先日入手した1BAのハンドメイドイヤホンARAYA +DNA1。
接続端子が3種(MMCX、2pin 0.78mm、Pentaconn ear)から選べる以外も、カラーがバイカラーも含めて事実上無限に選べる(左右の色を変えるのはもちろん、ハウジングがピンクでステムが黄色といったグラデ、グレーでも「濃いグレー」や「薄いグレー」の指定も可能、オーダー色も調合してくれるみたいなので、推しのキャラのイメージカラー指定なども可)など、何かと選択できるオプションが多いイヤホンだったが、イヤピースが選べるのも一つの特徴だった。「選べる」というのも、自分に合ったサイズのイヤピを添付してもらう...だけでなく、そもそもイヤピの種類も選べる。
自分が購入した時には、
・1. Fiio HS18(S,M,L)
・2. Yinyoo TRI 角笛(Clarion)(S,M,L)
・3. Divinus Velvet(S,MS,M,ML,L)
・4. 日本ディックス コレイル(COREIR)(S,MS,M,L)
の4つの選択肢があり、この中から2種(各1サイズ)を選択して添付できた。
Fiio HS18は使ったことがないイヤピだったが、製品画像を見ると、先がとがったフジツボ型?のイヤピで、自分の耳の穴と合わなさそう=自分の耳は、もともと細めの径が奥に行くほどさらに細くなる耳道の形状で、さらに耳の中が湿っておらず、穴の向きが下向き開口...というもので、それとは相性が良くなさそう(落ちやすそう/緩くなりやすそう)だったので避け、結局残りの3種から、Divinus Velvetと日本ディックス COREIRを選択したのだが、それは実はYinyoo TRI 角笛(Clarion)はすでに持っていたからでもある。
このClarion、安価な割にはフィッティングもよく、音色も特徴があったので、昨年後半ころから注目されているイヤピ。
1ペアで2,000円を越えるイヤピもある中、高機能イヤピが3ペアで1,000円以下は安い。
かなり「軸」の部分も柔らかく装着しやすいが、「傘」の部分はさらに柔らかくフィッティングが良い。そして開口部の径は結構大きく、中高音域がストレートに来そうな造り。一番特徴的なのが横から見た形状で、一般的な球状やドーム型ではなく玉ねぎの頭をちょん切ったような、開口部に向かって上が絞られているような形になっている。そのため、イヤホンのステムの先から比較的長く筒状の構造が続くことになる。その筒構造が、ラッパの朝顔部分のように(あれほど極端ではないが)、先-鼓膜側-に向かって「角笛」のように開いていく断面形状になっているのが名前の由来。
横から見ると玉ねぎの頭を切ったような形で、穴は出口に向かって開いていて径はかなり大きい
その先が開いていく筒形状で音声を拡散させる一方、開口部内周には反射溝が設けられており、これで拡散した音を集約し、音量の低下を防ぐというしくみになっている(らしい:メーカー談)。
つまりJVCのSpiral Dot
の様に、音導管の途中に凹凸をつけ、音の反射も利用して音のチューニングをしようというイヤピース。
この特徴あるイヤピ、純正として設定されていたARAYA +DNA1に装着すると、どういう音に変化するのだろうか。
ARAYA +DNA1にClarionをつけて、ケーブルは「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス仕様の基準ケーブル」=onsoのiect_03を選択、現在のメインDAP=Shanling M3X Limited Edition
の4.4mmバランスアウト直結で評価曲を試聴した(ゲイン=Low、DACモード=Turbo(DUAL DAC)、EQ=スルー)。M3X LTD ⇒ onso iect_03 ⇒ ARAYA +DNA1というこの組み合わせでは、ARAYA +DNA1の添付イヤピとして選んだ日本ディックス COREIRとDivinus Velvetが比較対照になる(製作誤差が大きい、自作?のGizapyは除くことにする)。
まず高音質ハイレゾファイル、吉田賢一ピアノトリオの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」をアルバム“STARDUST”から。
Clarionは、高音はCOREIRとVelvetの中間で、シンバルのアタックと広がりとが両方が大きく、一番ドラムスが「大きい」。一方低音は、COREIRよりも「こない」印象。この曲ウッベなので、指板にあたる音などの高音ノイズがベースを目立たせる場合もあるのだが、そこはCOREIRにゆずり、ベースの弦の音自体の量感はVelvetにゆずりと、この曲のベース領域の目立つ部分が取られてしまった感じ。ただ音そのものは悪いわけではなく、ベースソロの部分等では、ボディのある刺激が少ない音で落ち着くのだが。
もう一曲の良録音ハイレゾ曲、宇多田ヒカルの「First Love」を“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”(PCM24bit/96kHz)から。
これは楽曲バランスの問題か、全体として硬めで、高音に「寄っている」方から、COREIR ⇒ Velvet ⇒ Clarionの印象。Clarionが2nd verseからのベースが一番大きく入ってくる。ただ、硬い音ではなく、柔らかめなので、主旋律を邪魔しない。ヒカルの声はVelvetと同様程度に目立つが、湿っていたVelvetに対して、Clarionはやや湿度感が低く、「泣いてないな」という感じ。この曲は湿度感があるVelvetが切なくて至高。ただ、ストリングスはClarionが一番美しい感じがする。
同じ女声バラードながら、もう少し音数が多く「間」が少ない「空」は、女性声優洲崎綾(あやちゃん)のメモリアルファンブック“Campus”から。
この曲、Aメロの静かな部分と、サビのバックが盛り上がった部分での、あやちゃんのヴォーカルのバランスが難しいのだが、COREIRはやや硬質だが、Aメロもサビもどちらもあやちゃんの声が主役で「通る」。Velvetは、優しさ、やわらかさは増すのだが、Aメロのパランスは良いものの、サビではバックに埋もれつつあるという感じ。このClarionはどちらかと言えばVelvet寄りで、サビではヴォーカルがやや「引いた」感じになってしまう。ただ、中域の左右の広さが3つの中では一番あるので、音色では埋もれそうな部分を、左右にスペース空けてギリ埋もれなくしているというか...
おなじあやちゃんが歌う曲ながら、ビート感が強い音飽和系のダンス曲は「ヴィーナスシンドローム」(ゲーム、アイドルマスターシンデレラガールズより)。
ARAYA +DNA1が、キョーレツ過ぎるソースの低音をやや整理していなしてくれているので、あやちゃんのヴォーカルが、ラウドな伴奏をかき分けて前に出ると言う基本線は共通ながら、この曲はイヤピそれぞれ良いところが違う。COREIRは、なんと言ってもスピード感。一番ビート感が強く、リズムコンシャスなダンス曲でいながら、途中のブレイクで入るたっぷりと残響を含んだピアノも澄んでいて美しい。Velvetは若干丸味を帯びるが、左右に駆け回るキラキラした音のシーケンスパータンなどは最もよく聴こえ、一番音に動きがある。Clarionは左右の広さが一番広く、各楽器の間隔が開いているので、分離よく聴こえる。そして、ストリングスがメチャゴージャス...というか、Clarion、結構他のイヤピとは「出る」音と「引く」音が違っていて、左右を駆け回るSE音などは沈んでしまうのだが、ハイハットは一番強めに出て、細かいビート感がある。COREIRが四つ打ちのキックのビート感なのに対して、Clarionはハイハットの16ビート。そしてストリングスがゴージャス(本項2回目)。
テクニカルなジャパニーズフュージョン、老舗バンドT-SQUAREの過去の名曲をセルフカバーした作品集“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”から、
ゲストプレイヤーとして、ベースに加えてラップもこなすJINOこと日野賢二を迎えた「RADIO STAR」。この曲、イヤピによって美味しい音がすべて違うんですけど??特にドラムス。スピードの速いCOREIRはドラムスの坂東慧のキックのキレがスゴイ。アタックの後の踏み込みで音を止めているのか離しているのかがよくわかり、それによる前進力と、JINOのスラップベースとの絡みでリズムが立つ。Velvetは響きが良い。時にバスタムのドゥン!という破裂音と、それに続く響きが脳内に鳴り響くので、ダイナミクスが大きい。Clarionは例によってハイハットの刻みが鋭い。手業の細かさが味わえる。Clarionでの他楽器の音色は、ギターの音が他のイヤピより明瞭。この曲左chに大きめのミュートギター、右chに控えめにワウギターが入っているのだが、左右の音場の広さも含めて、一番ワウギターが明瞭。
時代を遡って、Eaglesの「Hotel California」は24K蒸着盤の同名アルバムから。
このピラミッド型音場で、上が抜けきっていない70年代音構成のロックと、中高域に一番の華があるARAYA +DNA1の相性はあまり良くなく、若干ゆるめで穏やかになるVelvetでもまだ「硬く」、COREIRに至ってはリズムカチカチで、美しさを増すギターの響きを差し引いても収支はマイナスという感じなのだが、Clarionは面白い。左右の広さと、COREIRほどキツくはないのに音が立つギター~ハイハット領域で、10数本ダビングされたというギターの分離が良い。曲を味わう感じではないが、分析的に聴くにはいい感じ。そして意外なことに、3つのイヤピの中ではDon Henleyの抜けきらない声が一番明瞭に聞こえる。
音数が多く、上から下まで様々な楽器がひしめき、広再生帯域、高追随性、高分離能が求められる1BAにはキツいオーケストラ楽曲は、交響アクティブNEETsの艦これの生オーケストラアレンジ集“艦隊フィルハーモニー交響楽団”の中から、
戦闘場面で使われたという激しくドラマチックな「鉄底海峡の死闘」。COREIRは金管とスネアやパーカッションの攻撃力が高く、迫力はあるが、低音域が十分な量感までにヴォリュームを上げると、若干耳にイタめ。Velvetはイタさ成分は減じるので、より音量を上げられる...というか、上げないと同等の攻撃力はない。ティンパニのアタック音も多少削れるので、基音側が目立つようになるのだが、そうなるとこのイヤホン、低域の「絶対量」は多くはないので...Clarionは明確に音傾向が違って、金管よりも弦の高音部隊が目立つ。あと金物系のパーカッションが響き、イタくないのに、攻撃力は高め。低音自体はいずれのイヤピで「どっしりと」とまでは行かないので、一番バランスが良いのはClarionかも。
配信に多い高ビットレートmp3(269kbps)は、YOASOBIの不動のサポートベーシストとして、海外でも知名度が上がってきたやまもとひかるちゃんの2nd配信シングル「NOISE」。
やや線の細いひかるちゃんのヴォーカルと、ベースプレイヤーのソロ楽曲らしく?指弾き、スラップ、ジャズ調ランニングベース、豪快なグリス、複数弦弾きなど、いろいろなテクニックがラウドな楽曲に詰め込まれている曲。1BAのARAYA +DNA1が低音ぶっ込み系ではないのもあって、低域、特にスラップベースのプッシュや、ランニングベースの部分の安定感というのは最低限で、「充分」までは行かない。その中ではClarionのバランスと分離の良さが圧倒的に良い。スラップのプルが耳に痛いほどには来ないが、充分アタック感がある音色である一方、プッシュや指弾き部分も確実に追える。また左右に広いので、左端のワウギター、左のオルガン、中央やや右のストリングス系のシンセ音、右側のピアノと明確に分離し、ひかるちゃんのヴォーカルも明確。これに比べると音が「立って」さらに攻撃力は高いものの、個々の音がラウドな楽曲に流されるCOREIRや、低域がベースよりもキックの方がむしろ目立っているVelvetは一歩譲る。
今回も前回以上のイヤピのつけ外しをしたわけだが、脱着に関してはCOREIR≧Clarion>>Velvetと言う感じ。とにかくVelvetのステムとの接合部が柔らかすぎて/かつ/ARAYA +DNA1のステム径に対して若干穴の径が小さくて、すごく入れづらい。COREIRとClarionは僅差で、ともにステム接合部が「しっかりしているのに」「伸縮性はあって」入れやすい。COREIRの方が金属コアが入っている分、力がかけやすいので、わずかに入れやすい。ただClarionも入れづらさは全くない。
耳への固定に関しては、湿っておらず耳穴が細い自分の耳環境ではCOREIR>Clarion>Velvet。COREIRの材質は、ちょっとぺタッとした肌触りで食いつきが良く、さらに金属コアでステム延長効果があり、耳奥まで届いてしっかり留まる。次はシリコンが柔らかいClarion。ペタッとした感じはなく、3種の中では一番サラサラなのだけれど、弾力があって薄い「傘」の部分が耳道によく密着するのと、球状ではなく、玉ねぎのように少し先が尖っていて「長い」こと、ARAYA +DNA1のステムの奥まで差し込めてしまうVelvetに対して、Clarionはわずかに「キノコの軸」のようにステム接合部が飛び出していることもあって、若干ながらステム延長効果もある。Velvetが一番奥まで差し込める=イヤピとハウジングが近くてステムを耳奥まで差し込みづらい...という感じ。きちんと一定の位置に「当てる」のが難しいので、測定誤差が大きいが、各イヤピ装着状態でARAYA +DNA1本体を挟んだ「厚み」をデジタルノギスで計測した結果も、COREIR>Clarion>Velvetの順に「厚い」ので、多分その順に耳奥まで届いているのだろう。
実際計測してみてもVelvetが一番「薄い」=装着時に耳道に入る部分が「短い」
こういう形で、イヤピ先端までの「厚み」をハウジングを含む形で3回計測、平均した
形状的には三者三様。Clarionは先が玉ねぎのように尖っていて、キノコのような軸もある
一番穴が大きく、先に向かって開く角笛形状がClarionの中高域の独特の味に繋がるのか?
音に関しては三者三様で、いずれも得意な部分が違うのだけれど、ARAYA +DNA1との相性と、イヤホンの得意な部分を殺さないという点では、COREIRかClarion(ただ、宇多田ヒカルの「First Love」とARAYA +DNA1×Velvetの至高の組み合わせは捨てがたいが)。
硬くスピード感溢れ、高音が綺麗に開けるが、時に音の攻撃性が強すぎるCOREIRか、左右の広さによる分離の良さと、ストリングスやアコースティックギター、ハイハットなどに独特の色があるClarionか。 どっちも捨てがたいが、コスパは圧倒的にClarion。ここが一番のアピールポイントかも??
【仕様】
適合ステム径:4.5mm~5.5mm
素材:シリコン
サイズ:外径11.3mm、高さ9.0mm、ステム装着部内径4.6mm
数量:3ペア
硬くない伸びる高域は心地良い
COREIRほどキラキラと主張しているわけではないが、素直に上が開けている。
中高域の音の説得力が強い
特に
・ストリングス
・アコースティックギター
・ハイハットシンバル
・スネア
・ピアノ(右手領域)
などは浮き立つように音にフォーカスが合う。
低域は他の領域、とくに中高域にマスクされる
ただし、キックのアタックや、ベースの倍音はあるので、低域パートが感じ取れないわけではない。
中域が広く、各パートの分離が良い
上から下まで「四角く」広いわけではないが、中域(厳密に言うと中高域)の左右の広さ故に、各パートの分離の良さを演出する。
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購入金額
799円
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購入日
2023年04月02日
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購入場所
Yinyoo-JP(Amazon)
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