今まで3桁に達する程度のイヤフォンを購入してきましたが、左右独立のワイヤレス、すなわちTWSを買ったことは一度たりともありませんでした。ワイヤレスイヤフォン自体、過去のレビューを振り返ってみても以下の3機種だけしか所有していないと思います。
今時イヤフォンといえばTWSを思い浮かべる人の方が多いというご時世で、何故そこまでワイヤレスを使っていないのかといえば、個人的にBluetooth接続独特の劣化が苦手だからです。Bluetoothであればイヤフォンに限らず、DYNAUDIOのような高価格なスピーカーですら、どちらかというと苦手な音に感じます。しかし、最近ではZOOMの様なビデオ会議ツールも一般化してきて、単なるイヤフォンでは無くヘッドセットが必要とされる機会も増えてきました。
以前Skype for Businessのテストのために有線のヘッドセットを用意したこともありましたが、ケーブルが伸びていることがとても煩わしく感じられて、ヘッドセットはやはりワイヤレスが良いかと考えていました。
最近では比較的上位のTWSでは、リスニング時のアクティブノイズキャンセリングだけではなく、通話時の騒音軽減機能が用意されていたりと、ヘッドセット的な用途を意識した製品も増えてきています。
今までTWSを買わないまでも、注目度の高い機種であれば試聴だけはしていて、audio-technica ATH-TWX9やTechnics EAH-AZ60、KEF Mu3などいくつか(安ければ)買っても良いかと思える程度の製品は見つけていました。とはいえ、敢えて他の欲しい物を差し置いてまで買いたいというほどでもなく、結局今まで購入した機種は無かった訳です。
ただ、最近になり、今年4月に破産申請したイヤフォンメーカー「日特」の製品が各所でアウトレット販売されるようになっていて、ハイエンドイヤフォン newspring NSE1000シリーズ(発売時約16万円)なども2万円台でたたき売られるようになっていました。
その日特の別ブランドである yourspring ではTWS YS-M100を発売していましたが、こちらも最近たたき売りが出ていました。このTWSは目立った特徴はないものの、マイクが着脱式で左右どちらにでも装着可能というところに面白さがありました。これならヘッドセット的な用途に向いていそうだと思い、試しに一つ購入してみました。
発売当初は2万円台中盤という価格帯の製品でしたが、ちょっとその価格帯にしては安っぽいでしょうか。今なら前述のEAH-AZ60やSONYの大ヒットモデルWF-1000XM4と同等の価格帯ですからね…。
添付品は本体、マイク、充電ケースを除けば、マニュアル類の束(この辺りは国内メーカーらしく充実しています)とケース充電用のケーブル、イヤーピース(S/M/L各1ペア)だけです。
充電ケースを開けると本体とご対面です。マイクは外されて収納されています。なお、本来はケースに収納した時点で充電が開始されますが、出荷時点では充電端子部に絶縁シールが貼付されていますので、これを剥がした上でイヤフォンを収納すると充電が開始されます。
なお、出荷時点でケース側は8割方充電された状態となっています。特にケースに充電しなくてもイヤフォンを購入後すぐ使えるように考えられていたのでしょう。
なお、イヤフォン本体も出荷時点でそこそこ充電された状態となっていました。
イヤフォン本体はちょっとプラスチックの質感が低いのですが、その割に本体は大柄で、少々価格の割にはチープ感が漂います。まあ、今回の購入価格であれば全く問題ありませんが。
添付のマイクは左右どちらにでも取り付け可能です。イヤフォン本体の角の部分にコネクターカバーが装着されていますので、それを取り除くとマイク入力端子(3.5mm3極)が利用可能となります。
悪くは無いがBluetoothの弱点はそこそこ目立つ
YS-M100はaptXコーデックに対応していますので、今回はaptXに対応していてBluetooth接続の安定度も高い、Astell&Kern A&Futura SE100で試聴してみることにしましょう。
まず、YS-M100を左右両方ケースから取り出すと、左右のイヤフォンがまずペアリングされます。その時点で青LEDが点滅しますので、その状態でDAPやスマホからYS-M100へのペアリングを実行しましょう。
まずはいつも通り、
辺りを聴いてみました。
一応aptXに対応していますので、SBC接続のみの製品と比較するとBluetooth臭い濁りは抑えられています。とはいえ、少なくとも私の感覚では「所詮Bluetoothか」と感じる程度にはまだ濁っています。
音質傾向は妙に低域が厚ぼったいのはマイナスですが、音場は意外と広がりますし、楽器の質感は意外と悪くありません。強いて言えばやはりヴォーカルのいがらっぽさや、ハイハット/シンバルの音に常に濁りがついて回るのが感じられるのは、Bluetoothらしい弱点です。アナログソースの持ち味は思ったよりは出てくれていて、意外と基本的な素性は悪くないのかもと思わされる部分もあります。
実は日特は元々JVC/VictorブランドのOEMを主力事業としていたメーカーで、JVCブランドの製品でもこの低域の妙な厚ぼったさが感じられるものは多かったように思います。JVCというよりは日特のメーカートーンだったと思えば納得は出来ます。
今時のJ-Pop/アニソン系の音を聴いてみようということで、「stars we chase / ミア・テイラー(CV.内田秀)」も聴いてみることにします。
意外なことに、先に聴いたレコードから起こした楽曲以上に、Bluetoothの濁りがヴォーカルで強く感じられます。有線のイヤフォンではかなり澄んだ声で歌われている楽曲が、まるで風邪を引いた人が歌っているかのような濁った声に感じられてしまいます。TWSはどうしてもJ-Pop系を主に聴くユーザーが多いと思うのですが、この声で聴いていて気持ちよく聴けるのだろうかと首をかしげざるを得ませんでした。
イヤフォン本来の実力としては、低域の量と質のコントロールが上手くいっていない事以外は大きな弱点は無いと思うのですが、Bluetoothの弱点がそこに加わるとリスニングを楽しむ領域には到達しないなと感じられました。
実は事業停止前の日特のスタッフの方がeイヤホン店頭でnewspring NSE1000シリーズの試聴イベントを実施されていて、3種類のNSE1000(A/B/G、別に無線LANの規格とは関係ない)を全て聴いたのですが、残念ながら16万円に見合った音とは到底感じられず、結構厳しい評価をしてしまった記憶があります。その時に「一度きちんとしたスピーカーから出た音と、このイヤフォンの音とを比較してみた方が良い。そうすればどこが不自然かわかるはず」とコメントしたのですが、YS-M100では傾向自体は似ているものの不自然さはNSE1000シリーズよりは少ないので、辛うじて許容できる範囲には収まっていると思いました。
元の2万円台で買う価値は見いだせませんが、現在のたたき売り価格では3千円でおつりが来るレベルですから、その価格帯としては十分な実力と思います。
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購入金額
2,980円
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購入日
2022年10月23日
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購入場所
eイヤホン
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