所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い歴史を持つバンドには、「節目の作品」というものがあります。一番最初はもちろん、デビューアルバムですが、そのあとは大きなセールスをあげた作品、メンバーが変わった作品などが、外部的にもわかりやすい「節目の作品」です。そんな「節目の作品」に、図らずもなってしまったアルバムからの、ファーストカットシングルをご紹介します。
TOTO。特に日本において高い人気を誇っていたアメリカンロックバンド。過去のバンドではなく、1970年代から活動し、断続的な休止期間はあるものの、2022年現在でもまだ継続しているバンド....とは言っても、半世紀近い歴史を有する長寿バンドゆえのメンバーチェンジは多く、脱退、再加入などを繰り返した結果、現在では後半期のグループリーダーで、デビュー時から唯一「通し」で在籍するオリジナルメンバーである、ギタリストのSteve Lukather(Luke)と、一時期離脱していたメジャーデビュー後3人目の専任ヴォーカリストJoseph Williamsの二人を中心とするユニットとなっているようだ(特に最近、メンバーが相次いで鬼籍に入ったり、脱退したりしたので、リズム隊が総替えになっていて、今のリズムユニットメンバーは初期から考えると「なじみ」がない一方、最近のツアーには創立メンバーのひとりDavid Paichが帯同することもあったりするなど、近年特に出入りが激しいので、現在のTOTOは確固たる「バンド」というよりは、LukeがTOTO方面のジャンルの音楽をやるときに集うメンバー...という緩い感じに捕らえた方が良いのかも)。
最近は、そんなLuke中心の所帯になっている彼らだが、初期の中心はオリジナルドラマーJeff Porcaroだった。もともとTOTOが、Boz Scaggsの名作“Silk Degrees”
のレコーディングと、その後のツアーに参加したスタジオミュージシャンによって結成されたバンドで、その「核」となったのが、両方に参加したJeffだった。そして若干参加時期はズレるものの、永くバンドにかかわったSteveとMikeも含めたPorcaro兄弟の長兄としても、バンドの結束の中心だった。
そのJeffが不慮の死を遂げる前、最後に録音した作品“Kingdom of Desire”からの最初のシングルカットが、本作“Only You”。国内盤ではたった2曲のシングルだが、その後の方向性を示す曲や、いわくがある曲が収められいる。
「Only You」。TOTOはデビュー時から、メインヴォーカルを取れるメンバーが複数在籍していて、曲調によって使い分ける...という、スタジオミュージシャン集団らしいバンドだったが、この曲が収められたアルバム“Kingdom of Desire”では、バンド史上初めて「専任ヴォーカリスト」が不在になる。これにより、メインヴォーカリスト扱いがLukeとなり、このあとのTOTOは、彼の好むアメリカンロック調の曲と、彼の甘めの声に合うバラードが多くなるのだが、これは後者。壮大なバラードで、まるで彼らが音楽を手掛けたSF映画“DUNE”
の壮大さ溢れる楽曲に歌をつけたもののよう。Jeffは、名作「Africa」にも通じる、リズムパターンにタムを大胆に入れた複雑でアーシィなドラミングで曲を盛り上げる。
もう一方の「Kick Down The Walls」はいわくつきの曲。この曲、Jeffらしいハネ感あるリズムの上で、Lukeが歌うロック曲で、実はその後のTOTO路線には近いのだが、本国盤“Kingdom of Desire”初盤プレスには含まれていたのに、セカンドプレス以降はカットされた...という曲。本国初回盤に収録された曲の中では、タイトルチューンの「Kingdom of Desire」を除き、唯一自作&セルフプロデュースでなかった曲(Danny Kartchmarの作&プロデュース)だったのが、それを除くのが故人(Jeff)の遺志...という話もあった曲。ただ、遺言までして?省かなければならない曲とはとうてい思えず、歌詞内容的に死に関する部分があるので、残りのメンバーが配慮したのかな、と。ただ日本盤にはそもそも含まれない(⇒ボーナストラックとしてJimi Hendrixの「Little Wing」のライヴテイクが収められていた)ので、それが聴けるこの8cm CDは貴重。曲自体は“Kingdom of Desire”と相性が良い、ロックテイスト溢れる曲で、良曲なのだが。
両曲とも、Lukeのヴォーカルをフィーチャリングした曲で、その後の方向性を示していながら、オリジナルメンバーのJeffの最期のドラミングが聴けるという「節目の作品」。
特に、日本盤で揃えている人には、本国アルバムファーストプレスにのみ含まれていたレアトラックを聴くことができる貴重な音源です。
海外では本作は12cmMaxiで発売されたが、国内盤は8cmシングルCD
【収録曲】
1. Only You
2. Kick Down The Walls
「Kick Down The Walls」
「Kick Down The Walls」はレア
曲としては悪くなく、Jeff独特のハネ感あふれるドラミングが堪能できる。
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購入金額
800円
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購入日
1992年頃
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購入場所
jive9821さん
2022/08/17
続いたのは嬉しいものの心情としては複雑なのですが、ポーカロ家と
ルーク達との間が断絶状態となってしまったため、本来はTOTOは
完全終了だったそうです。
ただ、ルークとジョセフ・ウィリアムズが同時期にソロ作を制作し
始め、お互いの作品を行き来して制作するうちに、デイヴィッド・
ペイチが「2人が組んで活動するのであればTOTOを名乗れば良い」と
提案したことから、TOTOのツアーのサポートをしていた面々や、
ルークの人脈で集まったメンバーが現在のTOTOだそうです。
ペイチは主に体調面の都合でフル参加を断念しているようです。
まあ、正直言えばサウンド面ではかつてのTOTOとは完全に別の
バンドになってしまいましたね…。
cybercatさん
2022/08/17
そういう意味では、まず最初の「区切り」は本作が含まれる“Kingdom of Desire”、次の区切りは「バンド」というくくりが有効だった2008年の一時解散前でしょうか。
そのあとは、「バンドとしてのTOTO」というのはなくて、LukeがTOTO系の楽曲を製作する、あるいはTOTOのレガシー楽曲を演奏をするツアーをするときの、「都度都度の」メンバーと言う感じがします。