ヘッドフォン本体についてもう少し細かく見ていきましょう。

無骨なデザインが多いHIFIMANのヘッドフォンにしては、色使いのセンスが良くなかなか見た目は良いと思います。

左側のドライバーが収まったハウジングです。こちらにアナログ入力端子（3.5mm4極TRRS）が用意されています。なお、後継機のDEVA Proは左側の3.5mm4極端子はそのままに、右側にも3.5mm3極の入力端子が用意されたことで、バランス対応ケーブルを豊富に選べるように工夫されています。DEVAの3.5mm4極はSONY MDR-1A系やOPPO PM-3等の同一形状の端子を採用する製品とはピンアサインが異なっており、ケーブルの選択肢が極めて限られていたのです。

右側のハウジングです。前述の通り、DEVAではこちらには端子が用意されていません。

添付ケーブルです。3.5mm3極の、ごく普通のシングルエンド接続に対応するものです。

それでは簡単にですが音質について触れておきましょう。Bluemini IIが無い以上、アナログ接続のみとなります。CHORD Hugoに接続して聴いてみました。

まず、同一メーカーでグレードも近いHE400Sと比べると、音色の質は大きく向上しています。普通に音楽を聴いていて露骨に不満を感じるような点はほぼ無くなりました。

もう少し細かく評価していくと、まずバランス的には高域方向がやや持ち上がっていて、低域はほぼフラットかやや薄めという程度です。高域も不快なほど持ち上がっているという訳ではなく、平面振動板の高精細な表現をわかりやすく表現させていると感じられる程度です。

「Twenty 1 / Chicago」をBGM的に流しながら聴いていたのですが、高域方向がやや持ち上がっているにもかかわらず、それがややソフトタッチであるため聞き疲れなどはありません。強いて言えばシカゴのホーンセクションがやや細身に感じるでしょうか。ヴォーカルの質は悪くありませんし、低域も量は少し控えめながらベースラインは明瞭ですしバスドラムのレスポンスも良好です。

ただ少し気になったのは、聴感上のレンジが意外と狭いということでしょうか。低域方向は最低域までをきちんと描写する訳ではありませんし、高域も最高域の方の伸びを欠いている感があります。

「Wallflower / Diana Krall」では低域方向がやや控えめであることが災いして、この作品が持つ空気感がきちんと表現されているとは言いがたいものがあります。ダイアナ・クラールの声が結構細身で、歌の巧さが感じられなくなります。

ごく普通のロック・ポップス系のソースを聴いている分には微細な部分まできちんと表現していながらあまりシビアさがないことで、ほど良く聴きやすい音にまとまっていると言えます。重厚な表現が出来るタイプではありませんのでソースによっては価格なりとしか感じられないかも知れません。

少なくともHE400Sと比べれば満足度は数段上で、DEVAがあればHE400Sは手放しても良いかなと感じられます。Blueminiシリーズのユニットが入手できればワイヤレスヘッドフォンやUSB接続ヘッドフォンのも変身するという多機能ぶりも魅力です。価格以上の満足感は確実に得られるヘッドフォンであると言えるでしょう。尤も、今から普通の新品を買うのであれば、ケーブルの選択肢が豊富でBlueminiも最新版の「Bluemini R2R」が標準添付されるDEVA Proの方が良いとは思います。