浅野天琪(浅野てんき)ちゃん
が公式萌えキャラとなっている、中国は南寧のイヤホンメーカーTANCHJIM。
以前イヤホン試聴会で出逢い、(ぬいぐるみは別として)TANCHJIM(関連)製品として、イヤホン2種と、他メーカーとのコラボDAPを入手してきた。
DAPは、メインの音造りはベースとなったM3Xの開発元であるShanlingであり、TANCHJIMはもう一つ別のイヤホンメーカー(水月雨)とチューニング協力、という立ち位置だったので、TANCHJIMカラーがメチャクチャ濃いわけではなかったが、イヤホンには「TANCHJIMカラー」というものが感じられた。ピーキーなツンデレイヤホン「Darkside」も、TANCHJIMの地位を確固たるものにした高評価ミドルクラスイヤホン「Oxygen」をステム交換式+萌え装飾などでチューンアップした上位版「Oxygen ASANO TANCH LIMITED EDITION」も、パッと聴きは全然キャラクターが違うものの、共通するのはヴォーカルやソロ楽器など主旋律音域を上手く聴かせるイヤホンだったこと。
そんなわけで、自分にとってのTANCHJIMのイメージは、「ヴォーカル域に旨みがあるイヤホンメーカー」という感じ。
そのTANCHJIMが、比較的手に入れやすい価格帯の新しいタイプのイヤホンを(2021年)リリースしたので、手に入れてみた。
かつては、IEMタイプのイヤホンしか手がけていなかったTANCHJIMだが、2022年春には
・旧来からあるIEMタイプは、1万5千円ピッチで下から「ECHO」⇒「HANA」⇒「PRISM」の3種
・砲弾型(final Eシリーズ風の形状)は、最廉価機「Tanya」と上級機「Darling」の両極
というラインアップだが、これにもう一つ「OLA」という、どちらの系統にも属さないイヤホンがある。
形状としてはハウジングの横からステムが出るタイプで、砲弾型とはあきらかに違うが、IEM型ほどは大きくなくコンパクトな、独特な形状のハウジング。砲弾型よりは内部容積が稼げていて、6~7mmドライバーを採用する「Tanya」や「Darling」よりは大きい10mmドライバーが採用されている(詳しく言うと「Darling」は上級機らしく、6mmダイナミックドライバーとBAドライバーのハイブリッド構成だが)。
価格的には、「Tanya」に次いで安く、マイク付きタイプもあるということで、スマホでの音楽聴取のカンタンアップグレード用としての立ち位置か。
かつて同社のボトムエンドを支えていた「Darkside」とは価格帯が被るが、どう変わったのだろうか(円安が進んでいるので、ワンランク下かもしれないが)。
TANCHJIM OLAは、TANCHJIMのレギュラーイヤホンとしては、(たぶん)初の萌えパッケージ採用。ただ、天琪ちゃんの絵はココだけで、「Oxygen ASANO TANCH LIMITED EDITION」のように、本体にシルエットの刻印がないのはもちろん、カードがついているわけでも、説明書にイラストが載せられているわけではない。
天琪は「てんき」と読む。左下には日本語の説明もあって、日本ウケ重視?
TANCHJIMのパッケージは、いつもシックでセンスいいなぁ
内容物は、本体とケーブル、6種のイヤーピース、キャリングポーチと説明書・保証関係書類。
この価格帯なのにケーブルが別体で、豊富なサイズ・形状のイヤーピースがついているのは立派。
ただ、TANCHJIMの常で?短く太めのステムにつけられているイヤーピースが、cybercatの細耳には合わない。イヤーピースは大きさが6種類のようにも見えるが、形状と穴の大きさが少し異なり、小さめセット(小セット)の方は、穴が大きくて、横から見ると「上が絞られた筒状」。大きめセット(大セット)は穴が小さくて、球に近い形状。小さめセットの一番大きなモノと、大きめセットの一番小さなものは外形も近く、cybercatは耳の大きさ的には両方使える。ただ、2つの形状ともに素材はつるつるのシリコンで、先細りの形状なので、太くて短めのステムも相まって、カラ耳で細目の耳道には、押し込んでもつるっと出てきがちで、耳への据わりはどちらもあまり良くない。
ハウジングはIEM型にくべるとかなり小さく、軽い。外側(フェイスプレート)がアルミニウムで、内側が透明のプラ素材というデザイン。ダイナミックドライバーが完全に「見えている」のは面白い。
価格を考えると、高級感あるサンドブラスト加工のアルミフェイスプレート
アルミのフェイスプレートとドライバーが見える透明ボディの対比は面白い
ケーブルは、見た目は細めで「高級品」ではなさそうだが、一応2Pinで交換出来る構造にはなっている。ただ、eイヤなどの説明を見ると、メス側(ハウジング側)の造りが特殊で、サードパーティーのケーブルは使わない方が良いらしい(一見ただの、「埋め込み2Pin」タイプに見えるのだが)。まぁ実際、別売「リケーブル用ケーブル」となると、明確な効果を感じるなら数千円クラスとなるため、5000円少々のエントリークラスのイヤホンにリケーブルするかは考えどころだが。
シルバーで一見高級そうだが、太さや被覆のつくりは「それなり」
ではこのエントリークラスのイヤホン、どのような音がするのだろうか。
試聴環境は、DAPは先日からcybercatのメインDAPに昇格したShanling M3X Limited Edition。これにイヤホン付属ケーブルを使って、3.5mmアンバランスで直接続。DAP側セッティングは、ゲインはLowでDUAL DAC(DAC Turboモード)、EQはスルー。
イヤピは純正イヤピの中で、かろうじて耳の中でとどまっていてくれる「大きい方(穴が小さい方)」のセットの中で一番小さいサイズ(外径11.0mm、高さ9.5mm)を選択。
それに加えて、OLA同様に純正のイヤーピースでの据わりが悪かったTANCHJIM Darksideの時と同様、フィッティングに困ったときはこれ、「cybercat的イヤピ三傑」の最上位、「Deep Mount Earpiece」
でも評価した。
まず、小編成ジャズの至近距離で聴いているがのごとく、タッチのニュアンスまでわかる良録音のハイレゾ音源(PCM24bit/96kHz)からFLAC化した吉田賢一ピアノトリオの“STARDUST”
から、「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」。純正イヤピでは、中域のニュアンスが良い。ピアノの和音を使った主旋律とスネアのの装飾音の絡みが、ライヴ!という感じ。ただベースはちょっと物足りなく、ベースソロになって「いたの?」という感じ。ただ、弱いながらもベースの胴鳴りのような深い音もあり、こぢんまりしているが悪くはない。上はあまり主張はせず、シンバルレガートもアタックは弱め。Deep Mount Earpieceに換えると、中~中高域が立ってくる。右chから広がるライドのシズル感と、ハイハットフットクローズの切れが良い。ピアノの主旋律はグッと前に出るとともに、左手の和音も立ちが良い。ベースは聴こえるものの、ボディの胴鳴りよりも弦の音優勢で「厚み」は足りない。上はシンバル音が目立っているので、「ありそう」だが、倍音は少し物足りなく天井は低い。ベースラインが目立つようになって、ノリは良くなったが、若干シャリつき気味のシンバルに引っ張られすぎか。このミックス、小編成ジャズに時折あるドラムスが中央に来ない定位であり、シンバルが目立ちすぎるとドラムスが位置する右chに音が偏るので。
宇多田ヒカルの、幼さと成熟の危ういバランスで奇跡的に成立した名曲「First Love」は、USBメモリリリースのハイレゾ(PCM24bit/96kHz)版を“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”
から。純正イヤピは、ゆったりとしたベースに乗って、ヒカルの震える声が、囁き、歌う。ヴォーカルが近く、元々やや大きめに入るベースが中央にしっかりあるので、とてもグルーヴィ。ただストリングスの広がりや、ラスサビで盛り上げるドラムスの残響などは小さめで、部屋がかなり狭い感じ。Deep Mount Earpieceにすると、ベースがやや引っ込み、バランスが良くなる。ヒカルの声も擦過音が強くなって、かすれた感じが心情を表しているかのよう。ストリングスやドラムスの残響も聴こえるようになって部屋が広がった感じ。ただ、上がそんなに伸びている感じはしないので、空に抜けるような広さはない。これは純正より良いバランスに落ち着いた。
同じバラード系なのに、おおむね「First Love」とは逆の評価になる、女性声優あやちゃんこと洲崎綾の「空」はどうだろうか。これは、彼女のメモリアルファンブック“Campus”
付属CDより。まず純正イヤピでは、あやちゃんの声がよく通る。OLAの限界?が良い方に転がり、ベースや囲むストリングスはバックに溶け、ピアノと生ギターに囲まれて切々と歌うあやちゃんの声が中央に座る。「部屋の大きさ」は元々さほどに大きくないので、シュッとまとまっているのが聴きやすい。ただ壮大感は少なめ。Deep Mount Earpieceだと、さらに上にバランスが移るが、これによりあやちゃんの声の透明感が増し、ストリングスのつつまれ感が増す。ベースは絶対量は減っているのだが、ちょうどアタックの倍音域がヌケるようになるので、グルーヴィさもあって良い感じ。レベルがすごく高い、というわけではないがDeep Mount Earpieceを使えば、「First Love」も「空」悪くないレベルで聴かせるのは面白い。
同じあやちゃんが歌う曲だが一転して、打ち込みの音飽和系ハイスピードダンス曲である「ヴィーナスシンドローム」は、先般長い歴史に終止符を打つことが告知されたアイドルソーシャルカードゲームのアイドル初期持ち歌シングル“THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 019 新田美波”
より。この曲、もともと絶え間なく4つ打ち、時に16分音符で打ち鳴らされるバスドラと、シンセベースが大きめに入っていて、さらにサビではしなる鞭のような鋭い音でハイハットシンバルが入っていて、ヘタに上下が伸びているイヤホンだと、耳につらいことがあるのだが、OLAの中域重視...というか、高音&重低音控えめ(つか諦め?)のサウンドチューニングが良い方に働き、聴きやくなっている。純正イヤピでは、ハイハットシンバル自体ちょっと厚くなったかな?という感じの音の落ち着き方で、下もかなり控えめになるので、ヴォーカルがかなり聴きやすくなっている。Deep Mount Earpieceは、他の曲と違う傾向。密閉度が上がって、高域が漏れなくなってより上に広がって聴こえる効果よりも、密着度があがって低音が盛れる効果の方が大きく、ちょっと重心が下がる。ただ、それでも絶対量としては控えめで、ヴォーカル中心に上手くまとまっている。どちらにしても迫力やスケール感が小さくなってしまった感は否めないが。
同じく派手な音響処理と、リズムコンシャスな曲としては、日野"JINO"賢二のスラップとラップがフィーチャリングされたジャパニーズフュージョン、T-SQUAREの「RADIO STAR」を、セルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”
から。上と下までガッツリ伸びてパキッとした音造りのこの曲は、OLAの方向性とはやや合わない。純正イヤピで聴くと、EWIのメロディやピアノソロの部分は前に出る音でわかりやすいが、キモのベースが軽く、ラインは追えるがそれだけ、という感じ。シンバルも上に抜けきらず、キャストシンバルがプレスシンバルになったようなランクダウン感。Deep Mount Earpieceはそれよりはマシで、メロディ、ソロ楽器が聞こえやすい美点はそのままに、ベースはもう少しアタックが「来る」ようになるので、プレイが味わえる。ベースソロ後半で、スキャットの後ろでの低音域のプレイもなんとか存在感がある。上は天井が低いのは相変わらずだが、倍音域がもう少し充実するので、もうちょっと広くなった感じ。これはDeep Mountであれば、成立はしてるかな。
古典ロックの名曲、Eaglesの「Hotel California」は同名アルバム
より。元々録音が古く、上はさほどにはなく、ピラミッド型の下が張り出す音造りだが、OLAで聴くと、いいか悪いかは別として聴きやすい。純正イヤピで聴くと、ベースはやや優勢ではあるが、元バランスよりは控えめになり、ギター、特にエレキギターのツインリフが印象的になる。ソロもゴリッと巻き弦をピックがコスる音がリアリティがある。ヴォーカルは目立たなくはないが、ギターよりは引っ込んでいる。Deep Mount Earpieceで聴いても同じ傾向で、元バランスでは結構大きく響くベースは適度に引っ込み、多重で聴こえるギターとパーカッションがグッと前に出る。特に純正イヤピと比べると、ギターのピッキングハーモニックスやティンバレスあたりは主張が大きくなる。一方ヴォーカルは同様に思ったほど前に出ず、このOLAは女声向きかという感じ。
オーケストラ系楽曲で、再生機器に高い能力・表現力を求める「艦これ」BGMのオーケストラアレンジ“艦隊フィルハーモニー交響楽団”
に収められた戦闘テーマ交響アクティブNEETsの「鉄底海峡の死闘」は、流石にキビシイ。純正イヤピは、勇壮なブラスのライン、和笛のようなニュアンスのフルートなど主旋律周りはちゃんと奏でるが、低域をグンと支える弦楽低音部隊やティンパニのアタックは軽い。上も抜けていないので、空間を渡るパーカッションなどが後ろに行ってしまって開放感がない。Deep Mount Earpieceに換えても、大して好転せず、若干シンバルのヌケとトライアングルの立ちなどが良くなり空間が広くなることと、ティンパニはアタックが「立つ」ので、見た目の?迫力が増すこと程度。低音弦はスカスカだし、ティンパニも胴鳴りはなく腰高。この手の音楽は、このクラスでは「きちんと聴く」のはムズカシイか。
この手のイヤホンで聴く可能性が強い、配信圧縮音源のmp3楽曲(ビットレート269kbps)として、YOASOBIのサポートベーシストやまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。
ちょっと低域が限られているイヤホンにベーシストのソロ楽曲で、スラップががっつり入っている曲は分が悪いが、純正イヤピは結構いい感じにスピード感あるこの曲を描き出す。若干声質的にヴォーカル埋もれ気味になりがちのひかるちゃんの声を上手く拾い上げ、スピード感あるピアノとともに中域を充実させてパワー感がある。ベースは、ランニング部分や指弾きソロの部分は立ってこないが、スラップの特にプルの部分はガツンと聴こえて、意外にメリハリはある。一方Deep Mount Earpieceは、少し高域の華が増えて、少し閉塞感が薄まるが、ベースの存在感も弱まり、パワー感が薄れてしまう。中域もひかるちゃんの声<ピアノのバッキングという感じになってしまって、イマイチ。これは純正の圧勝。
ヴォーカルやメロディ楽器を中心に据えた音造りで好印象を持っているイヤホンメーカー、TANCHJIMのエントリークラスイヤホン、OLA。今までリリースしていた製品群とは、形状が異なり、また価格帯としても群を抜いて低く、今までなかったタイプ・商品性のイヤホン。特にマイク付きのタイプもあるということで、スマホユーザーのカジュアルアップグレードリスニングをターゲットにしたのかな、というイヤホンだったが、
◎TANCHJIM伝統の明瞭で芯のあるヴォーカル/メロディ域
◎明るめで爽やかな中高域
◎女声の魅せ方が上手く、解像度感がある
◎マイク付きでも国内正規品6,000円以下というハイコストパフォーマンス
◎(交換推奨せずとはいうものの)この価格帯で交換可能なケーブル
という優れた点も多いイヤホンだった。またマイク付きのを試してないので想像だが、この音質ならスマホやリモートアプリの通話用としても聞き取りやすい音質だと思われる。
一方 、
■高域の広さや伸びは感じられない
■低域は、きちんとあるはあるが、音圧などは今一歩
■イヤピは多数付属するが、滑りやすく(自分にとっては)フィッティングがあまり良くない
と音楽鑑賞用イヤホンとするとウイークポイントもある商品だった。
ただ、売価5,000円クラスということを考えると、いずれも充分許容範囲内の造り。
当初、TANCHJIMから天琪ちゃんのイラスト付きパッケージの手を出しやすい価格帯のイヤホンが出た、というだけで試してみたが、思いのほかできの良い、イヤホンだった。イヤピさえ交換すれば、外で使いやすいサイズ(コンパクトさ)と価格帯のイヤホンで、コスパ良好なイヤホンだった。
....そーなると、今年2022年夏、このOLAの下に追加された、同じ10mmダイナミックドライバー採用の「ZERO」にも興味が出てきたりして....
........それも天琪ちゃんパッケージだし←ソコカヨ
....どうやらお迎えしたようだ
【TANCHJIM OLA仕様】レビュー オーディオなんちゃってマニア道
ドライバーユニット:第3世代DMTダイナミックドライバー×1
ドライバーサイズ:10mm.
振動板素材:高分子グラフェン
THD+N:<0.3% @1kHz 94dB SOL
インピーダンス:16Ω±10% @1kHz
感度:126dB/Vrms @1kHz
再生周波数帯域:7Hz-45kHz
ケーブル:OCC銀メッキリッツ線+無酸素銅(OFC)リッツ線
ケーブル長:1.25m
ケーブルコネクタ:0.78mm 2Pin
入力プラグ:金メッキ無磁感銅 3.5mmステレオミニプラグ
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2022/09/19 リンク追加
超高域はないが、中高域は結構さわやか
スペック(~45kHz)ほどハイレゾ感はないが、「中域の上」の部分は結構あって、さわやか。
近くて明瞭。わかりやすい「好音質」。
ヴォーカルや、ギターソロ、スネアなど中域~中高域にピークがあるものは明瞭で近い。聴きやすくて、心地良い。
絶対量が少ない
音に芯がないというような感じではないが、量そのものが少ない。
ヴォーカルが近い
広がりという意味では少し「ハコ」そのものが小さいので、その近さをどう感じるかだが。
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購入金額
5,314円
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購入日
2021年04月22日
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購入場所
DUDO Audio Store (AliExpress)
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