「芋づる式洲崎綾 Part10」。Webラジオのキャラクターの面白さと、天使の歌声のギャップ萌えですっかりファンになった洲崎綾(あやちゃん/ぺっちゃん/あやっぺ)関連レビュー。12月といえばあやちゃんのバースデイがあるということで、それに向けてこの1年で増えてきた彼女の参加した作品や楽曲や書籍、イベントグッズなど、幅広く芋づる式におよそ一ヶ月にわたりご紹介するシリーズレビュー、ついに10回目と二桁突入かw
そして、本の蟲。
実は結構読書家で、学生時代を中心に相当数乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中から、新旧織り交ぜて、トピックをご紹介していきます。
昨年「芋づる式洲崎綾 Part9」は「別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本」
というラジオモンスター洲崎綾(ラジオモンスター=ラジオパーソナリティ、もしくはラジオのゲストとして輝く人)の一面をも掘り下げた読本で〆たが、「Part10」の開幕は、「役者(女性声優)」としてのあやちゃんを掘り下げた本。
業界に「残る」新人声優かどうかは、(当然オーディションがあるので実力がないとダメだが)初期に主役級を務めて名を売ったあと、「次の作品」あたりで存在感と方向性が決まる作品に出会えるか否かで決まる気がする。
初期の主役級キャスティングのアニメやゲームの売れ方ってとても大切で、あまりにも超大ヒットだったり、超ロングランになったりすると、イメージがその初期の役で固定されてしまったり、物理的に他の役をやる暇がなかったりして逆にあまり良くないが、コケてもそれはそれでせっかくの初主演!という一生に一度のプレミアを棒に振ることになる。その初主演、もしくは主演級キャラで衆目を詰め、そしてそこからあまり日を開けず、2~3作目に自分にとっての当たり役が来るか否かが運命の分かれ目。
つまり、この2~3作目に当たり役が来ると、その声優は「自分の場所を確立する」という感じかな。
あやちゃんのキャリアは2010年あたりに始まるが、そのあたりでは役がつくのが年に数回、そもそも役名がある役もあまりない...という感じだった。
それが2013年初頭に、初の主役「たまこまーけっと」の北白川たまこ
を射止め、同じ年に2022年末現在でも続いている長命ゲームコンテンツ、「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS」の色気溢れる女子大生アイドル新田美波
にキャスティングされる。ここで安定した歌唱力を魅せたあやちゃんは、他にもいくつか「歌う」役を得ることになる。そして同年後半にキャスティングされたのが、あやちゃんの他はそうそうたるメンツで固められた、熱血ナンセンスギャグ学園バトルアニメ、「キルラキル」の満艦飾マコ。
この満艦飾マコが超絶当たり役かつドハマり役で、さらにこの作品であやちゃんは多くは前世紀から活動するベテラン声優に囲まれて、「古き良き日本アニメ」の現場の洗礼を受けることになる。最近の分業かつデジタル技術を駆使した効率的かつスマートに制作された作品も、アニメを「商業活動」と考えた場合はそれはそれで必要だが、全員で一発でせーの、で録って、終わった後にはみんなで飲みに行って、役者の演技によって触発され脚本をダイナミックに修正していく...という「古き良き日本アニメ」を経験できた最後の世代?になったのは、あやちゃんの芸風に大きな影響を与えていると思う。
その「キルラキル」の原作およびシリーズ構成と脚本を手がけた中島かずきが、自分が脚本を手がける劇団☆新感線とアニメ制作会社TRIGGERを中心に、関係があった様々な役者や声優と対談して、演技論などを訊いていく...という対談が2019~2020年にかけて「月刊ニュータイプ」に掲載された。それをまとめた本が「中島かずきと役者人(やくしゃびと)」。
ここで対談したのは、あやちゃんの他に
・早乙女太一&早乙女友貴(太一とは中島が原作の劇団☆新感線「修羅天魔~髑髏城の七人」でのつながり。友貴とは同じく劇団☆新感線の「蒼の乱」でのつながり←「蒼の乱」には太一も出演)
・新谷真弓(TRIGGER制作「キルラキル」蛇崩乃音)
・松山ケンイチ(劇団☆新感線の「蒼の乱」や「修羅天魔~髑髏城の七人」)
・堺雅人(TRIGGER制作「プロメア」クレイ・フォーサイト)
・朴璐美(TRIGGER制作「キルラキル」鬼龍院羅暁)
・梶裕貴(日米で公開された中島脚本の「ニンジャバットマン」のロビン)
・宮野真守(劇団☆新感線の「修羅天魔~髑髏城の七人」の捨之介)
・藤原さくら(中島作品の大ファン。「プロメア」や「天元突破グレンラガン」に感銘を受ける)
・粟根まこと(劇団☆新感線所属なので、中島とは多くの作品で関わっている)
・上川隆也(中島が脚本を書いた劇場版「天元突破グレンラガン」アンチ・スパイラル)
・福士蒼汰(中島が脚本を書いた劇場版「仮面ライダーフォーゼ」の仮面ライダーフォーゼ(如月弦太朗 役))
と多彩なメンツ。彼らと中島が一緒に関わった作品を起点に、各役者の芸への向き合い方、役作りなどを深掘りして訊いていくという企画。
ここであやちゃんとは、TRIGGER制作で中島の脚本だった「キルラキル」を振り返りつつ、あやちゃんのオーディション時代の話や芸風について語っていく。
昭和の時代から活動を続ける大御所三木眞一郎と組んだ番宣ラジオ「キルラキルラジオ」
は、きちんと役名ついたレギュラー作品がほぼ2作目というあやちゃんが、果敢に三木に食らいつき、ラジオの構成や、先輩声優への距離感、甘え方と敬意との上手いバランスなどを学んでいき、後の「ラジオモンスター」の素地を造った番組だが、そこで中島から「ラジオの収録後は、ライフを削られてゲッソリしている三木さん」という発言がw。もともとラジオでも三木があやちゃんの面倒をみつつ、教育的指導?を行い、ラジオのノウハウを学ばせていったのがわかり、三木がエネルギー溢れるあやちゃんの制御に四苦八苦しつつも、見込みがある後輩声優を育てようとしている状態が感じ取れたが、それが傍証された感じ。
あとその「キルラキル」の満艦飾マコのオーディション秘話が明かされる。声優として活動しはじめてから3年目、その年の頭に北白川たまこという主役を射止めたが、その後もオーディションに振られ続けたあやちゃんは、独自の解釈で台詞を少し変えてオーディションを受けたようだ。
「マコ、大ピンチ!このままじゃ、パンツ丸見えだよ!」という台詞を、「パパパパパンツ丸見えだよ」と変えて演じたあやちゃんのテープ(リアルオーディションではなく、テープオーディションだったらしい)を聴いて、「マコはこの『パパパ』に賭けてみよう」と中島は感じたらしい。
台本を勝手に変更する、というのは脚本家次第では気分を害する行為だったりもするけれど、新人ならではの怖いもの知らずに加えて、当時あやちゃんが“一個の人”をしっかりつくって演じなくちゃいけないと考えていたらしく、そういうセリフにしたということのようだ。つまり「私が演じるならこういう人になります」と言うのを提示するため、パンツが見える状況をメチャクチャ想像したらw「たぶんパが一個じゃ足りないんじゃないか」と思って足したようだ。
これにより、「新人枠は一つだけ」で、あとは中島旧知もしくは実績のある中堅~ベテラン声優で固めた「キルラキル」への参加が叶い、あやちゃんの芸風とネツトワークづくりに大きな影響を与えたのだから、幸運だったと言えるだろう(「キルラキル」の他の声優陣は、主演が歳は比較的若いがあやちゃんより10年近くキャリアが長い小清水亜美、小清水の演ずる主役の相方のセーラー服wがベテラン関俊彦、主人公のライバルを柚姉こと柚木涼香、その部下の四天王を稲田徹、檜山修之、吉野裕行、新谷真弓、主役を助ける組織のメンツに三木や小西克幸、ラスボスともいうべきライバルの母親を朴璐美、その部下を田村ゆかりが演じたなどとメチャクチャ豪華。このメンツに囲まれて、先達の芸と芸に対する姿勢を学べたのはとてつもなく大きなことだったかと....)。
その他、最近新たに創られた「キルラキル」のゲームで、久しぶりにマコを演じて、当時よりも歳を経て声が低くなっているため、「似せる」には高めのトーンで演じるべきだが、自分の中のナチュラルなマコはその「発声」ではなく、その差異に悩んだ話や、将来の仕事として声優と先生とで悩んだが、その芯にあるのは同じ気持ちであることなど、あやちゃんの芸への向き合い方がわかる話も。
あやちゃんの演技を深く識るにはためになり、読むと「なるほど」となるインタビュー本です。
【目次】
早乙女太一/早乙女友貴
新谷真弓
松山ケンイチ
堺雅人
朴璐美
梶裕貴
宮野真守
洲崎綾
藤原さくら
粟根まこと
上川隆也
福士蒼汰
注釈
あとがき
われわれが接しているのは普通「最終形」だが、それを創り上げる過程が見える
役者や声優がどう考えて、役に向き合っているかがわかる。
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購入金額
600円
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購入日
2021年03月08日
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購入場所
メルカリ
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