レビューメディア「ジグソー」

マシンリズムが逆に切ない曲。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。エモーショナルな曲、というのは一般に、感情豊かに演奏されたオケに載せて歌われることが多いですが、淡々とした機械のリズムに、声によって陰影をつけていった方が、より訴えかける曲調である場合もあります。淡々としたリズムながら、ちょっと懐かしい切なさを持った曲をご紹介します。

 

美勇伝。2023年現在も「モーニング娘。'23」として活動しているモーニング娘。(以降、娘。)の最初期の頃のメンバー(結成後3年後の第4期追加メンバー)=石川梨華を中心とするグループ。四半世紀も「アイドルブランド」として続いている娘。だが、当然新陳代謝は発生し、娘。卒業後に歌で芸能界に残るメンバーには卒業後ユニットが用意された場合もあり(娘。活動と並行して始めて、徐々に比重を移すパターンもあり)、これもその一つ。

 

比較的カワイイ路線のキャラが多かった初期の娘。に、ひと味違ったキレイめお姉さんで入ってきた石川だが(実際に4期生では最年長で、むしろ1期2期メンバーに近い年齢)、5年活動し卒業した。

 

石川は、娘。活動中もカントリー娘。の助っ人や、タンポポROMANSなど組み替えユニットに参加したが、美勇伝は完全に娘。卒業後のユニット。方向性としては、カワイイ系のカントリー娘。タンポポのタイプではなく、セクシー路線だったROMANSに若干近く、やや大人っぽい感じのアプローチ。他のメンバーは、三好絵梨香と岡田唯で、美勇伝の活動以外ではほとんど歌の活動はないので、完全に石川中心のグループだった。石川は、娘。時代は、周りに歌上手いメンツが多かった時なので、歌ではほぼ埋没していたが、当時の一般アイドルクラスとしてはソコソコなのと、声自体は悪くないので、結構聴ける曲が多い。

 

本作“ひとりじめ”は、美勇伝として4枚目のシングル。彼女たちが、一番熱心に活動した2005年リリースのシングルの一つで、「一番好きなシングル」に挙げる人も多い作品。

 

ひとりじめ」。切ない感じの「つんく節」濃厚な出だしだが、リズムインすると結構硬めの打ち込みの合成音色が強いリズムと、生楽器系音色(アコースティックギターやピアノ、ストリングス)の対比が面白い曲になる。メロディラインは昭和歌謡っぽいが、リズムアレンジと音色が新しいという、平成中期によく見られた曲調。これは、ゲーム音楽も多く手がけているこの曲のアレンジャー、平田祥一郎のカラーか(昨年娘。'22が歌った「Swing Swing Paradise」もつんく-平田コンビだが、電子リズム系の使い方が似ている)。美勇伝は石川中心のグループだったので、一番オイシイ部分は彼女が歌っているのだが、いい感じに艶っぽく切なく聴かせている。♪一日だけ私に/あなたの全て/この瞳に下さい/ひとりじめ♪

 

終わらない夜と夢」は、卒業シーズンに流れる、もしくは、24時間テレビなど感動系TVのラストに流れそうな、ドラマチック系楽曲。補正もあるのかもしれないが、この3人の中なら、やっぱり石川が一番歌が上手いな。娘。では、どちらかと言えば歌は得手ではない方で、娘。のシングル“ザ☆ピ〜ス!”でセンターを務めたときには、それまでのセンターが歌唱力が高いメンツだったのもあり、「顔でセンターを獲った」とも言われたが、この曲を聴くと、当時のアイドルとしての最低ラインはクリアしているのが判る。♪終わらない夢/きっと/これからだね/始まったばかりだし♪というあたりが感動系なのかなぁ...

 

ひとりじめ(Instrunmental)」は、タイトル曲の単なるヴォーカルレスなのだが、切ない感じのコード進行がオケに動きを与えていて、ドラマの劇伴のような感じで、単体の鑑賞に堪える。「終わらない夜と夢」の方は、アレンジャーの鈴木Daichi秀行がプログラマー兼ギタリストとしてクレジットされているが、この曲の平田はアレンジとプログラムだけなので、ピアノやギターのように生っぽい音も打ち込みだ(というか、この歌無しヴァージョンだと、生ギターのアルペジオが打ち込みなのが歴然としている)。しかし、ロマンチックかつ、マシンリズムの縦ノリの楽曲というのは結構悪くない。

 

打ち込みによるリズムながら、その淡々とした感じが逆に切なさを煽る、そんな仕上がりの楽曲でした。

以前は、アイドル系のCDにはこういうフォトカードが入っているの多かったなー...
以前は、アイドル系のCDにはこういうフォトカードが入っているの多かったなー...

 

【収録曲】

1. ひとりじめ

2. 終わらない夜と夢

3. ひとりじめ(Instrunmental)

 

「ひとりじめ」

更新: 2023/07/05
必聴度

温度感低めながら、切ないオケと、すがるような歌い方が切ない

石川の歌い方が、かなり色っぽく、センチな感じが良い。

  • 購入金額

    1,050円

  • 購入日

    2005年頃

  • 購入場所

10人がこのレビューをCOOLしました!

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