先日、SATA SSDにサービス添付されていたUSB3.0接続2.5インチドライブケースを使ったら、同じドライブを使ったのに以前から使っていたものと結構速度の差が出たので、それまでも意識していたSSD本体の速度差や、USB接続外付けケースの「USB規格による」差のほかに、同じ規格でもケースによって性能差があることがわかってしまった。
そこで、純粋にどれくらいの差が出るのだろうと興味があって入手した、明確に「USB3.1 Gen2」を謳う2.5インチドライブケース。
ところで、USB3.X系って名前が難しい...というか紛らわしい...というかはっきり言って命名法が混乱を招いている。
元となったUSB3.0は2008年にリリースされた規格で、それ以前の転送速度最大480MbpsのUSB2.0に比べて、理論値最大5Gbpsと大幅にグレードアップされ、外形は同じながら、それまでとは端子数も違うので、コネクターの中のプラ部品も青色となり、区別された。ただ、後方互換はとれており、速度は制限されているものの、USB2.0機器をUSB3.0ポートに挿すことは出来た。それまでの使用機器を一気に変更することなく、徐々に移行することができたためか高い支持を得て、PCのみならず、デジモノ系の汎用接続規格として地位を確立した。
ここまでは、名前も混乱しておらず、特に問題なかった。
しかし、この次の改良版、理論値最大10Gbpsの規格が出たときに、USB仕様策定や命名を行うUSB-IFはアホですか、あなたたちといわれても仕方ないよくわからない選択をする。
「今までの5Gbps規格をUSB3.0、新しい10Gbps規格をUSB3.1とするのではなくて(正式策定前はそう呼ばれていたこともあったのだが..)、旧来の5Gbps規格をUSB3.1 Gen1、新しい10Gbps規格をUSB3.1 Gen2と命名した」のだ。
同じコネクタを使うからか、USB以降の数値(ヴァージョン)を変えるのではなくて、「世代」という形で速さを表したのだ。...であればなぜ、「USB3.0 Gen1」と「USB3.0 Gen2」にしなかったのか...これにより、2013年以前には「USB3.0」と記載されていたものと全く同じものが、2013年以降は「USB3.1 Gen1」と呼ばれるようになったワケで、印刷済みの説明書やこれ以前に発売された機器の表示で古い「USB3.0」の表記のままのものと、新規作成で「USB3.1 Gen1」表記があるものが混在することになった。Gen1は単なるリネーム、Gen2は新規規格で高速...という状況なので、新旧の機器や表示が混在する状況では脳内変換が必要となった。
さらに2017年に、裏表のないプラグ/ソケット規格であるUSB Type-CのDual-Lane接続を利用した理論値最大20Gbpsの規格がリリースされた時も同じ間違いよくわからない命名をした。
USB Type-CのDual-Laneを使った接続法に「x2」と付けた....のは良いのだが、それを「USB3.2 Gen2 x2」と命名したのだ。そこまでならまだ許せるわかるが、一番元からある「USB3.1 Gen1」を「USB3.2 Gen1 x1」へ、それまでの高速版「USB3.1 Gen2」を「USB3.2 Gen2 x1」にリネームしやがった。Dual-Laneを持つUSB-C接続でないと、「x2」は使えないので、それ以前のに区別のために「x1」が加わるのはわかる。....なんで、USB3以降の小数点以下の数値をふただひ変えた?
そのため、また現在市場ではUSB3.1系の表記とUSB3.2系の表記が混在する状態になっている。
では色で区別できるかというと、USB2.0⇒USB3.0の時は中のプラ部品が青になって明確だったが、その後USB2.0がほぼ使われなくなったせいか、デザイン的な要求か、プラ部品の色区別が廃れ、PC裏をのぞき込んでも、違う規格でも同じ色だったりしてわかりづらい。さらに徐々に名称が長くなってきているので、端子そばのスペースが限られている場合は標記もないことも多く...
さらにコネクタ規格のUSB-Cは、後方互換を持っていて、5Gbps規格の「USB3.2 Gen1 x1(=USB3.1 Gen1=USB3.0)」や、10Gbps規格の「USB3.2 Gen2 x1(=USB3.1 Gen2)」でも使えるので、差し込み方向の表裏のない利便性が支持されて、第10世代のFire HD 8
のようにスピード的には「USB3.2 Gen2 x2」ではないのに端子形状はUSB-Cを採用というのも入り乱れて、さらに混乱を助長している(USB-C接続は「USB3.2 Gen2 x2」の必要条件だけれど、十分条件ではない)。
...で、今回入手した2.5インチドライブケース、梱包ケースには「USB3.1 Gen2」と書いてあるため、「USB3.2 Gen2 x1」ケースでもあるわけ。いずれにしても理論上の最大速度は10Gbps。ただ、このケースはSATAⅢ⇒USB変換ケースなので、SATAⅢつまり、SATA 6Gbsが最大値となる。
これに、カタログスペックがシーケンシャルリード最大560MB/s、シーケンシャルライト最大 510MB/sのSSD、Crucial MX500 SSDの1TB版CT1000MX500SSD1/JP
を載せて、どれくらいの高速化が果たせるか検証した。
接続ポートとしては、M/B=ASUS ROG ZENITH EXTREME
のバックパネルの各種USBポートに直接接続することによって、フロントベイアクセサリの変換ロスなどを排除した。ASUS ROG ZENITH EXTREMEのバックパネルには、「USB 3.1 Gen 1ポート」が8ポート、「USB 3.1 Gen 2ポート」が1ポート、「USB Type-C with USB 3.1 Gen 2ポート」が1ポートあると説明書には書いてある。すなわち、今の規格の言葉に置き換えると、Type-A形状の「USB3.2 Gen1 x1(つまり昔のUSB3.0)」と、Type-A形状とType-C形状の「USB3.2 Gen2 x1」があることになる。
そして、ドライブケースの方は「USB3.1 Gen2」、つまり「USB3.2 Gen2 x1」対応で、付属ケーブルはType-A⇔Type-CのケーブルとType-A⇒Type-Cの変換アダプタがついている。従って、本当にこのケースは「USB3.2 Gen2 x1」の価値があるのか、変換アダプタの(悪)影響はあるのかを、これらの接続を総当たりで検証してやろう...というワケ。
その前にパッケージと付属品を。今回、本品はAliExpressで入手(Amazonは異常に高いので)。安定のChina Post品質で、けっこう箱潰れはあるものの、中身的には問題なし。購入は2/21で到着は3/5。2/22に中国を出てから、その後全く音沙汰なしで、いきなり3/5に到着。
これでもちょっと整形して直したが、外箱はけっこうダメージがうかがえる...
内容物としては、説明書類とケース本体にUSBケーブルと変換アダプタ。ケーブルはドライブケース側がType-C、PC側がType-A。変換アダプタは、そのType-AをType-Cに変換するもので、ケーブルがType-C⇔Type-Cとなるもの。単なる端子変換なのか、何かロスがあるのか...
ケースはツールレスでスライドで外すタイプ。
外し方は今までと同じ。ちなみにブレ防止のスペーサースポンジは付属しない。
色はやや濃い目のスモーク。スモーク仕上げって、一般的にはかっこよいんだけれど、これに関して言えばもう少し中が見える方が良いかな。
なお、USB–SATA変換チップは、VIA LabsのVL716とのこと。
直接見えない側への実装だが、スモークケースを通して「VL716-Q4」という刻印が見える
このVL716-Q4チップ、性能的にはUSB 3.2 Gen1までの対応のJMS578(ORICO 2139U3が採用)や安価なドライブケースへの採用が多いINIC-3619PNとは異なり、USB 3.2 Gen2に対応している上位版。実際の速度はどうだろう。
なお、ケーブルはPC側がType-Aで、Type-Cへの変換アダプタもついているという今の端子事情にちょうどいい感じの同梱品。つまり、市場にはUSB3.2のGen1とGen2がまじりあっていて、Type-Cもそろそろ普及してきて...というタイミングの今ならすべての端子で使えるので。
ケーブルは片方Type-C、もう一方がType-Aだが...
そして今回用意したのが、新品のSSDではなかったので、性能測定で新品/使用中の部分の差が出ないかと、今までのcybercatのスタンダードケース、ORICOの2139U3
に同じ使いかけのSSDを入れたものとも比較再測定した。
まず本品に入れて、「USB3.2 Gen1 x1」つまり最高5Gbps規格(MB/s換算625MB/s)の「USB3.0」端子につないだ場合。シーケンシャルは400MB/s内外で、規格上は天井には届いていないはずだが、SSDのカタログスペック500MB/s超には届かない。
USB3.2 Gen1 x1接続だと、最高でも400MB/sあたり
これをType-A形状のまま、規格上最高10Gbps、つまり1250MB/sまで対応する(とは言ってもこのケースはSATAⅢの転送上限750MB/sの方が先に来るが)「USB3.2 Gen2 x1」ポートに接続すると、シーケンシャルは500MB/s前後に到達する。特にWriteはカタログスペックの510MB/sを超えるデータが出ている。
USB3.2 Gen2 x1にすると、グンっとスピードが乗る
Type-C形状の「USB3.2 Gen2 x1」端子に接続するために、Type-A⇒Tipe-C変換アダプタを付けて接続すると....変わらない。良くも悪くもならず、誤差範囲内という感じ。つまり変換ロスもType-Cの効果もない、ということなので、空いてる方につなげればOKということ。
Type-Cの変換アダプタかまして、PCのType-C端子に繋いでも、特に速度向上も低下もない
今までの比較としては、一番多く使ってきたORICOの2139U3。これ、前回このケース速度問題の発端となったクロシコのGW2.5OR-U3
に比べると明らかに速かったのだが、前回と同じ(ただし前回の接続ポートは今回検証しているバックパネルのポートではない)「USB3.2 Gen1 x1」端子につないだ結果は、400MB/s内外...というより400MB/s弱という感じで、ランダムの1指標以外は若干本品より劣る。
2139U3を「USB3.2 Gen2 x1」端子に繋いだ場合も、本品とは違って、「USB3.2 Gen1 x1」端子接続時と比較してわずかしか速度向上せず、450MB/s付近を彷徨っている感じ。こちらは明確に本品に比べて遅めのスコア。
WL-ST239C(本品)のUSB3.2 Gen1 x1接続よりは速いが、500MB/sにはまったく届いていない
一覧で比較すると、ランダム系はリードで一部2139U3の方が速い指標があるが、あとは大差なく、シーケンシャルは明らかに本品に乗せた方が速いので、Type-Cも使える汎用性も含めて、本品の圧勝。
本品をUSB3.2 Gen2 x1端子につなぐと、SSDのカタログスペック近い性能が出る
本品、Amazonはなぜだかとんでもない価格がついている場合があるが、AliExpressで購入すれば2139U3の1割増し程度で入手できるので、SATA SSDのトップスピードを享受するためにはこちらのケースの方が良い感じ。
外見的には、「Transparent Clear」と言うわりには、ちょっとスモークが濃い目で、中のSSDが確認しづらいのだけがイマイチだけれど、それ以外は2139U3に比べて悪いところが皆無なので、cybercatの新スタンダードケースになりそうな予感。
ただ気になるのが、Aliの宣伝文句に「10分休止状態、ハードディスクの完全な保護」とあること。これ、10分使用していないとスリープに落ちるということなのかもしれないが、SSDはスリープからの復帰時にこけることがあるらしいので、この部分だけは長期観察していきたいという感じ。
なお、WAVLINK製品には類似の品番でWL-ST239(末尾のCなし)というドライブケースがあるけれど、それはType-C変換アダプタが付属しないだけではなく、転送速度も「USB3.2 Gen1 x1」対応止まりなので、混同しないように(こちらはAmazonに安く売っている)。
【WL-ST239C仕様】
カラー:Transparent Clear
対応ドライブ:2.5インチSATA SSDおよびHDD (9.5mm、7mm両対応)
素材:ABS
最大容量:6TB
外形寸法:12.5 x 8 x 1.3cm
重量:60g
内容物:USB3.1 Gen.2対応2.5インチSSDケース、USB-C→USB-A延長ケーブル、USB-A→USB-C変換アダプタ、ユーザーマニュアル
サポートOS:Windows 7 / 8 / 10 (32 bit and 64 bit)、Mac OSX、Linux
「USB3.0」よりも明らかにスコアが良く、ほぼSSDのカタログスペックの9割以上出ているので◎
リードで9割、ライトでほぼカタログスペックが出るなら文句はない。
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購入金額
1,188円
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購入日
2021年02月21日
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購入場所
wavlink Official Store(AliExpress)
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