昨日6月24日、そして本日6月25日は、東京国際フォーラムにて「OTOTEN 2023」が開催されていました。
私自身ここ数年は毎年必ず参加してきまして、今年は聴きたい機材も例年以上に多数あったため、2日間両日足を運びました。
その中でも今回特に注目していたのは、レコード交換針でお馴染みのNAGAOKAブースです。ここでは同社製の交換針を実際に組み立てて、それを持ち帰れるという企画があったのです。詳しくはPHILEWEBの紹介記事をご覧下さい。
ただ、このPHILEWEBの記事には若干誤りがあり、組み立てるのはカートリッジ本体のNT-500Mではなく、その交換針であるJN-500であるということにご注意ください。
このレコード針製作ワークショップは24日に3回、25日に2回と計5回開催され、1回につき3人ずつが参加できるというものでした。私は幸い24日の最初の回で参加することが出来ました。
今回の企画でこのJN-500が選ばれた理由は、現行のMPシリーズと比較して交換針の構造がよりシンプルであるということです。プラスチック製のカバーにダンパーゴムを押し込み、そこにカンチレバーを通すだけという、文字で書いたら極めてシンプルな工程で完成します。まあ、素人がそう簡単にはできないからこそ、ワークショップとして開催されるわけですが。
実は私は3日ほど前に指を怪我してしまい、右手親指の爪が上1/3ほど割れた状態であり、指にあまり力をかけることが出来ず、ダンパーゴムをピンセットできちんと掴むことが出来なかったため、この部分は結局普段組み立てを担当されている社員の方に代行していただきました。
カンチレバーは当然何処まで差し込むか規定の長さはあるのですが、今回は特にそれを指定せず、製作者の個性を出すことを意図していたようです。結果的に私を含めた3人はそれぞれ違った長さで製作したことになり、それが音の個性にきちんと反映されていたようです。
出来上がった針は、用意されていたNT-500Mに装着されていた製品版のJN-500と交換して実際に音を確認しています。当初用意されていた「Hotel California / Eagles」を再生したのですが、盤のコンディションがあまり良くなくのノイズまみれとなってしまったため、急遽私が持っていた「Bohemian Rhapsody / Queen」の12インチシングルで音を出すことに。
私は比較的高価なカートリッジのカンチレバーを意識して、少し長めに設定したのですが、こうするとやや地味な音になるようでした。最後に再生された女性参加者の方が作成された針は逆にやや短めになっていて、エネルギー感が強く快活な音でとても好印象でした。この僅かな仕上げの差だけでハッキリと違った傾向の音になるという奥深さを感じると共に、一定の品質で交換針を生産するということの難しさを実感できる良企画だと改めて感じました。
レコード針の音の違いを意識するきっかけとなり得る企画
というわけで、ここで持ち帰ってきたJN-500を紹介します。
完成した針は予め用意されていたケースや型番ラベルを使って、製品版と全く同じ状態に仕上げられました。昔TRIO製のプレイヤーの標準添付カートリッジの交換針を買った記憶が蘇るデザインです。
一見すると製品版と見分けは付かないかも知れませんが、製品版のJN-500はもう少しカンチレバーは短めです。
さて、本来ならば交換針を組み立て、カートリッジに装着して音出しできた時点で企画は終わっているのですが、恐らくほとんどの参加者はカートリッジのNT-500Mを所有しておらず、また10年以上も前に生産完了となっているため、カートリッジ本体を入手することが困難であり、折角組み立てた針を使うことが出来ないという問題がありました。
そこで急遽営業責任者の方のご厚意で、山形のナガオカ本社で保管されていたデッドストックのNT-500Mを、後日参加者全員に送るという形になりました。どうやらヘッドシェルセットのパッケージを人数分確保されたようです。つまり、針を付け替えればそのまま自分で組み立てた針を楽しめるよう配慮していただいたらしいのです。
純粋に普段親しんでいるレコード針の構造を理解したくて参加したのですが、思わぬ形のプレゼントをいただけることになりとても有難く、感謝しております。
なお、当日の様子はナガオカ公式twitterのツィートにリンクしておきます。
最後になりますが、この場を借りて、お世話になった株式会社ナガオカの皆様に厚く御礼申し上げます。
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購入金額
0円
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購入日
2023年06月24日
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購入場所
OTOTEN NAGAOKAブース
タコシーさん
2023/06/26
仕事でやってる人は(やってた人は)大変だったと思います
あの小さな部分にダンパーとレコード針を入れて、抜けない様に
するわけで、もう大変。 レコード針の中にはダンパーを金属片で
包んで、シース?に収めているのもあるし、神業ですよ
どうやって、どういう治具で完成させているのか見たいものです。
harmankardonさん
2023/06/26
jive9821さん
2023/06/26
今回は山形で実際に製品の製造を担当されている女性工員の方が
付いて作業を行ったのですが、最もシンプルな構造の針を選んだ
こともあり、本当にダンパーを差し込み、その中にカンチレバー
を通すだけという構造でした。プロはものの数秒で簡単に装着して
いましたね。使ったのはピンセットと顕微鏡、アルコールだけです。
ただ、ダンパーを綺麗に通すだけでも結構な精度を要求されますし、
これを毎日何本もこなすと考えると気が遠くなりそうな作業でした。
jive9821さん
2023/06/26
より高価な製品であれば違うのかも知れませんが、JN-500は目視
で確認しているだけのようでした。
ただ、この平行度は意外とあっさり合格ラインが出ます。私も
カンチレバーの長さを決めた後、少しピンセットで微調整したら
あっさりOKが出ましたので…。
実際音を出しても左右のバランス等のおかしいところはありません
でしたので、熟練者であれば意外と簡単なのかも知れません。