所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。アーティストの持ち歌が多くなると、ヒット曲やライヴでの〆の曲、ファン投票でトップをとる曲など、曲に「色」がついてきます。そんななか、一般的なセールス数としてはトップではないものの、ファンのみならず、その時代に思春期を過ごした人に、歌詞とともに刻まれた曲があります。そんな曲をご紹介します。
スガシカオ。ファンク系J-POPで、ジャンル的にも独特の立ち位置にいる彼だが、もう一つ彼の世界を形作るものとして、「歌詞」がある。
「作詞家スガシカオ」として、一番有名なのはSMAPの大ヒット曲「夜空ノムコウ」だが、この曲のように「あのころ」から見た「未来」に立って、♪全てが思うほど/うまくはいかないみたいだ♪と言いつつも、最後には♪夜空のむこうには/もう明日が待っている♪と希望を残して終わる曲や、今はつらくても希望をもって♪“あと一歩だけ、前に進もう”♪と勇気づけられるkokua名義の「Progress(プロフェッショナル仕事の流儀 主題歌)」のような路線とは別に、彼には、暗い、昏い、欲望や衝動を歌った歌もある。
その中で、最もどろどろとした欲望を歌ったと思われるのが、本作の表題曲「19才」。R指定にもなったPVの印象も併せて、19才という当時「成年直前」の危うさと、欲を歌ったこの曲、とても印象深い仕上がり。そのPVは、エレベーターですれ違った女性に視線を絡めた青年の妄想?カメラマンなのか趣味なのか、薄暗い部屋で、蝶の写真を撮る青年。成虫の標本、さなぎ、這い出す幼虫。その蝶のむこうに、さっきすれ違った女性が視える。女性の部屋だろうか、下着姿の彼女が横たわり、そして自らを慰め始める。それを夢中で撮る青年。いつの間にか女性の部屋に侵入していて、女性にまたがる形になって....抵抗する女性を撮り続ける青年。そして二人は躰を...最後、エレベーターから独りで出ていく青年のカットで終わるこのPVは、「ぼかしあり」の映像で、当時テレビでは放映制限がかかったらしい。これに合わせて、やや病的な歌詞が載せられる-♪唇に毒をぬって/ぼくの部屋にきたでしょう?/あなたのキスで/もう体も脳も溶けてしまいそう♪、♪クロアゲハチョウになって/誰からも愛されたい/九分九厘ないとしても/ほんの一瞬でいいの♪と、大人になり切れない世代の憧れと欲望、そして、サビ前では♪大キライな/ぼく/19才♪と自己嫌悪が歌われる。この曲は、CLAMP原作のアニメ「xxxHOLiC」のテレビ第1期のテーマソング。先行して公開された映画「劇場版xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢」の主題歌、「サナギ」に引き続きスガが担当したが、その「サナギ」=孵化する前の状態、つまり「大人になる前」がモチーフの一つになっている。曲は、スガの初期サウンドブレーン森俊之がプログラミングとキーボードでタイトな世界を創り、オノ・ヨーコや坂本龍一のレコーディングにも参加したギタリスト清水ひろたかが、粘っこいスライドギターを聴かせる(アコギはスガ自身)。そのうえでしゃがれた声で♪19才(「ジューキュサイ」と発音)♪と歌うスガが、いい。
続く「ホームにて」は一転、ミドルテンポの明るめの曲で、軽やかなギターカッティングとふわんと残響が載せられたエレピの音は、まるで昼間のホームドラマのBGMのようだが、歌が始まると♪駅のホームの上/ぼくの体/風が通り抜けていく時/春の魔法にかかってしまったみたい…/まるでこの世界が/ぼくのことを/ぼくのだらしない全部を/何もいわずに抱きしめてくれそうな夜♪とスガの世界。
「サナギ ~theme from ×××HOLiC the movie~ GOTA REMIX」は、その名の通り、映画版の「劇場版xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢」の主題歌「サナギ」のリミックス。リミックスを手掛けたのは、Soul II Soulの楽曲のプログラミングなどで名を馳せた、GOTAこと屋敷豪太。わりに原曲に忠実なミックスだが、後半が電話越しのような帯域の狭いモジュレーションがかかっていて、相変わらず昏い詞には合っているが⇒♪体のうすい粘膜を/直接ベタベタと触られるような/あなたのその無神経な指も/ゾクゾクして嫌いじゃなかった♪
DVDの方は、そのエ〇いPVではなくて、2005年のツアーのダイジェスト...といっても、ほとんど楽屋裏風景と、各地でのライヴの数秒の「さわり」の部分だけ。ただ、9月12日の東京公演は、もう少し長く入っていて、ラストのデビュー曲「ヒットチャートをかけぬけろ」がフルで、他の5曲がワンコーラス聴くことができる。スガの弾くギター1本アコーステックライヴだが、最近の「ヒトリシュガー」とは違って、まだループサンプラーなどの文明の利器?の採用度が高くなく、「弾き語り」色が強くて、それはそれで面白い。
このシングルの表題曲「19才」、一応シングルカットされ、チャート一桁後半まで行ったが、必ずしともスガのベストヒットというわけではない。ただ、やや厨二的アニメの主題歌だったこともあって、それをかなり若い世代が聴いていて、彼らが実際に19才になったときに、再び聴いてその詞の意味を完全理解し、スガの世界にはまる、というきっかけになっている。そのため、今でもライヴでは歌われることが多いし、ファンの中でも「好きな曲」としてあげられることが多い曲。またTwitterでスガに「19才になりました」と報告すると、本人から気まぐれに「だーいきらーいな ぼく19才♫おめでとう!」とレスがもらえることもあるので、それもファンの間では人気だったりして。あと、スガ自身も歴代PVの中で、あのエ〇いPVが一番好きだとかw
この曲は、自分がその年齢だった時に聴きたかったと思える曲です。
【収録曲】
<CD>
1. 19才
2. ホームにて
3. サナギ ~theme from ×××HOLiC the movie~ GOTA REMIX
<DVD>
「Premium Acoustic Live 2005」 DOCUMENTARY & DIGEST ~アコースティックでかけぬけろ~
・June
・Happy Birthday
・黄金の月
・アシンメトリー
・奇跡
・ヒットチャートをかけぬけろ
「19才」
(公式PVは年齢制限があるのでつべで探してください-当時の事務所OfficeAugustaで公開-)
この曲は、リアルタイムにその齢で聴きたかった
Twitter民の比率がどれほどかわからないが、結構今でも頻繁に「19才報告」があるということは、その人の人生に刻まれている曲なんだろうなぁ...
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購入金額
333円
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購入日
2022年04月17日
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購入場所
メルカリ
れいんさん
2022/07/20
×××HOLiCとぴったんこざます
cybercatさん
2022/07/20