レビューメディア「ジグソー」

最初期を識る者にとっては「夢の(ドリーム)」組み合わせ?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽のグループで、解散⇒再結成というのは良くあることです。グループというのは各個人の集まりですから、その時点の指向、家庭状況、日々顔をつきあわせていることによる微妙なすれ違い...そういったもので別の路を選んでも、今一度音を合わせてみたくなることはあります。そういった再結成...という一面と、音楽「ブランド」の延長、という一面を持つグループ唯一のシングルをご紹介します。
 
音楽のグループ、特に長寿グループにおいてはメンバーチェンジは避けられない。そして長い歴史の中で、オリジナルメンバー不在となることもある。特に権利関係がうるさい欧米では「誰がそのバンド名を使う権利を有しているか」というのが明確に規定されているため、オリジナルメンバーがその権利を有していなければ、オリジナルメンバーが一人もいない同名バンドというものがありうる。
 
一方、日本においてはそれとは若干ニュアンスが異なるが、前世紀末から「ブランド」というようなニュアンスで活動するアイドル系のグループが出てきた。特に「会いに行けるアイドル」をコンセプトにしたAKB48およびこの姉妹グループにはその傾向が強く、各アイドルは「AKB48」という「ブランド」を構成する一員というようなニュアンスで、組み換えなども多く、グループ内での音楽的なつながりなどは希薄。ただ「現AKB48メンバー」とか「元AKB48メンバー」というと、それぞれ個性はありながらも、おおざっぱには同方向の「味」があり、そういう意味でも音楽グループというというより「ブランド」ととらえた方がしっくりくる。
 
そんなアイドルブランドの先鞭をつけたのが、「娘。」こと「モーニング娘。」。
 
2020年6月現在は「モーニング娘。'20」として活動するこのグループは、今は2011年加入の9期生から2019年加入の15期生で構成され、1998年のメジャーデビューのころのメンバーどころか、およそ20年の歴史の前半分の時期に加入したメンツは全員卒業してしまっている(←ま、アイドルの一つの価値に「若さ」というのがある以上致し方ない面も...)。
 
しかしこういう「ブランド」が形成されたのは、強い個性を持つスターがいた初期のメンバーの力が大きいのも事実。ブランドが形成されてからは、そのブランドに「合う」キャラクターが求められるが、ブランドを創るには、多少はみだしがあろうが、「強い」個性が必要。
 
そんなブランドを作り上げた、初期の「強い」キャラクターを、OGグループとして呼び戻したのが、「ドリームモーニング娘。」。初期の「娘。」の強い個性に、アイドル時代とは違うオトナの魅力を付け加えたグループとして企画された。
 
メンバーは
・中澤裕子(1期:1997~2001)
・安倍なつみ(1期:1997~2004)
・飯田圭織(1期:1997~2005)
・保田圭(2期:1998~2003)
・矢口真里(2期:1998~2005)
・石川梨華(4期:2000~2005)
・吉澤ひとみ(4期:2000~2007)
・小川麻琴(5期:2001~2006)
・藤本美貴(6期:2003~2007)
・久住小春(7期:2005~2009)
と、あまりアイドル界隈に強くない人でも、名前と顔が浮かぶメンツが、ほとんど(加入期:活動期間)。
 
黎明期~人気確立期の「娘。」の歴代リーダーやスターが多く集められ、ここに名のない初期スターというと、ゴマキこと後藤真希くらい...という感じの「オールスター」。
 
一方、一般の音楽のグループの再結成ではない感じがするのが、活動時期が全く重なっていないメンバーも何人かいて、「ある時点のグループの音を再現しよう」というよりは、「娘。というブランドで表現したメンツを集めて+αを付け加えよう」という企画に感じたわけ。
 
その「ドリームチーム」のシングルタイトル曲「シャイニング バタフライ」は、メンバーの一人、石川梨華が主演する映画「篤姫ナンバー1」のテーマソングも兼ねる。「娘。」なので、曲の提供はつんく♂で、彼らしい「昭和歌謡フレーバー」があって覚えやすい曲。バックは編曲者である平田祥一郎の打ち込みが基本だが、唯一ギターだけが、つんく♂作品でよく弾いている鎌田浩二で、微泣きの「わかっている」フレーズ。歌の方は、初期メインヴォーカリスト安倍なつみを軸にした危なげないもので、良い感じで各メンバーのソロと全員合唱が入る。
 
カップリングの「青空がいつまでも続くような未来であれ!」は、もともと「モーニング娘。」本体のために創られた曲で、7thオリジナルアルバムに収められている(アレンジ鈴木Daichi秀行)。つんく♂がどこまで創って、アレンジャーがどこから担当しているのか、役割分担が不明だが、この「2012ドリムス。Ver.」も、アレンジャーが違う(大久保薫)わりには、元曲とニュアンスが大きく変わらない。スラップベース感が強かったベースラインだけは明らかに違うし、元曲でところどころに入っているシンセのSEはないが、印象的なブラスのラインは完全に同じだし、ラグタイムニュアンスのあるハッピーなピアノのバッキングも大差ない。これは、かなりつんく♂がデモテープの段階で作りこんでいるのか、クレジットはされていないが、元曲のブラスアレンジを手掛けた竹上良成のラインが採用されているのか。歌の方は、いわゆる大人数アイドルグループの定番で、ソロと合わせ歌いの繰り返しだが、メンバー的に特に下手なメンツがいないので、安心して聴ける。
 
DVDは「シャイニング バタフライ」のMV。この曲がテーマソングとして採用された映画「篤姫ナンバー1」は、篤姫がタイムスリップして、現代の高級クラブで働くことになり、そこでナンバー1を目指す、という筋書きのもの。そのため、各メンバーがホステス姿で出演(実際に主演の石川以外も、数人この映画に出演している)。齢的にたしかに、ホステス感があってハマっているというか、なんというか...(^^ゞなお、MVにはドリーム モーニング娘。のメンバーではないが、同じ娘。OGの高橋愛が出演している。

歌のメインはなっちだが...
歌のメインはなっちだが...

 

劇のメインは映画と同じくりかちゃん
劇のメインは映画と同じく、りかちゃん

 
娘。というブランドに集まった同窓会というニュアンス。ほとんどのメンバーが、活動量的には一線級を一歩引いた立ち位置での参加のため、いい感じに肩の力が抜けているが、やはり「ex娘。」としての気概も感じられる。

さすがにこのあたりのメンツなら、自分でも単品で娘。メンバーとわかる
さすがにこのあたりのメンツなら、自分でも顔見ただけで単品で娘。メンバーとわかる

 
アイドルの重ねた齢の重さが、悪くはないな、と感じた作品でした。
 

【収録曲】

<CD>

1. シャイニング バタフライ
2. 青空がいつまでも続くような未来であれ! (2012ドリムス。Ver.)
3. シャイニング バタフライ(Instrumental)
<DVD>

1. シャイニング バタフライ(Music Video)

 

「シャイニング バタフライ」

更新: 2020/06/15
必聴度

「あの頃」知っている層へのキョーレツなアピール

そーゆーいみでは新規のお客様相手ではない。

  • 購入金額

    1,680円

  • 購入日

    2012年06月28日

  • 購入場所

    山野楽器

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