qdcの多ドラのリスニング用モデル5SHです.日本限定モデルで,HiFiシリーズに属しています.名前の通り,BA5基搭載で,大まかにはLow:2,Mid:1,High:2の構成です.
qdcは,NeptuneやUranusが好みの音質でしたので,上位モデルに手を出してみました.ただし,いつものように中古で,しかも本体のみ.一応,出音は問題なしというもの.そこで,まずはUranus付属のqdc純正ケーブルで聴いたレビューです.コロナ禍中のため,店頭試聴もしたことが無かったモデルですが,思い切って確保しました.
おもな仕様は,以下のとおりです.
ドライバー構成 Low / Low-Mid x 2, Mid x 1, Mid-High / High x 2
周波数特性 20Hz - 20kH
入力感 106dB SPL/mW
インピーダンス 42Ω
qdc 5SHは,日本独自仕様で,リスニング用にチューニングされ,HiFiサウンド向けになっているそうです.
シェルは,qdcお得意のフェイスプレートにマイカが使われ,非常にきれいな仕上がりになっています.このため,世界に一つだけのオリジナルペアになっています.同じくマイカを使用したNeptuneに比べ,ハウジングの色が5SHのほうが濃いので,マイカの色目も濃くなり,おとなしい発色です.マイカの発色は明るいNeptuneのほうが多色でキレイです.
また,ハウジング形状はほぼqdc共通で,5BAになってもあまり大きくならず,Neptune/Uranusを一回り大きくした程度です.しかし,この一回り大きくなった形状が,フィッティングに影響しました.Neptune/Uranusでは,イヤーピースをFinal E-typeにするだけで,非常に良好なフィッティングになるのですが,5SHではダメでした.丁度Maverickと同じような感じで,スパイラルドットでもDeep Mountでもイマイチです.仕方ないので,FitEarのダブルフランジで急場を凌ぎました.ダメと言っても,装着感が悪いのではなく,イヤーピースのフィッティングがもう一つなので,ハウジング自体のの形状的な問題というより,ノズル部の長さと角度の問題の様です.よって,非常に個人差が出てくると思います.Spin Fitなら対応できそうな感じなのですが,ノズル径が比較的太いので入りません.もうちょっと,イヤーピース探しを続けます.
コネクタは,2ピンのqdcオリジナル形状と極性ですが,qdc製品が増えてくると,もう気になりません.
付属品は,Neptuneと同じ様ですが,ケースがグレードアップされている様です(今回手元にありませんが).
本体のみだったので,ケーブルはUranusのqdc純正品,イヤーピースはFitEarのダブルフランジで聴いた感想です.
音質は,ややドンシャリ傾向ですが,中域の特徴が薄いのでそのように感じるのだと思います.ドンドン来る迫力のある低音ではなく,きちんと沈み込むような芯のある低音です.高域もシャリシャリ感ではなく,繊細で良質です.よく伸びてキレが良いので,気になると感じる場合もありますが,繊細でキレイです.中域は迫力にかけますが,ボーカルが澄んでいてキレイで,やや前に位置し,その後ろに楽器がある感じになります.Neptuneなどに比べると音場が広く,奥行きもあります.音の分離が良いだけでなく,それが綺麗にまとまっており,単なる硬質なモニター系音質ではないです.一言でいうと,非常に繊細な優等生の音質です.ボーカルとか楽器の音が,ビットパーフェクトで100点が取れそうな精度の高い音なのに全体としてしっかりまとまっています.この辺はモニター系の流れを組んで,リスニング用に仕上げた感じです.ただ,これら特性はケーブルがボトルナックになっている可能性もあります.
5SHの後にNeptuneやUranusを聴くと,明らかにグレードダウンしたと感じますが,価格を考えればNeptuneの音はこれはこれでいいんじゃないかと思ってしまします.優等生ではないNeptuneは特徴がはっきりわかり,普段使いのリスニング用はUranusでいいかと思います.5SHはNeptune系ではなく,Uranus系の音質を突き詰めた方向の音です.
唯一Neptuneが5SHに勝っているのは,1BAの特徴である全域でのつながりの良さ.5SHは,Low-MidがMidを若干邪魔している感じで,Low-Midをもう少し抑えたほうが全体的なつながりが良くなると思いました.
Uranusのレビューで,Uranusに満足できないなら10万円コース必至と書きましたが,まさにその10万円コースの5SHです.
5SHは,Uranusを音質的に超えていますが,3倍以上いい音かと言われれば,一回りくらいです.なので,Uranusの音質はいかにコスパがいいのかが改めてわかりました.
ケーブルをWagnus.のBlue Moonに変えると,中域がやや厚くなるので,フラット傾向になります.解像度が更に上がり,バランスも良くなるので,5SHにマッチします.高域もキレイで,やや余韻成分が出るためか,気にならなくなります.低域は厚く芯のあるままです.Low-Mid成分の影響は残りますが,中域の厚みが増すので,こちらも気にならなくなります.
さらにケーブルをWagnus.のDiamond Dustに変えると,高域と中域の特性がさらに改善され,空間的な解像度が上がることで,特等席でのリスニング体験ができます.厚みはBlue Moonに一歩譲りますが,ここまで行くと,究極的な美音で,聴く価値のある音だと主張できます.ただ,価格的な問題も出てきて,この金額なら他のイヤホンでもという選択肢も増えてきますので,難しです.
Diamond Dustはやや硬いケーブルでありしかも高価なので,Nobunaga Labsの篠波(sasanami)に変更してみます.ただし,篠波はmmcxなの,mmcx-qdc変換コネクタを使います.
Diamond Dustは究極の美音でしたが,篠波も美音ではあるものの空間的な表現が良くなり,音場が一段と広くなった上で,それぞれの音が明確になり,音に厚みが増しまます.特に中域の厚みが増し,5SHのバランスが改善されます.手持ちのケーブルの中では,5SHとの組み合わせは,篠波がベストだと思いますが,Inspire系にはqdcコネクタが存在しないので,CIEM2pinかmmcxをqdcコネクタに変換する必要があるため装着感が残念です.
非常にキレイにまとまりすぎている優等生イヤホンなので,どんなジャンルでも対応できてしまう力がありますが,特にこれがオススメというジャンルもありません.唯一,音に艶を求めるような使い方は不向きです.音の分離が良いので,あえて挙げるならアナログ時代のポップスやロックのハイレゾ版でしょうか.何の不満も無いのですが,5SHではないと得られない癖があるようなイヤホンではないので,イチオシになれないデメリットもあります.みんなに好かれるけど,熱狂的なファンはいないという感じです.
このメリットとデメリットの関係は非常に難しい線引なので,5SHの評価は分かれやすいかもしれません.尖ったところを削って,全体的な底上げをして,バランスを取ると,5SHのような音になるのだと思います.逆に,それがHiFiと定義される音だと言うことにもなります.合議制でいい音を追求したらこうなるという音です.JHの神様がチューニングを決めるのとは訳が違う様です.
また,多ドラでインピーダンスが高めなのできちんとしたDAPで聴かないと真価が発揮されません.ハイレゾスマホならHPAの併用をオススメします.また,音源が悪いとその粗さがそのまま出てきます.圧縮音源をスマホで聴くとこんなスカスカの音しか出ないイヤホンなのかと勘違いされてしまいます.
5SHの真価を発揮されるには,ケーブルとDAPと音源が大事だと再認識されられました.5SHの実力が高いので,他の部分がボトルネックになってしまい,音質を支配してしまいます.5SHにふさわしい環境を用意する必要があります.
尖った特徴は持ち合わせてはいない5SHですが,誰もが不満の無いHiFiイヤホンであることは間違いありません.リンスニング用のリファレンスイヤホンとして認められる実力です.見た目も綺麗ですし,価格さえ許されるなら,期待に答えられるだけの実力をもったイヤホンです.5SHが8万円以下の価格帯なら,Uranusのワンランク上として,超おすすめ機種になりますが,ちょっと高いのが難点です(日本仕様だからかも?).
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購入金額
120,000円
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購入日
2022年01月頃
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購入場所
jive9821さん
2022/02/14
欠くような印象がありましたが、純正ケーブルの問題も大きいのかも
しれませんね。
WAGNUS.のDiamond Dust系であれば、かなり聴かせる音になる
ような感覚があります。Moon系だと案外Moonlessの方が面白い
かもしれませんね。
harmankardonさん
2022/02/14
今回5SH付属のケーブルが無いので,チューニングバランスがわかりませんでした.もしかしたら
,純正付属ケーブルでも大丈夫なのかもしれません.
ただ,5BAのバランスが少し崩れているような感じは受けましたので,ケーブル選びは大変かもしれません.