レビューメディア「ジグソー」

爆裂リズムに、前に弾ける声が乗って、前進力抜群!

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。曲と声の相性。声の倍音分布や「丸さ」、発声の仕方やかすれ具合などで、シンガーの自分の好みとは別に、「合う曲/合わない曲」というものがあります。そしてその特徴を活かすバッキングに出逢えたときは、より楽曲の魅力がアップします。発音・発声が綺麗で、抜ける声音を持つシンガーが、「歌いきれる」アゲソングで、アガる演奏と相まって、魅力的なパフォーマンスを魅せたシングルをご紹介します。

 

鈴木このみ、アニソンシンガー。15歳の時、2011年全日本アニソングランプリでグランプリを獲得し、翌年2012年にデビュー。その後も、アニソン界でコンスタントに作品をリリースしている。本作は、2016年リリースの11thシングル。前作“Redo”

から、わずか3ヶ月後のリリースだが、質が落ちいてないのがスゴイ。

 

この作品“Love is MY RAIL”は、初回限定盤と通常盤の関係が面白い作品。通常、初回限定盤にのみDVDがついたり、追加トラックが含まれたりすることが多い。本作も、確かにDVDがつくのは初回限定盤だけなのだが、限定盤と通常盤で一部楽曲が入れ替わっているという趣向。通常初回盤に手厚くオマケがつくのは、限定と言うことで購入を急がせることで、発売後の売り上げの初速をあげ、ランクインしやすくなる手法だが、さらに通常盤にもプレミアをつけることで、結局両方買わせようというどちらにも価値をつけようという試みか。

 

表題曲「Love is MY RAIL」は、トレーディングカードゲームを起源とするTVアニメ「アンジュ・ヴィエルジュ」の主題歌。カードゲームらしく?登場人物が「二つ名」を持つ(《光使い》蒼月紗夜《紅蓮の真祖》アルマリアなど)世界のお話だが、2013年から展開するカードゲームをてこ入れする形?で、2016年の夏アニメとして放送された。このみの歌うテーマソングは、バンド仕立てで元気!このみのサポートを良くしているベーシスト櫻井陸来と、アニソン業界だと藍井エイルや田所あずさのサポートも手がける爆裂ドラマー楠瀬"poco"タクヤによるリズム隊が素晴らしい前進力!!とくにサビ前の♪だけど止まれない♪の前までスネアの連打で盛り上げて、通常より1小節長いブレイクを挟むのが印象的。このみの前にパーンと弾ける声で、パッション十分。

 

一転して、カップリングされた「Tears BREAKER」はカードゲームの方のテーマで、このみにとっては4枚目のシングル「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」のカップリングとしてリリース済みの楽曲。バンド+オーケストラ仕立てで、ロックオペラ風のアレンジだった元曲と違って、こちらは「with piano」として、岸田勇気のリリカルかつゴージャスなピアノと、所々ティンパニが入るが、基本的にはストリングスを主とするバックでかなり切ない。基本的に「傷ついても立ち上がり前を向いて闘おう」という筋書きの詞なのだが、元曲だと♪希望求め/君は進むべきだよ/転びながらもまだ走れる♪と言ったあたりにウエイトがあるように聴こえたのだが、このアレンジだと♪迷いたがる弱い気持ちなんて/捨ててしまえ/ほら笑顔になろう♪という内側ら向けた詞の方が、より「迫る」のが面白い。

 

miss blue」は、DVD付きの初回限定盤には含まれない楽曲で(そちらには代わりに「Don't stop me now」が収録される)、「Love is MY RAIL」と同じく白戸佑輔の作品。こちらは表題曲とは違ってバンド仕立てではなく、打ち込みだが、やなぎなぎの「ビードロ模様」のような浮遊感がある楽曲で、味わい深い。特にサビ前のコード進行が印象的。一方、このみの声はやなぎなぎのものとは全く違い、ファイルセットを交えながら透明感ある声音で歌うAメロと、パワーがあるサビの声音の対比が特徴で、全体的に芯がある。フワフワと浮遊感ある楽曲と力強いヴォーカルの対比が面白い。

 

「Tears BREAKER」のリリカルな感じも、ファルセットで通す「miss blue」の尊さも、それぞれに味があるが、タイトル曲のようなパーンと抜ける声が彼女の真骨頂。それを盛り上げる爆裂リズムを得て、アピール度の高い曲になっている。

 

素晴らしいバックとの出逢いが、歌声の魅力を高め、作品自体の質を上げた作品でした。

通常盤はアニメジャケット
通常盤はアニメジャケット

 

【収録曲】

1. Love is MY RAIL
2. Tears BREAKER with piano
3. miss blue
4. Love is MY RAIL (instrumental)
5. miss blue (instrumental)

 

「Love is MY RAIL」

更新: 2020/06/21
必聴度

リズムの前進力と、それをさらに引っ張るこのみの声がイイ

普段から彼女の発声はよどみがなくて気持ちよいのだが、それが良く出ている歌声と、それを活かす楽曲。

  • 購入金額

    567円

  • 購入日

    2019年09月22日

  • 購入場所

    メルカリ

11人がこのレビューをCOOLしました!

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