がなかったというものも結構あります。当時のNationalのお店では世界初(というか唯一?)の真空蒸着カセットテープであるNationalオングロームシリーズをズラリと並べて売っていたりしましたが、あの手の個人商店ではほぼ定価売りで当時の私の財布では到底買えるものではありませんでした。現在手元に残っている初代オングロームDUは、その店が旧パッケージを処分価格で売ってくれて何とか確保したものです。メタルのMA-DUなどは買えないまま消えてしまいました。

 

ページを眺めていると色々と当時の思い出が蘇ってきて懐かしく思うのですが、かつては各社ともカセットテープのカタログを用意していて、そこに細かい数値データも記載されていて読むのが楽しみでした。せめて入手可能なものだけでもそのようなデータも掲載してくれれば、資料的価値が大きく高まったと思うだけに、「完全」と銘打った割には不完全燃焼感が漂ってしまいます。

  • 購入金額

    2,420円

  • 購入日

    2023年11月26日

  • 購入場所

    楽天市場

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